時を駆ける昔話5
薄れていく煙の中、2人の姿は…。
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第5話:乙姫様再び
「ゴホッ、ゴホッ!」
部屋から煙が消えると、そこにはお爺さんとお婆さんが…。
「だ、誰じゃ!?」
お婆さんが指をさす。
「わ、わしゃ浦島じゃ!」
少し沈黙が…。
「若い娘さんは何処に行ったんじゃ!?」
浦島はお婆さんに指をさす。
「浦島さんは、もっと若いはずじゃ!?」
また沈黙が流れる…。
「ほ、本当に浦島さんか?」
浦島と名乗ったお爺さんが頷く。
少しの沈黙の後、トントンと、扉をノックする音が。
「誰ですかね?」
お婆さんが扉を開ける。
すると、扉の前に、女の人が立っている。
「浦島様、開けてしまわれたのですね。」
浦島は驚いて腰を抜かす。
「お、乙姫様!?」
お婆さんは乙姫様と浦島を見る。
「え、えっと浦島さん?」
浦島は深呼吸し。
「この方が乙姫様です。」
お婆さんは、乙姫様を招き入れる。
「お婆さんにお願いしたい事がありまして、追いかけて参りました。」
浦島とお婆さんは、乙姫様を見る。
「私に伝えたい事とは何じゃ?」
乙姫様は、一息ついて話し出した。
「浦島様が竜宮城に居た5年、此方の世界では200年経ったのです。」
浦島は頷く。
「浦島様が居ない間に、浦島様の家は別の人が住むようになり、次にお婆さんが住むよう建て替えられました。」
お婆さんは頷いて。
「60年前に私の亡くなった父が建てました。」
乙姫様が頷く。
「そこで、お願いしたい事は、浦島様と一緒に住んで頂けないかと…。」
乙姫様が頭を下げる。
「私と浦島さんと?」
乙姫様が頷く。
「浦島様には住む所は今はありませんし、竜宮城には、一度入った人は来る事が出来ないのです…。」
浦島は肩を落とす。
お婆さんは浦島を見て。
「そうですね…、わかりました。」
浦島は顔を上げ。
「ほ、本当に良いのか?」
お婆さんは頷き。
「住む所がないのでしょ?」
浦島はお婆さんの手を握り。
それを見た乙姫様は、後ろから玉手箱を出し。
「そこで、玉手箱をお持ちしました。」
浦島とお婆さんが顔を見合わせ。
「また玉手箱!?」
乙姫様は頷く。
「また、年を取るのか!?」
乙姫様は顔を横に振り。
「この玉手箱は、先程の玉手箱とは違い、若返りをします。
若返っても200年前に戻るだけです。」
浦島とお婆さんは、玉手箱を受け取る。
「それでは私は竜宮城へ帰ります。」
2人はお辞儀をして乙姫様を見送った。
そして、受け取った玉手箱を開ける。
部屋中を煙が包み込み、煙が消えると、2人が若い姿に戻った。
「良かった、良かった。」
2人が若返ってから、60年の月日が流れ…。