19:ぺろっと舐めちゃいましょう
あらすじ
森でダンジョンを探すよ!
18話が読みづらかった為、手を入れてみました。
内容がイマイチ把握し辛かったという方は、宜しければもう一度ご覧下さい。
【グリュネルの森】
◆
昨日冒険者ギルドの受付嬢である、アシェータ・フルエッダこと金髪美女アシェに伝えた、「モンスター異常発生ダンジョン原因説」は、ギルドとしては微妙なラインの意見だったようだ。
理由は、ギルドの依頼ボードに掲示されていた依頼内容からだ。
掲示されていた内容は以下の通りだった。
◆
B:ダンジョン発生調査
報酬:大金貨1枚
※但し成功報酬となる。ダンジョン発見後の申請も受付可
昨今のモンスター異常発生から、高難度ダンジョンが開放された可能性がある。
グリュネルの森におけるダンジョン発生の有無についての調査を願いたい。
掃討済みではあるが、複数匹のモンスター出現の可能性がある為、Bランク以上のパーティでの受諾を推奨。
◆
「Bランクの報酬で大金貨っていうのは、見つからないのを前提にした報酬設定なのかな……」
Bランクの依頼は、その多くが金貨での支払いになる。
大金貨を報酬とするようなものは、Bランク相当の依頼の中でも特に手間の掛かる物や、今回のダンジョン発生調査のような、明確な終了地点の見えない依頼に掛けられることが多い。
元々はギルドに報告もせずに調査するつもりだったので、大して期待はしていなかったが、自分の意見が認められないというのは、少々悔しいというものだ。
「まぁ、討伐依頼や採集依頼のついでに、見つかれば良い程度の扱いなのでしょうね」
言いながら、ローザは鍋をかき混ぜる。中身はベア肉と野菜のスープだ。
現在私達は、ダンジョン発生調査の為、グリュネルの森に来ている。
既に陽は落ちており、現在少々開けた場所で夜営の準備をしているのだ。
「しかし、ラナちゃんのカバンは本当に便利ね。こんなかさばる物はなかなか持ち歩けないもの」
かさばる物というのは、鍋などの調理器具やフォークや皿といった食器類、そしてテントだ。
私がゲームの世界から持ち込んだアイテムは、基本的に元々のゲーム内での機能を維持しているのだが、その中で意外にお役立ち度の高いのがカバンだ。
レアアイテムと言うわけでもなく、普通に店売りアイテムで、アイテム名もストレートに「カバン」だ。
ゲーム内では、アイテムの所持枠を9999に拡張する機能があり、既に数十種類のアイテムがこの中に入っている。
この世界で、私のカバンが正確に何個収納できるのかは分からないが、実質四次元ポケットと化していると言っていい。
鍋やテントといった通常であれば邪魔になるようなアイテムも、カバンに収納して持ち運ぶ事ができるので、一般的な冒険者と比較して大変快適な屋外ライフを過ごせるのだ。
『むぅ……ん。やれやれ、窮屈さや空腹を感じるわけではないが、外の空気に当たらんと落ち着かんな』
そうそう、夜営にあたってイスマイールを召喚している。
夜の屋外は冷える為、護衛を兼ねてモフモフさせて頂いているのだ。
エメフラの町にいた間は、クルワットの森がすぐ近くにあったので時々放していたのだが、王都となればテイムクリスタルから出す事が、なかなかできなかったのだ。目立つしね。
『先日の熊退治に、我も出せば良かったものを……』
イスマイールは、放置されていた事が悔しいのかそんな恨み節を聞かせてくる。
「そんな拗ねないでよ……街道沿いで遭遇戦に近い形で始まっちゃったから、そこまで頭が回らなかっただけだから」
私は毛皮の奥に手を入れ、首の辺りをわしわしと掻いてやると、軽い音で鼻を鳴らしてイスマイールが目を閉じる。
「それで、ダンジョンがあるとすれば森の東側になるんだよね」
私のカバンのおかげで保存食は大量に持ち込める。
クスクスやアルザがいるおかげで森の中でも食材になるようなものには困らないし、多少凶暴化したモンスターがいたとしても、白狼族であるイスマイールに襲い掛かってくるようなものは滅多にいない為、夜営をするにしても神経を擦り減らす事もない。
