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さぼりと欠席の理由

 ヴィオラの座っている場所のすぐ上から葉が一枚はらりと落ちた。

「ヴィオラ王女。こんなところでさぼりですか?」

 誰もが来ない中庭の一番奥のところにこっそり忍んでいたら、スードリーのアリストロ殿下が木の陰からガサリと音を立ててヴィオラの座るベンチに座った。

「おさぼりではございません、アリストロ殿下。体調が悪くて休んでおりました」


 どうしたらいいのだろう。どうやったら気づかれずに自然と休んだことすらわからないように歓迎パーティーを休みことができるだろうか。

「体調が悪いというか悩み事ですか」

 観光立国と言われるスードリーの王子だからだろうか、アリストロ殿下はアークライト殿下や兄に比べて威圧感が少なく親しみやすい。

 そのためだろうか、貴族だけではなく平民の生徒からも人気が高い。

「近いですわよ。ベンチの端と端に座って間隔を開けましょう」

「誰も見ていませんよ」

 ククとアリストロ殿下は小さく笑う。


「誰も見ていないと思っていると見られたりするものですわ……アリストロ殿下に相談があるのですが。今度わたくしの国の王様と王妃様が来られるのですが日程の中に歓迎会や夜会などすでに催しごとが組み込まれてるのです。で、わたしは出席するつもりはないのですが何かいい言い訳とかありませんか」


 アリストロ殿下はちょっと笑うと目が細くなり柔らかい雰囲気になる。

「言い訳とは、欠席の理由ですか? 王と王妃とは君のご両親ではなかったですか。まあ、何か事情はあるのだろうけれど王女が参加しないという話はありえない話だろうし。ここのところ体調が悪いと言っていたからその延長で一回くらいは熱が出たとかで欠席できるかもしれませんが、それ以外は短い時間でもいいから出席するほうがいいと思いますよ」

「そうですか。そうですわよね」


「王女が両親の歓迎パーティに出席しないなど変人王女呼ばわりされてしまうのじゃないかな」

 変な王女と言われてもいい。

「ヴィオラ王女は……欠席したいのか」

 ヴィオラの不機嫌な顔を見てふっと笑った。

「どうして出席したくないのか聞いていいですか」

「色々と事情があるのです。それに関しては今はこれ以上話したくありません」


「なら今は聞かないでおきましょう。で、ここだけの話。先日受けた官僚試験、かなり成績が良かったらしい。バンゲイの王族が官僚試験を受けてかなりの好成績だと評判らしいです。君が王女ということでバンゲイからの間諜説もあったらしいけれど私が打ち消しておいたから。間諜するほど裏があったり抜け目ないタイプではないと。しかも平民希望のぼんやりさんだとね。どちらにしろ官僚試験は合格間違いなしです」

 太陽より晴れやかな笑みを浮かべて観光の国スードリーの王子は爽やかに人を馬鹿にする。


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