父親がまともだった件
「……様!」
ん?誰だ? まだ眠い……。
「あと5分……」
「それは5分前にも聞きましたよ! ほら、もうお昼過ぎですよ。ほら、起きてくださいデイル様!」
仕方ない。起きるか。
寝ていたソファから立ち上がると、ステラが着替えを持って立っていた。
「おはようございます。デイル様。」
「あぁ、おはよう。」
……ん?
「ステラさん?なんで俺のスボンに手をかけてるの? いや、俺達まだ会ったばっかりだし、そういうのはちゃんと手順を踏んでからじゃないと……。」
「なっ……!? 違います!! デイル様のお着替えを手伝おうとしているだけです!」
ああ、着替えを、ってなんでやねん。どんな羞恥プレイだよ。
しかし、顔を真っ赤にしているステラも可愛いな。
朝からごちそうさまです。
「着替えくらい1人で出来るから。てか、されたら俺が恥ずかしいから遠慮してくれると助かるんだけど……。」
「しかし……。」
引き下がるか。もう一押しだな。
「あっ! もしステラがどうしても俺のパンツを見たいって言うなら話は別だけど?」
「はぁ、分かりました。部屋の外にいますので、終わったらお呼びください。」
ふぅ、諦めてくれたか。
「ならこれを着てください。」
うおっ!? 眩しっ!?
マジか。金の服とか初めて見たよ。
センス悪すぎんだろ。
なんか高級そうな刺繍もしてあるし、貴族ってみんなこんなの着るのか?
「えーと。もう少し地味な服ないか? 」
「地味な服ですか? ありますけど……。いいんですか?これ、デイル様のお気に入りだったのに」
これが……お気に入り……だと……!?
どうやら前の俺は常人には到底理解出来ないファッションセンスをしていたようだ。
当然俺も理解出来ない。てかしたくない。
「ステラ正直に答えてくれ。
……こいつをどう思う。」
「すごく……ダサいです……。」
よかった……!!ステラの感性がまともで。
これが普通だって言われたら失踪待ったなしだったな。
「俺もそう思う。前の俺こんな服着てたの?マジで? 」
「デイル様のセンスがまともになってる……!? 」
えっと、ステラさん? なぜ涙ぐんでらっしゃるんですか?
これは、前の俺の知り合いとかに会ったら恥ずかしくて死ねるな。
「ぐすっ。すぐに別の服をお持ちしますね。」
なにも泣かなくていいだろ……。
人に泣かれるほどのファッションセンスの持ち主とは……。恐るべし、デイル オルグレン。
別に俺がセンスがいいって訳じゃないけど、流石に金色の服はなぁ。どこの成金親父だよ。
「デイル様。お洋服をお持ちしました。」
ステラが服を持って部屋に入ってきた。
今度の服は普通だな。高級そうなのには変わりないけど。
紺色が基調だから、落ち着いた感じで割と俺好みだ。
「これ、ステラが選んだのか?」
「はい。そうですけど……。」
「いいセンスだ。」
低いダンディボイスで気分は伝説の傭兵だ。
待たせたな。
ステラはには分からないだろうが、まぁいい。
「では、私は部屋の外で待っていますね」
なら着替えるか。
うん。やっぱり手触りとかは前の世界に負けるな。
まぁ、慣れたら大丈夫だろう。
それにしても、やっぱりこの世界の文明なんかは遅れるのか?
見た感じ進んではないと思うげど……。
まぁ、そこんとこも要調査だな。
「もうよろしいですか?」
「ああ。もう着替え終わった。」
部屋にステラが部屋に入ってきた。
「デイル様。今、そこに旦那様がいらっしゃって、執務室に来るようにと。」
旦那様ってことは俺の父親か?
俺の記憶喪失のことは多分知ってるよな......。
何の用だ? まぁ、言ってみたらわかるか。
「分かった。ていうか、俺この部屋からまだ出たことないから場所が分かんないんだけど。」
「なら私がご案内します。では早速行きましょうか。」
ステラに付いて部屋を出た。
いや、ひろっ!?
