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プロローグ

とある研究所にて。

「渉、ついにできたぞ。10個目だ。」

白髪頭で白衣を着た男性がふらふらと立ち上がり、渉と呼ばれた二十代くらいの青年のもとへ小さな基盤の様なものを持って歩いていく。

「先生…」

渉はその基盤を受け取り、箱に入れる。箱は何かキャラクターとポップな文字が書かれており、ゲームカセットのような外装をしていた。

「これを、能力開発ソフト~2020~と名付けようか。」

付箋にskls2020と書き、基盤を入れた箱に貼った。

「では、明日の10時までに任務を遂行し、そのあと天羽へ向かいます。」

「わかった。では私は少し休ませてもらおうかな」

「先生、約束ちゃんと守ってくださいね。」

「わかってるよ。」

先生と呼ばれた白髪の男はソファに横になる。

「行ってきますね。」

そういって、10個の箱を黒い袋に入れ、渉は部屋を後にした。

渉の気配が完全になくなった後、男は目を閉じながら、つぶやく。

「この200年、科学的根拠が全く見当たらない存在に自らなってしまった上に、こんなに蝕まれるとは。この国はほんとによくできてるよ。」



レンタルビデオ店にて。

「このゲーム、売れませんかね…僕、間違って二個買ってしまって…」

渉はさわやかに苦笑いをうかべながら店員に話しかける。

「ミニマルモンスターⅡですね。当店では890円で買い取りますが、いかがいたしましょうか?」

「ほんとですか!じゃ、お願いします。」

この作業を、中古品の店や、ゲームを取り扱っている店で行い、またより広範囲にするため、流通倉庫にも紛れ込ませた。

作業が終わるころには、日が昇っていてうっすら街を照らし始めていた。

10時に、と言っておきながら4時間も早く終わってしまい、研究所までのみちのりを渉は慎重に注意を払いながら運転する。

「もう少しで。もう少しで。ああ、わくわくしちゃうよ!」

興奮を抑えきれず、口元にはきれいな笑みがこぼれていた。


研究所についてから、寝ていた先生を起こして、天羽神社に向かう準備をする。

先生は天羽神社に電話しているようだった。

結構な遠出になることを予想して、自分用の食料や衣服を鞄に詰める。

僕と先生しかいないこの研究所は、山奥の廃墟を使っているからよく動物の被害にあう。

僕が来るまで先生は一人でここで研究してたみたいだけど、僕が助手になってからはちゃんと鍵もつけてくれたし、電気も通してくれた。

しっかり戸締りを確認して、研究所もきれいに片付けておいた。

「先生、用意できましたよ!」

「おお、じゃあ行こうか。」

僕と先生は車に乗り込む。

先生は免許なんて持ってないから、僕が運転するんだけど。

「飛行機で行けたら早かったのにな」

僕は皮肉を込めて言うと、先生は笑いながらいつも同じことを言うのだ。

「飛行機はいろいろ引っかかるんだよ…おまえにも分かる時がくるさ。」

先生は窓の外を見つめる。その目は何かを慈しむような目だった。

しばらく運転して、最寄りの駅に着く。

誰もいない駐車場に車を止めて、僕はキャリーバッグを引きずって歩く。先生は手ぶらだ。

僕が二人分の乗車券を買って、一つ、先生に渡した。

先生は見た目は30代だけど白髪だから、よく親子に間違われる。僕を拾ってくれて育ててくれたのは先生だから親といっても過言ではないんだけど、親というくくりにシテほしくないかな。先生はもっと偉大な人なんだ。親よりももっともっと尊敬すべき人なんだ。

僕はにこにこしながら先生と一緒に、電車にのりこみ向かい合わせに座る。

「先生、先生の話聞かせてよ。昔みたいにさ。」

「ううむ…これ以上禁忌を犯すとどうなるかわからんからな…過去の話はできないな。代わりにこれからの話をしょうか。」

「そっか、体もう限界なんだっけ。未来の話かあ。僕、わくわくするよ」

「まずお前は、儀式のあと、他の四人と会っておいた方がいいかもな。お前はまだ若い。」

「御法川さんたち?」

「そうだ。まあゆっくりでいいけどな。それと、例の実験結果の観測を頼む。観測だけなら禁忌ではないからな。」

「もしうまくいってたら?」

「10人が10人発症する可能性は皆無に等しい。ただ10年以内には発症するだろうな。してくれないと私の400年が無駄になるよ。成功者を観測しつつ、我々にはできないことをさせるのが一番の目的だからな。」

「僕のできないこと、か」

「間違っても禁忌に触れるなよ。こればかりは私にも何が起こるかわからんからな。」

「わかってるよ。これからたっぷり時間をかけて僕は僕のしたいことを探すよ。」

「お前は好奇心が強すぎるところがあるからな。しっかり職務を全うしてくれよ。」

「もう、心配性だな先生は。」


僕たちは電車に揺られながら最後の日をいつもどおり楽しんだ。



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