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子猫のノーラ、お散歩をする

「ノ~ラ!」

「にゃわっ!(はい、ななさんっ!)」

 元気よくお返事をしたノーラに、那奈は大きなバスケットを見せました。

 ノーラはこれがなんだか知っています。

 ピクニック、とかいう、お出かけのときによく持っていくやつです。

「めめぅ?(おでかけですか?)」

 外は晴れ、気候もよく、ちょうど連休真っ只中。那奈も学校の友達と出かけるのでしょう。

 まあ、こんな出かけたくなる日には無理もありません。

 おみやげ、よろしくおねがいしますね。

 ノーラがペコリと頭を下げますと、那奈がくすっと笑います。

「違うよー! ノーラと!」

「な!(うれしいです!)」

 ノーラと那奈、初めてのピクニックです。


**********


「みゅっみゅっ!(ななさん、たのしいですね!)」

 ノーラは赤いハーネスを留めて、那奈の横をお行儀よく歩きます。

 那奈はノーラの歩く速度に合わせて足を進めているようで、ノーラも那奈と離れることなくお散歩ができています。

 青く澄んだ空、ぷかぷかと浮かぶ白い雲、風は草花の匂いを運び、どこまでもどこまでも続く道。

 なにもかも、ノーラには初体験です。

 いえ、正確には初めて外に出たわけではありませんが、あのときは『ぷち』のことで頭がいっぱいだったので、これが初めてということにしてください。

 これは! これはたのしいですね!

「ノーラ。こっちだよー」

 那奈に連れられ、ノーラは坂道の方へ足を進めます。

 初めての坂道はなかなか手強く、ノーラの歩みはゆっくりになります。

「ノーラ、頑張れっ」

「うななー(がんばりますっ)」

 那奈の声援を受け、坂道を登っててっぺんまで来ますと、そこには大きな公園がありました。

 那奈は公園のすみにピクニックシートを広げ、荷物を下ろしますと、ノーラを呼びます。

「見て見てノーラ。ここ、私の大好きなたんぽぽがいっぱいなんだ」

 言われて見てみたノーラはビックリしました。辺り一面、小さいライオンさんがいっぱいいるではありませんか。

 ライオンさんはノーラの憧れです。いつかあんなふうに大きくなって、速くかけっこができるようになったり、ぷちを思う存分食べるのがノーラの夢なのです。

「ぅな(らいおんさん、たくさんですね)」

「あはははは。ライオンさんじゃなくて、お花ね!」

 おはななのですね。きっとつよいおはなですね。

 ノーラはふむふむと興味深げにたんぽぽを眺めます。

 その間に那奈は、自分のぶんのサンドイッチと、この前ノーラがおねえさんから頂いたお皿を出しました。

 お皿に載せるのは奮発して『ぷち』です。

「ピクニックって言ったら、やっぱお弁当だよね! ノーラ、はい!」

「なぅん?(いいんですか?)」

「いいのいいの、今日は特別だよー」

「みゅ(ありがたくいただきます)」

 サワサワと風が流れる中、楽しいランチのスタートです。


**********


 日も傾き、帰り道。

「みゅっみゅっ!(ななさん、けだまぼーるのおはなです!)」

 ノーラは、ねこのおもちゃ『毛玉ボール』の花を見つけました。白くてふわふわしててまあるい毛玉ボールの花です。

「これはね、たんぽぽの種。綿毛って言うんだよ」

「なぅん?(これ、たんぽぽなんです?)」

 小首をかしげるノーラに、那奈は見てて、と言って、綿毛を摘みます。

 そうして、彼女はふー、とそれを吹きました。

 まるで重力から解放されたかのように、ふわぁんと飛んでいく綿毛たち。

 それを見て、ノーラがうずうずします。

「やってみたい?」

「うな(やってみたいです)」

 那奈はそっか、と短く言って笑うと、ノーラにお座りをさせました。

 それから、何本かの綿毛を摘み、ノーラの口の前に差し出します。

「はい、やってごらん」

 ふー!

 ノーラが勢いよく吹くと、たくさんの綿毛が飛び立っていきます。

「みゅっみゅっ!(すごいです! すごいです、ななさん!)」

「うん、すごいねー」

 夕焼けに映り、綿毛もほんのりオレンジに光っています。

 那奈とノーラは、空高く飛んで見えなくなるまで、ずーっとずーっと、綿毛の行方を見守っていました。

永遠に続く物語ですが、この部分で一応の完結といたします。

続きは機会があれば!

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