第2話
その日、その時、人間の絶対統治者は天使であった。天使は人間を下等生物と呼び、対等な関係を拒否した。これにより人間とかかわったものには罰が与えられることになる。天使による天使の粛清。
だがそれを意に介さず人間と関わりたがる天使がいた。
彼は本来であれば天使を統制し、面倒を見る立場だが、ひとりふらりと人間界に立ち寄っては見ているものがあった。
彼は毎日、人間の少女を見ていた。よく笑い、よく歌い、彼と目が合うと綺麗なお辞儀をする少女。
彼は彼女が好きだった。朗らかな笑い顔も、何かに怒っている時も、何をしていても可愛らしく見える。生きている様を見るのが好きだった。いつか彼女が誰かを愛し、その相手と子供でもできれば、また楽しみが増えるな、と思っていた矢先に、声をかけられた。
酷く緊張して、胸の前で組んだ指は震えているのがわかった。木の上から見下ろしていた自分に、震える声で声をかけてきた少女に、彼は恋をした。
人間好きの天使イーライ。その性質は異端、その実力はSSクラス。最上級天使であった。
人間と交配することは天使として最も下等な思考であり、行為であった。だが人間と交配し、子供を授かるとその子供は驚くほど強くうまれた。天使の中でもその情報は極秘とされ、生まれながらに強さを携えた者自身でさえも何故、への答えは与えられなかった。
イーライもそんなことは知らなかったし、知る必要も無かった。彼はただ愛するものと毎日を育める幸せがあればそれでよかった。
天使による、天使への討伐命令が下るまでは。