スードリーのアリストロ王子
コンコンと扉をたたく音がする。
ビオエラが応対のために出ていき、扉の外から切羽詰まったように何かを話す声が漏れ聞こえてきた。
もう王太子歓迎パーティーは始まって1時間は過ぎているはずだ。
王族の挨拶が終わり、ファーストダンスが終わったころだろうか。
まだまだ歓迎パーティは始まったばかりのはずだ。
一応のためにベットの中にヴィオラは潜り込んでいる。
今回は仮病で誤魔化してはいるが、万が一見られてしまって欠席していた王女は元気いっぱいだったなどバンゲイ国の醜聞にしかならない。
これからパーティがあるたびに熱があるとか具合が悪いとか言い訳をしながら、全てのパーティに参加しないために言い続けるのもいつかは無理が来るだろう。
近々、ちがう欠席する理由を新しく作る必要がある。
「う~ん」
色々と考えてみたが、力のある人に協力してもらうしかないような気もする。
「そうね。アリストロ様は隣国スードリーの王子様だから、あの方に頼むしかないわね。……でも近隣国の王女を侍女とか役人で雇うとかありなのかしら。
だからといってバンパー国は大きいし侍女とか役人にはしてくれるかもしれないけれど、お姉さまが王妃様でいるとか、同じ王宮で働いていたら何かが起きそうで怖いし。
リコリス王女が王妃である可能性が高いバンパーやバンゲイ王妃のおひざ元バンゲイではなくスードリーで役人,官僚になりたい。もし役人になれなかったら、身分を隠した形で侍女とかで雇ってくださいってお願いしよう。
アリストロ様って妹君が2人いらっしゃったはず。それにアリストロ様だってお妃さまを迎えたら侍女とか必要になるかも。ともかく行動あるのみよね。じっとしてても何もならないし。ビオエラを連れていくことは了承してもらわなくっちゃ」
ぶつぶつ呟きながらヴィオラは悩む。
同じクラスのスードリーのアリストロ殿下。バンパーの皇太子アークライトやバンゲイの兄クロフト王太子に比べるとぐっと鋭さは少なく、甘さすら感じさせる人。非常に頭はいいので、甘さを感じさせるのは雰囲気だけだろうとヴィオラは思っている。
せっかく同じクラスにいるのだから、今度は王宮侍女として雇ってくださいってお願いしなくちゃ。
断られてもしつこく食いついて行こう!と枕を抱き込んだ。
ビオエラが毎日干してくれるからビオラの枕はふかふか太陽の匂いだ。ヴィオラは強すぎる香水の匂いが苦手だからビオリラは清潔を心がけてくれている。
「ヴィオラ様、ちょっとよろしいですか。お客様です。‥‥‥仮病は使えません。ワンピースにお着替えになってください」
後半小さな声で囁くようにビオエラがヴィオラの部屋へ顔をのぞかせる。
しょうがなくヴィオラは顔をうずめた枕から顔を出した。
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