そんな理由から、私たちのパーティは一般的な冒険者よりも随分楽に、長時間の探索を行うことができるのだ。
「そうね……グリュネルの森はヤナザ山に繋がっているから、洞窟があるとすればそちらの方角が有力でしょうね」
言いつつスープの味を見るローザ。
本体はスライムだが、味覚の類は一応あるらしい。そういえば以前、食事は嗜みだって言ってましたね。
「肉が焼けたぞー」
ジャイアントラクーンの肉を焚き火で炙っていたアルザが、焼きあがったものを手渡してくる。
道中で私が仕留めたものを、アルザが器用に捌いてくれた物だ。
元々人狼族の戦士として半狩猟生活を送っていただけあって、このあたりのサバイバル技術は高い。基本アホの子なのに。
ジャイアントラクーンの肉、つまりタヌキ肉は、町で食べる養殖されたボア肉などと比べると、生臭さがあって少々クセのある味だが、焼きたてであればそれなりに美味しく頂ける。
黒胡椒的なスパイスがあればもっと美味しくなりそうではあるが、香辛料の類は高価なので流石に購入してないのだ。
「ラナちゃん、スープもそろそろだから器を出して貰って良いかしら?」
焚き火にくべた枯れ木のはぜる音を聞きながら、森での食事が始まった。
食事もひと段落した頃、クスクスが私の髪を引っ張ってくる。
「うん?どうしたの?晩御飯足りなかった?」
あまり野草や木の実などが見つからなかった為、今回の夕食は肉類が中心になっていた。
勿論肉類を食べられないクスクスには、優先的に分け与えたのだが……
『ううん。そうだけどそうじゃない。このくらいの季節になったらもっと木の実とか、食べられる草とかいっぱいあるはずなんだけど、この森は凄く少ないの。これちょっと変だよ』
うん? グリーンベアとかが大増殖したせいで、森の食べ物が減っただけじゃないの?
『勿論そうやって減ったのもあると思うんだけど、齧られたり折られたりした痕がないのに、木の実が生ってない枝が多いんだよー』
首をかしげる私に、ローザがクスクスの言わんとした事を補足してくれる。
「上位吸血種は知っているでしょう? 彼らの魔力が強く出る城周辺では、周囲2,000エーカーほどの土地が影響を受けて、木の実や野菜ができにくくなるのよ」
強力なモンスターやダンジョンなど強い魔力を発するものは、いるだけで少なからず植物や動物へ影響が出るらしい。
「と言う事は、この辺にダンジョンがあるのか……」
「上位吸血種とまでは言わなくとも、それなりに強力な個体がいる可能性が高いわね」
そう結論付けたローザの声を聞きながら、ふとイスマイールを見る。
「あれ? そういえばイスマイールはそういう影響ってあるの?」
『我か? 我の一族は月の女神の祝福を受けておる。世の生命に歪な影響などは与えん』
人間が人くくりに魔獣と言うが、白狼族は正確には神の祝福を受けた神獣のカテゴリになるらしい、なるほど。
『む、風が強くなってきたな。汝らもう少し寄るがいい』
体を丸めたイスマイールの懐に全員が潜り込む。はぁ……もっふもふでぬくい。
『火は絶やさんようにしておく。ゆっくり休むが良い』
我はクリスタルとやらの中でゆっくり寝るからな、とイスマイールは小さく言い、私達の体に優しく長い尾を被せた。
◆
【グリュネルの森・東の深部】
◆
森の中を進み始めて4日目。
イスマイールは、周囲に冒険者がいる様子がないのを確認して、クリスタルから出している。
『ふむ、見てみよ、かなり濃いマナに満ちておる』
大きな顎をしゃくって見せた方向には、これまでとは明らかに違う捻じれた木が絡まり合い、不自然に黒ずんだ葉がデコレートされている。
『木だけじゃないよ、森自体が変質しちゃってる』
クスクスの言葉の通り、これまでは森の中といっても日中はそれなりに太陽の光を取り込んだ明るさがあったのだが、目の前にある絡まりあった樹木からは、じっとりと纏わりつくような空気を孕んでいるのが感じられる。
霊木の精というだけあって、変異を感じさせる木々を見て、普段あまり見ることのない沈痛な面持ちだ。
