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蔡の誘惑
月夜
鄧は一階の食堂で棍を立て掛け、座っていた。
階段を誰かが降りて来る。
蔡だった。
「あら、まだ起きてらしたの?」
鄧は頷き「奴等は、いつ来るか分からないからね」と答えた。
「ねえ。一緒に城に行かない?」蔡が言うと「城?何でまた」と聞いた。
「私の父は城主なのよ。街にはダンナから逃げて来たの」と蔡は答えた。
「でもダンナは執念深いから私を諦めて無いでしょう」
「ふうむ。で私に何故、そんな事を言うのだ」鄧が聞くと「決まってるじゃない。アンタに惚れちゃったのよ」蔡は答えた。
「そんな事言われても困る」鄧が言うと「どう困るのよ。奥さんいるの?」
「いないけどさ。ここから離れられないし」
「私を守るため、泊まっているんでしょ。ねぇ。私の城に行きましょうよ」蔡が言うと「先生の許可がないと」「そんなの置き手紙で十分じゃない。ねぇ、行きましょうよ」と蔡は鄧に体を押し付けてくる。
「わかった。行こう」鄧はそう云って身支度を始めた。