第3話
スピード、と打ったらスピード婚が最初に出て来て自分は普段携帯で何を書いているんだろうと思いました。
一瞬エアリアルの方に視線を投げ、もう動かない彼女をみて湧き上がる怒りに身をまかせる。
人間は儚い。それをわかっていたのに、出てこないよう言っても彼女なら出てきてしまう可能性があったのに、こうなることを防げなかった自分に対しても怒りがふつふつと湧いて来る。
時間が巻き戻せたらいいのに。天使が万能ならよかったのに。
ギリ、と噛んだ唇から赤い血が滴る。
そのとき、信じられない声を聞いた。
おぎゃあ……。
酷く弱々しく、だが確かにそれは聞こえた。
バッとエアリアルの遺体に視線を戻す。彼女のスカートの中で何かが動いている。
駆け寄って、そっと布を捲り上げる。そこから出てきたのは、血に塗れた姿で、天使の証である小さな羽を動かしている赤子だった。
母体が死しても這い出て来る生命力は天使のものに間違いない。自分とエアリアルの、子供、と呆然と赤子に見とれながら、体は反射的に剣を抜き背中を狙ってきたゴルギアの剣を防ぐ。
「チッ、ダメか。」
舌打ちするゴルギアを気に留めることもなく、そっと小さな生命を抱き上げる。
エアリアルも妊娠には気がつかなかったのだろう、守るものがあるとわかっていたら、全力でそれを守る、そういう女性だった。
「人間との子供か。枷持ちがまた増えるな。」
「うるさい。この子が枷持ちになるかどうかはまだわからない。」
赤子をそっと胸にしまい改めて攻撃の態勢をとる。相手はそれなりの剣の使い手、だが厄介なのはそれでなく、ゴルギアが出してくる真っ黒な槍、エアリアルを殺したそれが一番厄介だった。
普通の槍とちがい、内臓をズタズタにするように何本もの突起があり、刺されて引き抜かれただけでもかなりのダメージを食らう。
魔力で構成されているそれは能力値が高い証拠であり、今のゴルギアなら何本でも出せるであろう。
対してイーライの武器は、まっすぐな、何の変哲も無い剣。
一見頼りなさそうに見えるそれは、イーライが自分で満足するまで叩き続けた刃であった。
装飾もあっさりしたその剣は天を裂き地を轟かせる。魔法との相性も抜群。
その剣を掲げ、イーライが仕掛けた。
怒りと悲しみ、それから小さな希望のお陰で集中力は普段の倍以上に上がっている。イーライには、ゴルギアの動きが止まって見えた。
右首筋にまず一撃。相手が剣で防ごうとするその下をくぐり、斜め上から剣を叩き込む。いい手応えがあった。
「ぐっ………」
思わず、と言ったていでゴルギアから漏れた声に、重い攻撃だったということがわかる。
そのまま空中で旋回すると速さに重さを乗せたまま、左腰骨を狙う。ゴルギアが気づいて防ごうとした一瞬、イーライのスピードが上がる。骨をえぐる感触。攻撃した後、後方に一度飛び、その反動をまた攻撃へと変える。