「何かあるとすればあの奥でしょうね」
変質してしまった魔樹ともいえるモノを見たローザは、形の良い指を当てて唇を小さく形を歪める。
「うん、なんかビリビリ来るな」
異常を感じたのだろう。アルザも軽く構える。
『ふむ、ラナよ。マナの流れでおおよそ分かる。この先におるのは生き物ではない』
イスマイールが魔性と化した森の木々の奥を見やる。
「という事はダンジョン?」
『恐らくな。悪意も狂気も感じん。おおよそ意思のあるものではなかろうよ』
イスマイールが一歩前に進み出る。
「うん?」
行動の意図が読めず怪訝な顔をする私に、イスマイールは不敵に大きな口を歪める。
『なに、黙って見ておれ』
言うなり白狼は力強く咆哮し、歪に曲がった木々を吹き飛ばした。
『うむ、これで魔力の出所まで一直線じゃ』
自慢気に鼻を鳴らすイスマイール。いやいや、地形変わっちゃってるんですけど!
ローザといい、アルザといい、なんでこう私の周りにいる奴らはこうチートくさいんだ……
『ラナも大概だけどねー』
心を読んだように呟くクスクスの声はサラッと流す事にする。
元々は唯のサラリーマンですよ? 人畜無害に決まってるじゃないですか、やだなー。
開けた視界の先に、石造りの祠のような物が見える。
自然にできた物のようには見えないが、なんとなく圧迫感を感じる。
見る限りダンジョンの入り口なのだが、私には獲物に大きく口を開ける野獣のような、そんな気配を感じていた。
◆
【グリュネルの森最深部・未だ名前のないダンジョン】
◆
イスマイールが邪魔な魔樹を消し飛ばしたが、それでもまだ暗い道を進み、私達はダンジョンの前までやって来る。
魔樹に遮られた光は、当然のようにダンジョンの中には届かない。
「流石に明かりが必要ね」
光源と魔法を唱え、ローザが魔法の光を暗闇の中に投げ込むと、ギチギチと硬質な音を立てて、ムカデやフナムシのような生き物が森へと這い出していく。
見れば入り口は石柱が立てられており、中に入れば足元は石畳を敷き詰めたようになっていて、足場の不安定さはない。
壁面はむき出しの岩だが、所々で松明を立てるためか燭台のようなものが備え付けられている。
魔法を使えば採掘もできるんだろうけど、これまで見てきた町や村の様子からすれば、かなり高度な建築技術で作られたもののように見える。
長らく利用するものがいなかったらしく、ダンジョンに入った私達に埃を塗り固めたような空気が、質量を伴うように押し寄せてくる。
「んー、酷い空気なんだわ」
一際鼻の良いアルザが鼻筋にしわを寄せて顔をしかめる。
確かについ目を閉じたくなるような不快さのある空気だ。換気扇回したいねぇ……ないけど。
『うぅむ、この広さでは我は中には入れんな』
ダンジョンの入り口から少し進んだだけで立ち止まった私達に、イスマイールは地面に這いつつ鼻先を突っ込んで来る。……というか入るつもりだったんですね。
『仕方あるまい。我はここで入り口を守っておこう』
獣どもが出入り口におっては安心もできまい、だってさ。やだ、イスマイールさんイケメン。
「ありがとうね」
私からの言葉に目を細めるイスマイールを背に、重苦しい石畳のダンジョンへ私達は入って行った。
「ラナーそっち行ったよー」
アルザからの声を追いかけるように空中を蛇行してきた蝙蝠を、軽く踏み込んだ私が「フラガラッハ」で叩き落す。
「正面から攻撃すると避けてくるから、真下に潜り込んでから叩き落した方がやりやすいね」
翼長1.5エーカーはある蝙蝠にとって、このダンジョンの横幅は少々狭いようで、真下に潜り込まれると左右のどちらかに回避するのだが、回避した後は壁に阻まれて動きが制限されてしまうのだ。
これまで人間ではなく虫や動物を相手にしてたからだろうが、あまり手ごたえのある相手でもない。
「そこそこ程度の冒険者の攻撃なら、多少退路が塞がれても避けられるはずなのだけれどもね」
私の楽勝宣言にローザが軽く笑う。うーん、アルザのスキル訓練……まぁまだ内気功の訓練なんだけど、効果出てるのかな?
