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貴族と平民

 バンパーは他の国々より貿易も文化も華やかで盛んだ。

 兄は自分の国バンゲイのためにも勉強するところも多いということで、今回様々な場所を視察するつもりらしい。

 その忙しい日程の中、リコリスに会うために離宮へ行くより早く侍従と警護の騎士だけ連れて学園にあるヴィオラの寮の部屋へとやってきたのだ。。

 寮へバンゲイ王太子訪問の連絡があった後、ヴィオラのいる寮の管理人も寮の友人たち寮生たちも突然の隣国の王太子の訪問の噂に浮足立ち、天井近くまで浮いてるんじゃないかというくらい興奮していた。

 寮には似つかわしくないほどの量の花を生けられた花瓶や寮に関係する人全ての人による急遽の大掃除に本当に心から申し訳ない気持ちになった。

 もちろんヴィオラもガラス拭きを手伝った。ピカピカだ。

 何日の何時に来るとか、そういうことは一言もなかったので多分明日だろうとみんなウキウキ噂をしていた。

 女の子はまだ王太子に出会ってもいないのに、恋する乙女のようにほほを赤らめていた。食堂のおばさんもだ。


「本当に今回はお兄様突然の訪問に驚きましたわ。言ってくだされば王宮に参りましたのに。ただ王宮ですとこっそり内緒話をするというわけにもいかないでしょうね。

かといって、これからお兄様とこうやって直接話すことは難しいので、お忙しいでしょうけれど……実はお願いがあるんですの。お兄様」

 渋い顔で兄が振りむいた。

「なんだ。分かっているだろうが時間がない。早めに頼む」

 再び戻ってきた兄は焦る口調と裏腹にゆったりとソファでくつろぎ始めた。


「お願いごとですが、私の卒業の頃かそれより前になるかもしれませんが、違う国で役人になろうかと思っています。ですが役人や官僚になるためには他の国の王族であれば無理だと思います。ですのでわたくしが平民になることを了承してもらいたいのです。スードリーの官僚試験を受けるつもりです。……これからバンゲイの王様と王妃様にも直接会うこともないだろうし、事後承諾になるかもしれませんがお兄様からこのことを伝えていただきたいのです」

 端正だったはずの兄の顔が憮然とした表情になり極端に崩れた。

「平民だと? 本気か? 無理だろう。王族から平民だぞ。何らかの咎があるわけでもあるまいし」

 動作が止まった兄の目は見開いたままだ。

「簡単に言われますが平民になるのは想像以上に並大抵のことではありませんよ。今まで王女の身分だったものが平民の生活ができるわけがないでしょう。確かにヴィオラ王女は昔それに近い経験をされたわけですが、今現在そういった生活ができるかと言えば別の話です。部屋を借り、給料をもらい、食事も清掃も自分でしなければいけない。自分の身は自分で守り、すべてが自分の責任と判断で生活していくことになる。平民としての生活を簡単に考えすぎですよ」

 ルーペが諭すように話す。


「わたくしは本気です。身分上は王女であったとしても私はバンゲイ国ではあまりいい感情は抱かれてはいません。国に残り、かげで平民上がりなどと呼ばれお荷物に思われるよりは、よその国で身分は平民として一からやっていきたいと思うのです。平民として生活できるかは分かりません。でも、平民のお友達から様々なことを学んでいるのです。

ただ、ビオエラは侍女としてとても優秀です。一緒に連れていきたいですけれど、わたくしが役人となって二人分のお給料をもらえるとはとても思えません。リコリス王女や王妃様のところだとわたくしの侍女であったということで肩身が狭い思いをするでしょう。一緒にスードリーへ連れていきたいと強く、強く思う気持ちはあります。ですけれどやはり無理でしょう。できたらお兄様のところの侍女として、もしくはお兄様の婚約者の方の侍女としてお使いいただきたいのです。お兄様なら何とかできるはずです。お願いします」


「役人…か。しかもスードリーか」

「そうです。小さな国ではありますが安定していますし、風光明媚な国です。周囲を海で囲まれた島国でもありますし戦もほぼありません。女性への蔑視も少ないという話です」

「官僚試験を受けるのか。……確かにヴィオラが今後のことについて考えているようだと諜報員から話が来ている。

……それと多分、ヴィオラは学園の成績がいいからだろうな。スードリーよりヴィオラを第1皇子の妃にと申し出があった。王子は今留学中だが、あと数か月で国に戻るらしい、その時に立太子が決まったらしい」


 同じクラスのアリストロ殿下のことだ。王族にもかかわらずヴィオラと一緒の官僚クラスなので親近感いっぱいで親しくしている。官僚試験を受けたいとかスードリーで平民になりたいとか会話の節々にさりげなく伝えたりしている。笑ってヴィオラの話を聞いてくれるいい人だ。

 だけど妃とか聞いていない。というかアリストロ殿下からは妃とかそんな雰囲気はないけれど。



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