あの夏
幻夏
あの時は怖いって感情は透過され、嬉しさの裏側をもすり抜けた。
あ、まただ
見つめていた癖して知らんフリしやがって
明日から夏休みだ。
相変わらず、彼女はそっぽを向いていた
積乱雲が上へ上へと立ち上がる動きが分かる。
彼女は何がしたいのか、何を伝えたいのかよくわからない
担任教師は耳にたこができる程、休暇中の過ごし方を熱心に言っている
僕は、聞いているフリ。
彼女は、外を向いて夏の煌めくも暑そうな景色に頬杖をしながら見つめているようだった
僕と彼女の席からの距離はそんなに離れていない
だから、こそ時々くる視線が痛い程伝わる。
なんなんだよって思ったのはここ最近の事だ
そして、もぅ我慢できなくなった
担任の長い話が終わり僕は友達と夏休みの計画を練っていた。
『!』
ぱっと目があった。
そう、それだけのこと。たかが目があっただけ…だが、僕は我慢できなかった。
友達との夏休み計画を断って、彼女のもとへ向かった。
友達も周りも突然の事にざわついた。
だが、僕の耳にはそんなのどうでもよかった
僕が彼女の前に立つ。
彼女は相変わらず、夏のむせかえる様な外を暑さを感じないかの様に澄ましながら見つめていた。
その態度にも腹が立った。
『少し話がある』
感情のあまり、咄嗟に冷静な低い口調で話をかけていた。
彼女はふっとこちらを向いたと思えば、すくっと席から立ち廊下へ向かった
その傲慢な態度は何かを待っているかのように優雅でもあった。
廊下へ出た時だ、友達が大声で叫んだ
『もぅ、やめようぜ!』
僕は『お前には関係ないだろ』と言い返した瞬間に予想外の言葉を友達に返された
『お前、病院行ってこい』
僕は、とっさに彼女に指を向けて言った
『病院行きはコイツだろーがっ!』
『が…』
目の前には誰もいない。
『お前、アイツ死んでからおかしいぞ…?』
あぁ、そうか…
あの夏か。
残夏