2 転生(2)
健二の脳に大量の情報が流れ込む。
蘇る左手の痛み、痛くてつい叫んでしまったこと。
「あー、コンパスね」
「……その後じゃ」
再び健二の脳に大量の情報が流れ込む。
赤い光の球、響き渡る悲鳴。
「あー、ああああぁぁぁーーー!!!!」
「思い出したようじゃな」
俺もう死んだんか。はぁ…。
「てことはここは天国で、俺とじじぃはもう死んでると」
「まぁそんなところじゃ、あと我はじじぃでも無いし死んでも無い」
「はぁ、そーすか」
「分かればいいんじゃ、分かれば。
さっさと本題に入るか。実は普通の人は死んでもここには来ない。しかし、其方は来てる。これがどういうことか分かるな?」
ふーん、俺を試してるのか?そんぐらい分かるぜよ!
「はいっ!この俺様は選ばれしスゥーパァースペシャルヒュゥーマンだということですね!」
ここで立ち上がって今世紀1番カッコいいポージングゥ!
(決まったぁ!)
「……ふざけておるのか?」
あーこれヤバいやつだな、激おこぷんぷんまるだな。
ワントーン低くなった声に全てを悟った健二。
「いえ……。分からないので教えていただけませんか?」
「……問題は死因なんじゃよ、其方は赤い光の球に殺されたよな?」
あーあれね、例のあれね。思い出しただけで怖くなってきちゃうねぇ。
「はい」
「それは実は流れ弾なんじゃよ、我の弟子たちの遊びの」
「つまり、僕は神様の遊びに巻き込まれて死んだと」
うわー、巻き込まれ死か。巻き込んでくスタイルは良くないって、いやほんとに。
「そうじゃ、まぁ可愛そうだと思うよ、そのせいで我も其方なんかと話す羽目になるとは……」
「僕のこと嫌いなんすか!」
俺でもそんぐらいは分かるよ!、まったくぷんぷん!
「それで、ここに読んだのは其方にお詫びをする必要があってな
「無視かよぉ!」
「普通、神は世界を見守る事しか出来なくて手出しは禁止なんじゃよ。だがこのような事が起きてしまったと。だから、お詫びとして記憶を持ったまま生まれ変わる転生と、その世界での容姿、性別、年齢を自由に決められる権利を与えるとなったのじゃ」
「お!それは非常にありがたいっすねぇー」
まじラッキー!高校まで勉強サボれるやん。
しーかーも、超絶イケメンもしくは超絶美少女になれると。サイコォーーー!!
だいぶ衝撃的なことを言われても動じない健二だった。
どーせなら、強力チート能力とか欲しかったなー
そんなことも考えていた健二だった。
「あと、その出血大サービスの代わりに一つ頼みがあるのじゃが」
うわぁ、自分で出血大サービスとか言っちゃってるよ。
「内容は何でしょうか?」
その内容は最近神々の間でその世界で1番活躍するのは誰かという賭けが行われていて、転生人で望みの容姿を持っていたら活躍間違いなしだから、是非とも転生後は活躍してほしいとのことだった。もちろん報酬もあるって。
来世でも神々の遊びに巻き込まれるのか。まぁそんぐらいいかなぁ。
「しょうがないっすねー」
「じゃあ頼んだぞ。さぁ転生後の身体の制作に取り掛かるか」
「おぉー!」
こうして健二マークIIの制作に取り掛かることになった。
「じゃあとりあえず性別から決めるかのぅ、男か女、どっちじゃ?」
ここは大事なところだな。
でももう決めてるんだよなぁ、来世は女って。
「女!」
「……え?」
「聞こえなかったんすかー?女ですよ、おーんーな」
「……え?」
これ男って言わないと進まないやつじゃないよね?いや、まじで女じゃないとか致命的だから。
「変える気はないっすよ」
「そうか…、女か…」
早く折れてくれてよかったなぁ。じゃないとここだけで一生終わりそうだったから。
…………まじで。
「じゃあ容姿を決めるか、この水晶玉に手を置いてイメージしてくれ。」
そう言って置かれた水晶玉。なんかそれっぽくなってきたねぇ。いいよ、実にいいよ。
そして、手を置いてどんどんイメージしていく。
140センチほどの低い身長に細い身体、腕、足。童顔で、くりくりの目。顔はもちろん超可愛く。髪は茶髪のミディアムで目は黒色。
出来ました!ロリを求め続けたロリコンバスター‼︎
そしてダメ押しのケモ耳ぃ!
「ケモ耳は無理じゃ。別の種族になるからのぅ」
ケ、ケモ耳が無理だと……。
ケモ耳が、ケモ耳が無ければぁぁぁーー!
出来ない、出来ないんだよぉぉぉぉーー!
●●●●●●●●●●
「という夢を見たのさっ!!」
「……」
憐れみの視線を向けるなっ
「男でお願いします!」
「ケモ耳とやらのためだけに女にしたのか」
ケモ耳が出来ないと分かり、そしてケモ耳少女がいると分かった今!目指すはケモ耳ハーレムッ!!
さぁイケメンを作るぞっ!はやくはやく!
「……こっちで勝手につくることもできるんじゃぞ」
「あー、いや、なんかすんません」
神様容赦ねぇー。怖えー
「はやくしてくれ。意外と疲れるんじゃよ」
「よしっ、イケメンつくるぞぉー!」
「はぁ……」
細身だけど割と筋肉がついてる細マッチョで、身長は
175センチでやや高め。はっきりとした顔立ちで一言で言うとイケメン。ほんのちょっと茶色がかった黒髪に黒目。
さぁどうです?甘ーいマスクに誰もが二度見歩く魅了の魔法!
「……さっさと年齢を決めるぞ」
ちょっとぐらい反応してもよくない?
「この顔立ちなら20ぐらいかのぅ」
もう聞く気はないですか、はぁ。
「じゃあ20でいいですよ。ちなみにケモ耳がいるってどんな世界に行くことになるんすか?」
俺はちゃんと聞いてましたぁー。ずっと気になってたんだよねぇ。
凄かった、だいぶ。魔法があって、魔物と亜人がいて、レベル制、スキルとかもあるってよ、ステ振りとかも出来るって。
すごいね、うんすごいね!
他にも色々教えてもらった。ステータスの見方とか、魔法の打ち方とか、後は常識も。
いや、そんぐらいはわきまえてますから。
向こうの世界のね。なるほどなるほど。
だいたい日本とおんなじ感じか。通貨は違うんだ。細かいのは自分で調べろって、そこが知りたいの、そーこーが!
「じゃ、転生を始めるとするかのぅ、あ、最後に名前を教えてくれ。」
名前かぁ、考えてなかったわ。なんかかっこいい名前にしたいしなぁ。うーん。
ーーよし決めた!
「アルフとかどうです?」
「……あぁ。じゃあ始めるぞ」
「よくないすか!?ねぇ!?」
「……」
突如足元に黄色の魔法陣が現れた。答える気は無いそうです。
神様がなんかぶつぶつ言ってる。だんだん視界が白い光で満たされていった。一瞬体が軽くなりそのまま世界が傾いていった。……気がした。
「ふぅ、やっと終わったか。あー言い忘れたなぁあいつの思考を真面目にしたの。……まぁいいかっ。次会うときが楽しみじゃ」
こうして元は荒木健二。今はアルフのちょっと不安な異世界転生物語が始まった……




