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side 爺さん

 儂は暗い部屋で一枚の手紙を見つめていた。


「まさか、少年がナザール家の者だったとはな……ふふっ。因果というものがあるんじゃな」


「旦那様」


 孫のポポが執務室に入ってきた。


 ☆6の『買い物』スキルを得たおかげで、ずっと上機嫌じゃ。


 これからも悩んでいる孫の姿を見なければならないと諦めておったが……本当に良かった。


 それに後継者の問題も悩まなくて済みそうじゃな。


 将来を価値を見通せるスキルがあれば、トワール商会もまずは安泰じゃわい。


 ロスティ少年には感謝しかないのぉ。


「ここではお祖父ちゃんと呼んでも良いのじゃぞ」


「はい。お祖父ちゃん。それで、その手紙にはなんて書いてあったの?」

 

 その手紙には、お礼と生地のことの他に、自分の出自についても書かれておった。


 真剣な眼差しで孫を見つめた。


 こやつも後継者として知っておかねばならないじゃろう。


「よいか? ロスティ様はさる高貴なお方じゃ。今は不遇の目にあっているが、必ずや王国で名を成すと儂は思っている。それまではトワール商会はロスティ様を守るのじゃ。これはどのようなことにも優先すると心得るのじゃ」


「わ、分かりました。その……理由を聞いても」


 もっともじゃな。


 おそらく、儂がこんなことを言うのは生まれから最初のことじゃろう。

 

「ふむ。随分昔の話じゃ。儂が若い頃、トワール商会が解散する危機があったのじゃ。そういう時代じゃったと言えば済む話じゃが、ポポも知っての通り、儂らは多くの人の人生を背負っておる」


 ポポは真剣な顔で頷く。


「トワール商会だけではない、誰もが苦しいときじゃった。そんなときにな、手を差し伸べてくれる御仁がおったのじゃ。それが……ナザール公国当主様じゃ。今の先代に当たるお方じゃな」


 話していると、今のように思い出されるのお。


「いまにしてみれば、端金のような金額じゃ。それでもな、トワール商会は救われたのじゃ。儂はな、いつかいつか、その恩を返そうと思っていたのじゃが、その機会はついに訪れることはなかった」


 ふいに儂の目頭が熱くなってきた。


 どうやら、後悔があったようじゃな。


 そんな姿を見て、ポポはハンカチを差し出してくる。


「すまんのぉ。あの頃を思い出すと、こうなるんじゃよ。ポポよ。恩はいつでも返せると思うな。これは教訓として覚えておくんじゃぞ」


「分かりました。お祖父ちゃん」


「うむ。そんな儂のもとに、知らなかったとは言え、ナザールの御曹司が舞い込んできた。儂と出会ったのも何かの縁なんじゃろうな。もしかしたら、ナザールの先代様の思し召しかも知れぬとさえ、思ってしまう」

 

「そうだったんですね……分かりました。そのこと、必ず胸に留めておきます。私もロスティさんには大きな恩があります。例え商談でまとまった話とは言え、これほど貴重なスキルを譲ってくれたのですから」


「そうかそうか。ならば、なおさらロスティ様を手助けしてやらねばな」


「はい。ところで……商業ギルドのことなんですけど」


 ポポには、ボリの商業ギルドを探るように指示を出していたのじゃ。


 ギルド内には、反ギルドとして活動している職員もそれなりにいる。儂はその者たちに援助をしている。


 それゆえ、ギルドの情報も簡単に耳に入ってくる。


 それでも、ポポからもたらされた情報がにわかに信じがたいものだった。


「それは真か? ……だとしたら、我らも準備だけはしておかねばならぬな。大事になったときこと、商機ぞ!!」

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