プロローグ 後編
やった。オレはとうとう成し遂げたぞ!!
思えば長い一年間だった。毎日まいにち勉強漬け。教科書と会話し辞書と共に寝る。そんな日々もこれで終わりだ!
季節はまだ少し冬の寒さが残る三月の上旬。高校三年の宝也秦はPCの画面の前で意気揚揚としていた。
見ていた画面はK大の合格発表がされているサイトだった。K大とは自分の県のみならず、全国で見比べてもトップクラスの大学だ。
そう、オレはこの大学に見事合格したのだ!
自分の番号が書かれているところを再度確認し、スクリーンショットまで撮った。
それほどまでに彼はこの大学に合格したのが嬉しかった。
去年までシンの成績は中の下程だった。あまり勉強に対してやる気というか、モチベーションが上がらず三年になるまではなんの取り柄もないタダの学生だった。
部活にも入っておらず、放課後は真っ直ぐ家に帰りスマホをいじる。勉強はテスト前にしかし無いそんな生活を高校に入って二年間続けてきた。だが、そんな彼にある日、転機が訪れる。
高二の八月、友達に誘われ渋々K大のオープンキャンパスに行った時である。
そこでシンはあるK大生の男に出会った。そしてその男と自分についての色々な相談をして解決することが出来た。言わばその男はシンの恩人になった。
そして来年またこの大学で再開することを約束した。
え?どんな会話をしたかって?それはまた別の機会に話すことにするとしよう。
シンは合格した事が分かるとこの喜びをどう落ち着かせるか考えた。両親はまだ1階で寝ている。このままはしゃぐと怒鳴られるのは確定だった。
とりあえず家の近くを散歩することにしてみた。
まだ日が昇り始めて少ししか立っていない空には雲はなく、冷涼な風がシンの頬をなでた。
三年になってからは登下校以外で外に出た記憶はなかった。自転車通学だったため、こうして外を歩くのは丸々一年ぶりかもしれない。
近所を歩き始めると今まで一瞬で通っていた道に様々な発見があった。新しい道が出来ていたり、前まであったコンビニが潰れてみたり。今なら浦島太郎の気持ちが少しだけわかった気がする。
一通り近所を歩き尽くした。公園に立っている時計を見るともうすぐ正午を過ぎるぐらいだった。
いつの間にかお腹も空いている。
もう帰るか。そうして家までの帰路に着いた。
だが、彼は家には帰りつけなかった。
彼が家に帰る途中、そこで彼は金色の髪をした少女と出会うのだった。