お母様が美人すぎる件
食事の用意をすると言って、ステラが出ていって三十分ほどたった頃ドアがノックされた。
返事をすると、食事を持ったステラが入ってきた。
その後に続いて、金髪で碧眼の美女も入ってきた。
20代くらいか?誰だろう?少なくともメイドじゃないな。
ん?どっかで見たことあるような気がするんだけど・・・。
日本ではこんな人見た覚えないしなぁ。
「お食事のご用意が出来ましたよ。
・・・ここに置きますね。」
と言って、高級感あふれるテーブルに置いた。
「あぁ、ありがとう。えっと、そちらは?」
ステラに聞くと、一瞬悲しそうな顔をして、美女の顔をチラッと見た。
美女は俯いているので長い髪が顔にかかって、表情は見えない。
「こちらはご主人様のお母様です。」
ああ!どっかで見たことあると思ったら、さっき鏡で見た自分の顔に似てるんだ!
親子なら似てるのは当然か。何ですぐ分からなかったんだ?
・・・やっぱりルックスは遺伝するのか。イケメンは死すべし。滅ぶべし。
「えっと、すいません。俺、何も覚えていなくて、あなたの事も分からないんです。」
ステラには口止めしているから中身が違うことは知らないはずだ。
それなら、予定どおり記憶喪失のふりをする。
ステラは信じてくれたが、もしここがあまり文明が進んでいない世界だったら中身が違うなんて言ったら悪魔がついたとか言われて、下手したら殺されるかもしれない。
現代日本でも頭おかしいヤツ認定間違いなしだ。
俺のお母様はうつむいていた顔をゆっくり上げた。
目には涙が浮かんでいた。
まぁ、自分の息子がいきなり記憶を失ったら泣きたくもなるか。
・・・なんか悪いことしたな。罪悪感がやばい。
お母様は俺の方に歩いてきて、俺を抱きしめた。
しばらくそうしていて、やっと離してくれたと思ったら、真っ直ぐに俺の目を見てきた。俺の姿がその青い瞳に映っているのが見てる。
「記憶が無くなったのは、ステラから聞いたわ。
・・・私はアンナ。あなたの母親よ。
これから大変だと思うけど、私も協力するから記憶が戻るように頑張りましょうね。」
そこら辺が分からないんだよな。
何かの拍子で記憶が戻るかもしれないし、戻ったとしたら俺の記憶はどうなるのか。
・・・今考えていてもしかたないか。
「はい。ありがとうございます。」
俺の返事を聞くと、微笑んで部屋を出ていった。
あー緊張した。あんな美人と話したことないからな。
ステラも美人だけど、同世代だから大丈夫だったけど年上になるとどうもな。
そういや、腹減ったな。飯食うか。
ベッドから立ち上がり、ご飯が置いてある
テーブルのソファに腰掛ける。
メニューはパンにシチュー。蒸した野菜。
少し味気ないが起きたばかりの俺の体のことを考えてくれたのだろう。
スプーンでシチューをすくって口に運ぶ。
「うまい・・・」
思わずつぶやいてしまった。
ステラは一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに微笑んで、
「そのシチュー、今コックが休憩中だったので私が作ったんですよ」
「そうなのか。マジでうまいよ。ステラは料理が上手いんだな。俺も前の世界では自炊してたけど、こんなに上手くはなかったよ」
そう褒めるとステラは恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。
「嬉しいです。ご主人様に褒めていただけるなんてありませんでしたから。」
「こんな料理を食べて作った人を褒めないやつなんているのか?」
「ご主人様はまず私が作ったものは口をつけようとはしませんでしたから。」
「・・・なんで?」
なんとなく理由は分かるが
「私が作ったものはマズイに決まってるんだそうです。」
「・・・・・・マジで俺のこと殴ってくれないか?」
「い、いえ!!?そんなことできません!!」
マジでなにやってんだよデイル オルグレン!?
この料理が食べないなんて人生の半分損してるぞ!?
はぁ、哀れな奴だったんだな。
若干こいつが可哀想に思えてきた。
ほんとミジンコ以下くらいだが。
パンは前食べてたのよりは硬かったので、シチューにつけて食べる。
蒸した野菜も少し塩味がついていてうまかった。
あっという間に完食してしまった。
「うまかったよ。ありがとうステラ。」
「いえ、私もご主人様にそう言ってもらえて嬉しいです。」
「そういえば話変わるけど俺、前は普通の平民の学生だったんだよ。」
「?そうなんですか。」
ステラは不思議そうに首をかしげている。
「だから、ご主人様って呼ばれるの慣れてないんだ。だから名前で呼んでくれないか?」
また、驚いたように目を見開いた。
「はい。分かりました。デイル様。」
うん。デイルって呼ばれるのも慣れてないんだがご主人様よりはましだ。
飯食ったら眠くなってきたな。
食器を持って部屋を出ていったステラの後ろ姿を眺めながら、ソファーで横になる。
すぐに睡魔が襲ってきて眠ってしまった。
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