広いとは思っていたけど、想像以上だな。
覚えられるかなこれ。しばらくは迷いそうだ。
ステラはしばらく歩いていくと、大量にあるドアのうちの一つの前で立ち止まった。
「ここです。……、私はこれで失礼しますね。」
ここか。父親も変な服を着ていたら嫌だなぁ。
デイルの父親だからな......。少し覚悟しとくか。
ノックすると、中から返事があったので一応失礼しますと言って部屋に入る。
中には書類が積んである机があり、そこに一人の男が座っていた。
「おお、来たか。遅かったな。」
まだ分からないけど意外に普通の人だな。着てる服も普通だし。
でも、まだ判断するのは早いな。
「記憶がないと聞いたが、本当か?」
やっぱり耳に入っていたか。
まぁ、お母さんも知ってたし当然か。
「はい。起きた時は名前も思い出せませんでした。今はステラに聞いて自分の名前とここがどこなのか位はわかります。」
「そうか……。それなら、私のことも分からないのだろう? 私はダラン オルグレン。お前の父親だ。」
「はい。ステラから自分の家族のことも聞いていたので知っています。これから色々ご迷惑をかけてしまうかもしれませんがこれからよろしくお願いします。」
すごい他人行儀になったけどまあいいか。俺からしたら他人だからな。
だが、実の息子がこんな態度をとられたら傷つくだろう。顔をくしゃっと悲しそうに歪めた。
俺も少し気使うべきだったか......。
「そんなことは気にしなくていいんだ。なにかあったら遠慮なく言ってくれ。なんでも協力するからな」
「はい。ありがとうございます。」
なんだ。普通にいい人じゃないか。変にかまえて損したな。
でもよかった......。父親がキンキラの成金親父だったら今後うまくやっていく自信なかったぞ。
「もう下がっていいぞ。」
「分かりました。......失礼します。」
ふう。なんか緊張したな。部屋を出るとちょうどステラが歩いてきた。
「終わりましたか? 朝食のご用意が出来ています。召し上がりますか?」
「そういえば起きてから何も食ってないな……。じゃあ貰おうかな。案内してくれるか?」
「はい! ご案内します。」
ステラについて行くと、大きなテーブルが置いていある部屋についた。
20人くらいなら平気で座れそうだ。やっぱり金持ちはスケールが違うな。
それでイケメンとかマジなんなんだよ。どうせ貴族だから婚約者とかいるんだろ?
リア充か!? リア充なのか!?
「ドイル様? 大丈夫ですか?」
「い、いや。なんでもない。」
テーブルには朝食とは思えない豪勢な料理が並んでいた。
「こんなのいっつも食ってんのか…….。」
食べきれるかなと思いつつ、席に着く。
「それではこれで失礼します。食べ終わりましたらそちらのベルでお呼びください。」
ファミレスかよ……。ファミレスよりは何10倍も料理は美味そうだけど。
「いや、ここにいて話し相手になってくれないか? 1人で食うのも寂しいしさ。」
「えっと、私でよろしいのですか?」
「もちろん。むしろステラがいい。」
ステラは顔を少し赤くして、俺が席に着くように言うと恐る恐る座った。
そんな怖がることないのに。
変な事言ったか?俺。この世界ではあまりしないのかもしれないな。
そういった常識の部分も忘れてるかなぁ。どうしたもんか。
「唐突で悪いんだけど、ステラ読み書きできる?」
「はい。一応できますが……。」
「なら教えてくれないか? 何故か会話は出来るのに部屋にあった本をパラッとめくってみたけど全然分かんなかっただよなぁ。」
会話出来るのが何かしらの補正がかかってるんなら文字の読み書きもできるようにしてくれればよかったのに。
何故か発音とか日本語と全然違うのに理解できるし、自分が言いたいことは頭の中で勝手に翻訳してくれる。最初は少し違和感あったがもう慣れた。慣れって怖いな。
「私なんかよりも旦那様に頼まれて優秀な家庭教師を頼んでもらったほうがいいと思いますけど……。」
うーん。それも考えたんだけど、なんかめんどくさそうなんだよなぁ。それに決まった日にしか来ないからそれ以外の日にすることがなくなるし。
「やっぱりステラに教えて欲しい。教えるのうまそうだし。」
「そうおっしゃられるならいいですけど。」
少し照れたように俯きながら言った。照れたステラも可愛いです。
ステラさんマジ天使。
いかんいかん。顔がにやける。自重しなければ。
さぁ、勉強頑張るぞー!!
……明日から。
遅くなってすいません。色々忙しくて……。
3月の半ばまではあまり投稿出来ないと思います。
本編は所々敬語がおかしい所があると思うので気になった点があったらコメントで教えてください。
最後にここまで読んでいただいてありがとうございました。次回も見ていってください。