「おう、そろそろラナにも簡単なスキルの使い方教えても良さそうだわ」
ダンジョン出てからだけど、と先行するアルザは但し書きを付け加える。
スキルを使えるようになったら、時々は最前線をアルザとスイッチしてもいいかもしれない。
基本的に私たちのパーティは、アルザが最前線で私がフォロー、大火力がローザという役割だ。
今回もダンジョン内では先頭をアルザが歩き、続いて私+クスクスで最後尾がローザという陣形なのだ。
と、ジャイアントバット呼ばれる大蝙蝠を、10数匹程倒したあたりで、アルザが立ち止まる。
「ちょっと待った、何かいるぞ」
鼻を鳴らしながら警戒するアルザの声に耳を澄ませると、ゴリゴリと何かの擦れるような音が聞こえてくる。
軽く頷いたローザが光源魔法をもうひとつ出してアルザの前に投げ込むと、光に照らされた先で通路が横に大きく膨らみ、通路というよりは広場のようになっているのが見える。
まだ距離がある為正確な広さは分からないが、照らされた範囲を見る限りかなり広そうだ。
と考えた時、揺らめく光源の魔法が人影を照らし出した。
「矢が来るぞ!」
言うと同時に、アルザの手甲が甲高く鳴り、ローザと私は咄嗟に身を伏せる。
『あっ!あそこ!』
クスクスが指差した先には、鎧を纏った骸骨の群れがひしめいていた。
弓骸骨と呼ばれるアンデッドが狭い通路に向かって矢を射掛けてくるのを、アルザが手甲と脚甲を振るって叩き落とす。
矢継ぎ早という言葉通りに飛んでくる矢の嵐を、アルザが巧みに処理し続けているが、いくら反射神経に優れるアルザであっても、いつまでも避け続けてはいられないだろう。
「アンデッドって何の魔法が効果あるの?」
飛び込んで頭数を減らそうにも、あれだけの量の矢を回避しながら攻撃するのは、私にはかなり厳しいので、ローザの魔法で処理できないかを訊いてみる。
「アグナの神聖魔法でないなら、強力な炎で灰にするか……」
声を低くしながらローザは魔法陣を展開させる。
「物理的にバラバラにするかのどちらかよっ!」
力強く言い放ったローザの声に合わせて、骸骨兵士共がいるであろう広場から、何か巨大なものが落ちたような音がする。
何らかの魔法を放ったのだろう。このお姉さんは相変わらず準備が良い。
「超重磁場で動きを止めたわ。まずは弓骸骨をなんとかして頂戴な」
ローザの言葉の通り、それまでアルザの足を止めていた矢の嵐が止まる。
「ラナ、ちょいこっち来て!」
アルザの声に応えて、私は前へ出る。
「超重磁場 が解けるまで、あと20カウント。弓が片付いたら援護に入れるわ」
「任せて!」
ローザの声を背に、私はクスクスに合図する。
『よーしラナ!ぶっとばせー!』
ぺちぺちと私の頬を叩いたクスクスが、ローザの頭の上へと飛んで行くのを確認し、私は戦闘態勢に入ったアルザの横に並んだ。
「弓骸骨を見つけ次第叩き壊そう。囲まれないように注意しつつ、広場の入り口は確保!」
できるか? と目線をやった私にアルザが不敵に笑う。
「……2、1よしっ!」
ローザの指定した20カウントを、私がカウントし終わったのとほぼ同時に、石畳に倒れ込んでいた骸骨兵士共が、骨を鈍く鳴らしながら立ち上がり始める。
「遅いんだ……わっ!」
アルザが一瞬で最奥にいた弓骸骨の集団を蹴り飛ばす。
右、左……よし、他に弓を持ってるのは手前の数体だけっ!
