死んだと思ったら天使が降臨なさった件
書斎のような部屋で2人の男が言い争っている。
1人は四十代くらいと思われる男ともう1人は十代半ばだろう少年だった。
「お待ちください下さい父上!僕はなにも悪くないんですっ!相手が僕のことを馬鹿にしてきてっ!!」
「言い訳は聞かん。そこら辺の貴族ならまだしも相手は他国の貴族だぞ?下手したら外交問題に発展していたかもしれなかったんだ。戦争にでもなっていたらどうする?責任取れるのか?それに馬鹿にされたのはお前が勉学に怠けていたからだろう。そんなだから魔法のひとつも使えないんだ!」
「ッ!!?しかし!」
「もう下がっていい。お前の処分は後で伝える。」
少年は悔しそうにうつむきながら部屋から退出た。
それを見届けると男は深いため息を吐いた。
「はぁ。馬鹿だとはおもっていたがまさか他国の貴族に手を出すとは。これで少しは懲りればいいが。跡継ぎは養子も考えねばなるまいか・・・?」
そんなことを自分の父親が考えているともいざ知らず、少年は部屋で荒れていた。
壁を殴ったり蹴ったりと自分が傷つくのもいとわず物に当り散らしていた。
「くそっ!どうしてこの僕がっ!!くそっ!くそっ!」
しばらく暴れていたが疲れたのか、暴れるのをやめて肩で息をしていた。
そこで八つ当たりをやめていたらよかったのだが、最後に壁を蹴ってしまった。
その反動で床についていた足を滑らせ、思いっきり後頭部を地面にぶつけて失神した。
その音を聞き、使用人が駆けつけてきた。
部屋の中で倒れていた少年を見つけ、顔を真っ青にして駆け寄った。
「大丈夫ですか!?ご主人様!ご主人様!」
その声が少年に届くことはなかった。
☆
日が沈みかけている夕方。一人の少年が人気のない裏路地を歩いていた。
少年は黒髪黒目で中肉中背。どこにでもいる容姿だ。しかし分かる者が見たら相当鍛えていることが分かる。
「おい、お前が今村和也か?」
学ランを着た少年に声をかけたのは巨漢でどこかの学校の制服を着ているがボタンがはちきれそうだった。
「あぁ。そうだが。・・・あんたは?」
巨漢の男は怒りの形相を浮かべて吠えた。
「よくも俺の舎弟達をぶちのめしてくれたなぁゴラァ!!お前にも同じ目・・・いやそれ以上にたたきつぶしてやる!!」
男が凄むがそれをどこ吹く風でまっすぐと男を見据えている。
「何黙ってやがる!!忘れたとは言わせないぞ!!」
「悪い。まったく憶えてない。」
少年ののんびりとした声に男の額に青筋が浮かんだ。
「よほど死にたいらしいな。ならお望みどうりやってやるよ!!」
男が駆け出した。拳を握って右手を振りかぶっている。
指にはメリケンがはまっている。あれで殴られたらタダでは済まないだろう。
だが少年は臆する様子もなく逆に好戦的な笑みを浮かべていた。
殴れる距離まで距離を詰めて男が右ストレートを放ってきた。
少年はそれを最低限の動きで避けた。
からぶって出来たすきで相手の懐に潜り込み、全身のバネを使ってアッパーを放った。
それは男の顎にクリーンヒットし、白目をむいて倒れた。
「うっし。終わりっと。」
軽い口調でそう言い、少年は裏路地を後にした。
裏路地を抜けた少年は見つけてしまった。
小さな子猫が車に惹かれそうになっているのが。
「っ!!?」
少年は弾かれたように走り出し猫を抱き抱えるが、そこから逃げる時間はなく車に軽々と吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられた少年は見るに耐えない姿になっていた。
全身の骨が折れ、骨が皮膚を突き破って出てきている場所もある。
誰の目にももう助からないのは明らかだった。
幸い、少年がかばった猫は無事なようでにゃ〜んと心配そうに血だらけの少年の顔を舐めている。
「元気で・・生きろよ・・・。」
最後にかすれた声で猫に声をかけ、少年は息を引き取った。
☆
「知らない天井だ。ってお約束やってる場合じゃないな。・・・ここどこだ?」
とりあえず自己確認しますか。
今村和也15歳高1。好きなものは猫で趣味はゲームとアニメ鑑賞。
・・・オタクですねわかります。
確か可愛い猫ちゃんをかばってひかれたはずだよな?
でも病院って感じじゃないんだよな。
てかなんだよこのベット。余裕でダブルはあるぞ。
体の怪我も治ってるし、俺ナメック星人並みの再生力はない。はず・・・。
てか部屋広っ!!え?俺、狭いアパートに一人暮らしだったはずだよな?
やったね女の子連れ込み放題だー(棒)。
ん?あれは?
部屋にはソファやらテーブルやら高級そうな家具が置いてあり、俺は勉強机の上に本が置いてあるのを見つけてそこまで歩いていく。
まじであの怪我治ってるなぁ。死んだと思ったんだが、悪運だけは強いみたいだな。
机の上の本と手に取ってパラパラとめくってみる。
・・・読めねぇ〜。
寝てる間に外国に運ばれたのか?
それならとりあえず英語圏じゃないな。文字がアルファベットじゃない。
じゃあ言葉も通じないのか?
・・・これ、帰れるのか。雲行きが怪しくなってきたぞ。
そんなことを考えてるとドアがコンコンとノックされた。
返事をしようとするがそれを待たずに中に入ってきた。
中に入ってきたのは・・・天使だった。
綺麗な長い黒髪をポニーテールにしている同い年くらいの女の子だ。少しつり目気味の髪と同じ色の瞳。綺麗な鼻筋に薄い唇。服はメイド喫茶のようなフリルはついてないがメイド服を着ていた。
何より特徴的なのは頭についた二つの猫耳とスカートに空いた穴から出ている、猫の尻尾だった。
少女と目が合った瞬間。心臓が打ち抜かれた。
体が固まったかのように動かない。
その拘束から開放された俺は
「結婚を前提にお付き合いしてください。」
とりあえず告白した。
読んで下さりありがとうございます。
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別の小説も載せているので良かったら見ていってください。