麻婆豆腐ピーポー
自室のパソコンでネットサーフィンをしていた俺はふとBGMが欲しくなり、スマホを開いた。
通知を見てみると数十分前に友人の坂田がラジオアプリでライブ配信を始めている。
ちょうどいいと思い、俺はアプリを開いた。
「いらっしゃい。ゆっくりして行ってね。」
俺の入室を確認した坂田が低音ボイスで迎える。
それに対しコメント欄に「こんばんわー」と複数の常連リスナーから歓迎のメッセージが返ってきた。
スピーカーからは坂田の発言の合間にジューという何かを焼くような音などが流れてくる。
どうやら彼は料理をしながら配信しているようだ。食べた事はないが坂田本人や周辺の友人から聞いた話によると、彼は料理上手らしい。余談だが俺自身もそんな彼に憧れて料理にハマっていた時期があった。ただ、もう一度言うが俺は彼の料理を食べたことはない。
「はい、出来たー。麻婆豆腐!」
そして、料理実況をしつつ常連のコメントに対応していた坂田は麻婆豆腐を完成させた。
そういえば、彼は事あるごとに麻婆豆腐を作っているような気がする。・・・よほど好きなのだろう。
「じゃあ、ちょっと失礼して・・・いただきます。」
そう発言した後、麻婆豆腐を口に入れ咀嚼しているであろう沈黙が続く。
「・・・うん。う・・・っ、ゲホッゲホッ・・・ゲホ・・・ッおえ・・・」
何かを言いかけて激しく咳き込む坂田。
どした?Σ(゜Д゜)
毒でも入ってた?
大丈夫ですか?
次々に投稿されるリスナーの心配の声。
「あー落ち着いた・・・いやぁ辛い。そして、美味い!」
後半、爽やかに感想を言う坂田だが、「いや、めっちゃ咳き込んでましたやん」などのツッコミメッセージが複数のリスナーから寄せられる。
「いや、気管に入っちゃってさぁ。マジで死ぬかと思った。」
確かに辛いものが気管に入るのはヤバい。俺自身も子供の頃に激辛ラーメンで経験したが、マジで死ぬかと思った。
「あ、ごめん。ちょっと待って。辛さが目に・・・」
どうやら彼は自室で催涙ガスを作っていたようだ。
「はい、ちょっと窓開けてきた。結構空気こもってたから外の空気が美味かった。」
外の空気>麻婆豆腐
常連の一人がウマいコメントを上げる。
「おい、比較する物がおかしい。」
坂田から笑い混じりのツッコミが入る。
そして、その後はいつもと変わらず常連をイジったりイジられたり、コメントを読み上げたりして配信は終了した。
翌日。SNSを開くと珍しく坂田が呟きを投稿していた。そこに書かれていたのは・・・
麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆麻婆
「・・・。坂田さん、最近忙しいって言ってたからなぁ・・・」
俺は遠くを見つめる。
忙しいのもあるのだろうが、デフォルト状態でも坂田は大体こんな感じなので、俺は特に心配はしていなかった。
そして、彼からダイレクトメッセージも来ていたので開いてみた。
俺特製の麻婆食べません?
「・・・。」
無言で「断る」と打ち込み返信する。
俺は辛いものが苦手なのだ。
辛いものには中毒性があると言うが、彼の激辛麻婆豆腐には何かヤバいものでも入っているのだろうか?




