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兄 クロフト王太子

持っている中で一番地味な何の飾りもない紺色のワンピースに着替えて隣の部屋に入る。

一応体調が悪いということで沈んだ雰囲気を醸し出しながら。

隣の部屋と言ってもビオラの住む部屋にはヴィオラの寝室、ビオリラのための小さな使用人部屋、そしてダイニングというにはかなり狭いビオラとビオリラがゆっくりするための部屋があるだけだ。

「ヴィオラ! なにをしているんだ。俺の歓迎パーティーだぞ。俺がバンパーに来ているのに、俺の妹が何でパーティーに出席していない。体面もあるだろう」


ソファにどっしりと足を組んだ兄であるクロフト・カッスル・バンゲイ王太子が端正な顔立ちを不機嫌に歪ませヴィオラを向いた。

「お久しぶりでございます。最後にお会いしてからもう半年くらいにはなるでしょうか。

お兄様にはご機嫌麗しく」

クロフト王太子をヴィオラは兄と呼ぶ。兄はリコリス王女とは全く違う。口調は厳しかったり意地悪だったり、ヴィオラに優しいものではないがリコリス王女と対応は全く同じだ。同じ妹として対応する。どちらかといえば割を食うことの多いヴィオラに配慮することが多いのも特徴だ。そのため兄とリコリス王女との仲はさほど良くはない。


「挨拶はいい。私はなぜパーティーに来ないのかを聞いているんだが。……見たところ体調も悪くは…なさそうだな」

 兄の口調がぐっと感情を抑えたものになる。

 正面のソファに座るように促されビオラは静かに座る。


「パーティに出席できずに申し訳ありません。欠席したのは体調が悪かったからですわ。今日の朝からおなかが痛くて、でも今はずいぶん良くなってきたみたいです。静かに寝ていたおかげですわね。ワンピースに着替えることができずに着替えることもできずに眠ってしまうくらいにはつらかったのですわ」


「なら、今からでも来れるだろう」

 ふんぞりかえった格好のまま、畳みかけるように兄は口をはさむ。

「……もうパーティーも大分時間がたっているのでは。お兄様がパーティーから離れるのはよくないのではないでしょうか、だって主賓じゃありませんか」

「当たり前だろう。主賓が姿を消すなど良くないに決まっている。……ともかく今から会場へ行くぞ。早く着替えろ」

 う~ん。困った。ごまかしても兄は聞いてくれなさそうだ。


「何に着替えればよろしいでしょうか。パーティーに行くにはワンピースではだめでしょうから。……そうですわね。学園の制服は礼装にもあたりますから制服でよろしいでしょうか」

 パーティーに制服姿の人など今まで一度たりとも見たことはないが、制服は第1礼装ともいわれることがあるくらいだから不敬には当たらないだろう。うんうんと頷いて兄を見る。

 兄が溜息を吐く。

「制服とかありえないだろう。何を言っているのだ。わがままを言うのもそこまでだ。いい加減にしろ。ドレスに決まっているだろう」

「……」

 どうしよう。ドレスが必要になるなんて。



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