瞬発力のあるアルザが距離のある弓骸骨を片付け、手近な骸骨は私が片付ける、それが今回の作戦だ。
「ラナ! 骸骨は頭を砕けー! それで復活しなくなるぞ!」
了解! アルザの助言に従って、「フラガラッハ」を骸骨共の頭部に叩きつけると、仮初の生命が砕け散り、バラバラ崩れ落ちていく。
「あとは、入り口を確保っ!」
前に進み出た私を取り囲もうと動く骸骨に弓骸骨はもういない。
残った骸骨兵士共の手持ちの武器は、剣と槍、後は棍だ。
斬りかかって来た剣骸骨の一撃を小剣で受け流し、そのまま頭上から斬りつける。
クラッカーでも割るような軽い音を出して、 頭蓋骨を破壊された剣骸骨が崩れ落ちた。
「ローザ! 弓骸骨片付いたよ!」
「分かったわ!さぁ……灰になりなさいっ!」
広場に進み出たローザの手から、蛇のようにくねる炎が骸骨兵士達を舐め回し、骸骨たちの持っていた槍や棍が焼失する。
「ふふ、一度だけじゃ逝けないのよね? ほら、もう一度……炎よ舐め回してあげなさいっ!」
妖艶に光るローザの瞳が、より強い赤を灯す。
―地に住まう者
―燃え盛る竜鱗を持つ者よ
―汝に逆らいし愚かな者共を
―灼熱の抱擁を以って灰燼と化せ
『火蜥蜴の抱擁』
炎の轟音が燃え落ちる骸骨の怨嗟の声に混ざり、地下らしからぬ広い空間に響く。
強い炎に焼かれた骸骨兵士達の頭部にヒビが入っていき、彼らの武器は私達に届くことなく崩れ落ちていく。
「ん、アルザ! 右奥の残りを片付けるよ!」
「りょーかいっ!」
骸骨兵士達の振るう武器を軽く避け、剣と拳で頭蓋骨を砕いていく。
程なく、広場を埋め尽くしていた骸骨兵士達は全て沈黙した。
『骸骨兵士の溜まり場になってたみたいだねー』
まだ熱気が残る広場の中央に立った私の肩に、クスクスが乗り移ってくる。
「んー、暴れたりなかったんだわ」
ぶっちゃけ4、50匹はいそうな骸骨兵士の中に突っ込んで行って弓骸骨を蹴散らしただけでも十分大暴れですよ?
納得いかないといった感じで頭を捻るアルザに対して、ローザが近づいてくる。
「とはいえ、中位魔法を一撃耐える程度には強化された骸骨だったみたいね」
という事は、こいつらがダンジョンに住んでいるっていう強いモンスター?
「どうかしら?少なくとも貴女たちみたいに、頭蓋骨を一撃で砕けるような前衛か、中位以上の魔法を連続で使える魔法使いがいるパーティじゃないと対処はできないでしょうね」
言いつつ、ローザと私は周囲に転がる骨の残骸を見回す。
「まぁ確かに、戦闘時間そのものは短かったですけど、結構緊張感のある戦闘だでしたからねぇ」
アルザはともかく、私あたりは下手をすれば矢の的になって、ハリネズミにされた可能性も大いにある。
実は、骸骨兵士に突っ込むタイミングを計っていたあたりから、結構気を張っていたんだよね、包囲されるって怖いし。
私は、少し長めに息を吐く。
「そうね、ここがダンジョンの最奥という訳でもなさそうだし、少し休んでから先に進みましょう」
確かに今回と同じ規模の戦闘が連続すると消耗が激しそうだ。
ローザの提案に従って、ちょっと休んでいこう。
広場の奥にある通路にまでは、光源の魔法は届いていない。
まだ暗いダンジョンの奥を見やりながら、私達は腰を降ろした。
つづく




