1 兄のもとへ
私の大好きな曲をきいていたら思い付いたお話です。
笑顔を取り戻すために不器用ながらも頑張る高校生の話。
負けそうになったとき、この話をよんでほしいです。
君の笑顔取り戻すため
何度でも僕は歌をやめない。
私、詩乃は高校二年生。
友達と楽しい高校生活を送っている。
今日もいつも一緒にいる美香、永久と帰っている。
「ねー、私たちも来年受験だねぇ」
「ほんとだよねー、信じられない!」
最近この話題多いなぁ、と苦笑しながら私も乗っかる。
「やだねー、受験生って見てて大変そうだよね」
「あ、受験生っていえば、留衣くんもじゃない?」
留衣は、私の兄、高校三年生だ。
「ん、そーなんだよね…」
「でも留衣くんなら大丈夫でしょ!昔から私たちにも勉強教えてくれてたけど、めっちゃ頭良かったし!
「それに、イケメンだし!」
いた確かにそうなんだけど。私とほんとに兄妹なのか疑うくらいにイケメンなんだけど。何この差は。って感じなんだけど…
「それは関係ないとおもうな!?」
「美香はほんとにイケメンが好きねぇ…」
「だってイケメンだもん。」
理由になってないとおもうな…?
まぁいいか。
「で、留衣くんどう?」
「やっぱり大変そう。でも頑張ってるよ。」
「そっかあ。いいとこ目指してるんだろうなぁ。頑張って、って言っといて!」
「私からも!」
「うん!二人ともありがとう!じゃあ私はこっちだから、またね!」
「またねー!」「ばいばーい!」
私は嘘はついてない。頑張ってるし、大変そうなのは事実だよ。
ちょっと冷や汗が出るような内容だったけど、上手く誤魔化せた。
ここから私は大切な場所に向かう。毎日通っている、大好きな場所に。
他の誰でもない、お兄ちゃんに会うために。
お兄ちゃんへの手土産を持って、私はお兄ちゃんのいる建物についた。
最早顔見知りで、いつも私を見てはにっこり笑ってくれる白い服のお姉さんに挨拶し、お兄ちゃんの部屋に向かう。
お兄ちゃんの部屋は303号室。
ここに漂う独特の匂いも、私は割りと好きだ。だってお兄ちゃんに会えるから。
一息ついて、ガラリと扉を開けた。
そこにはお兄ちゃんがいつもの格好で、いつもの白いベットに、いつも通りの笑顔で座っていた。
「おう。よく来たな!」
「お兄ちゃん、体調はどう?」
「元気元気ー、ちょー元気だわ!って、これ病人の言うことじゃ無いな!」
そんなお兄ちゃんに私は安心する。ガッツポーズまで作っちゃってるお兄ちゃんは、とても病気には見えなかった。
お兄ちゃんが座っている白いベッドの隣にいすを出してきて座る。
あれ、今日はお兄ちゃんがいつもと違うような気がする。
ふんふんと楽しそうな鼻歌まできこえてくる。今日はなんだか嬉しそう、いったいどうしたんだろう。
そう思ってお兄ちゃんの顔をみて、私はその理由に気づいた。
「お兄ちゃん、それ、帽子変えたでしょ?似合ってるね」
ぱぁっと顔が輝いた。
「気づいた?正解!いいだろー、これ。母さんがくれたんだ」
「お兄ちゃん黄色好きだねー。」
そんなお兄ちゃんのリクエストで、花瓶には黄色い花。
「だって、見ていて明るい気分になれるだろ?俺、花も向日葵が好きだしな」
頭の上のニット帽をつまみながら嬉しそうに話す。
「じゃあ、夏になったら向日葵の花もってくるね!」
「まじで!?めっちゃ嬉しい!ありがとな!」
そう言うお兄ちゃんの笑顔をみたら私は明るい気持ちになれるよ。