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黒き魂を持つ銀髪の少年  作者: 神代零
3章 軍師を仲間に
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18.漆黒の翼

 


 三メートルの大きさを誇る四つ腕を持つマンティアスが進む道を塞ぐ。マンティアスは四つの鎌で切り裂いて戦うカマキリのような魔獣で、ランク6の実力を持つ。


「ここは皆でやるぞ!戦えないエリザとゼアは下がって下さい!!」


 巨大な魔獣相手に戦闘の経験があるウェダが指示を出す。訓練所にいた頃は実戦経験をするために魔獣討伐に赴くことがあった。パーティを組んで魔獣と戦うため、一対一になるか巨大な魔獣に対して全員で掛かるかのどちらかだった。1人で数体の魔獣と戦うケースはなかったので、ウェダとリエルは数体と同時に戦う経験を詰めなかったのだ。

 だが、今は巨大な魔獣が一体だけであり、巨大な魔獣相手の経験がないイクスよりウェダが指示を出した方がやりやすいだろう。


「ランク6に3人だけなのは、少し厳しいかもしれないけど、マンティアスなら動きがそれ程に早くはないから早い動きで撹乱した方がいいかもしれない」

「あの鎌に触れなければ、問題はない」

「ふむ、2人はマンティアスと戦った経験が?」

「ウェダだけあるけど、私はありません。別のパーティだったからね」


 リエルはマンティアスと戦った経験はないが、マンティアスとの戦い方と特徴を教えてもらっているから落ち着いて対応出来るのだ。


「あの時は6人パーティでやったからそんなに苦戦をしなかったが、今は3人だけだから少し注意が必要だ」

「4人で鎌を抑えているうちに2人で攻めるだったよね?」


 そう、マンティアスの一番怖い攻撃4本腕に付いているあの鎌であり、それを封殺すれば、戦いが楽になる。

 だが、今は3人で挑むから気を付けろと言っているのだ。


「成る程ね。向こうは待ちくびれているようで、そろそろ来るぞ!!」

「キシャァァァァァァァ!!」


 マンティアスは羽を使って低空飛行をしてくる。そのスピードはボアボックが『突破』を使った時と同じぐらいだったが、ランク6だったら遅いぐらいだという。

 距離が離れていたのもあり、簡単に避けられた。避けた瞬間に鎌が振るわれたが、イクスは受け止めずに大鎌の刃で受け流していた。


「剣速はそれほどに早くないな」

「気を付けろ!マンティアスの能力サイは二つある。一つ目は……」

「キシャッ!」


 ウェダが説明する前に、マンティアスが一つの能力を発動した。『刃打』で、右上と左上の鎌に小さな魔法陣が浮かび、それを猫だましをするように叩いたのだ。

 イクスは嫌な予感をして、大鎌を盾にしながら後ろへ跳んだ。




 バシィィィィィッ!!




 衝撃波が撒き散らされて、近くにいた人はさらに後ろへ吹き飛ばされていた。


「あんな能力があるなら、先に教えてくれよ!」

「す、すまない。衝撃波を出す能力で、近くにいなければ鼓膜を破壊されることはないし、刃を動けなくすれば、使えない能力だ」

「そのようだな。二つ目は?」

「っ!?二つ目の能力が出るよ!!マンティアスの前に立たないで!!」


 リエルが叫び声を聞いたイクスはマンティアスの方に目を向けると、続いて二つ目の能力を発動させるマンティアスの姿があった。

 次は4本の腕に魔法陣があり、同時に腕を振り切ると、小さな竜巻のような物が飛んできた。


「『風旋毛』だ!」

「前に立たなければいいんだな!?」


 イクスはマンティアスの前にいたため、横へ跳んで小さな竜巻を避けた。小さな竜巻は直線上にあった木や草を斬り裂いて倒していた。


「前方にしか発動出来ないから前に立たなければいい。あと、見た通りに4本の腕がなければ撃てない」

「どちらも4本の腕が無ければ出来ない能力ってことか」


 なら、やるべきのことは決まっている。あの腕を落とすか封じることが出来れば、能力が使えなくて攻撃方法も減ると言うわけだ。

 イクスは念のために、”魂の共鳴”を発動しておく。帝国の軍と戦った時のように長時間ではなければ、解いた後に倒れることはない。


「策はあるのか?」

「俺とリエルで鎌をなんとか止めるから、本体をやっちゃってくれ」

「うん、攻撃力はイクスが一番高いからその方がいいわね」


 それぞれの役割を決めた時、マンティアスが低空飛行で襲ってくる。


「おらぁっ!!」「はぁっ!」


 2人が前にでて、厄介な鎌を受け止めていた。だが、鎌は4本もあり、残った鎌で攻撃をしようとする。

 2人とも、一本の鎌を止めただけで止まらないとわかっているので、すぐに反応出来ていた。

 ウェダは炎を、リエルは雷をそれぞれの武器に宿らせて上からの攻撃にも対応する。バチバチッと、火花を散らして鎌を弾いて行く。


「やるな。俺も行くか」


 ダンッ!と踏み込んで身体能力が上がったイクスが回り込んで後ろから黒い大鎌で切り裂こうとするが、マンティアスにはこっちの動きが見えていたようで、こっちに一本の鎌を振り回してきた。

 カマキリやトンボなどは複眼と言う目を持っており、視界が広い特徴を持っている。魔獣であるマンティアスは複眼以上の眼を持っており、後ろに回り込んだイクスの姿は丸見えだった。つまり、マンティアスには死角がないのだ。


「そう甘くないか!なら、腕を斬り落としてやる!!」


 まず、邪魔な腕を斬り落としてから背中や腹に攻撃を加えようと思ったが、イクスの大鎌は鎌の刃ではない腕を狙ったのに、軽く刺さっただけで、完全に斬れていなかった。


「硬いな!?」

「イクス!!」


 いつの間にかに、マンティアスはこっちへ二本目の鎌が向かってきているのが見えていた。

 それに反応出来ないイクスではなく、黒い刃を消した。抜こうとする動作がなくなった分だけ早く後ろへ逃げることができた。


「魂は無限じゃないんだぞ」


 もう一回、”死神の黒鎌”を発現し、構えた。マンティアスは3人の中でイクスがヤバイとわかっているのか、イクスの方に身体を向けていた。

 マンティアスの刃ではない腕の部分は、他の部位よりも硬く出来てある。もし、腕を落とされたら攻撃方法が半減するどころか、ほぼ無くなってしまうのと変わらないのだから、腕が硬くなるのは生物としては当然のことだろう。


「キシャッ!!」

「またあの竜巻か!」


 イクスを近付かせないためなのか、『風旋毛』を撃ってきた。


「そう何度も撃たせるか!!」

「こっちに向きなさい!!」


 ウェダとリエルが横から懐に入ろうとするが、マンティアスは油断をしていなくて、低空飛行で離れたのだった。


「くそっ、遠距離攻撃で攻撃し続けるつもりか!?」

「こっちは遠距離攻撃が出来ないのに~」


 近付こうとすると、一定距離を保って、『風旋毛』で攻撃してくる。能力を使うのに、魔法と同様に体力を使うが、魔獣は人間達と違って体力が倍以上はあるので、そう簡単に疲れないのだ。


「ちっ、これは使いたくなかったが、そう言ってはいられないな……。ウェダ、リエル!一瞬だけでいいから、隙を作ってくれ」

「何か方法があるんだな……?」

「わかったわ!!」


 2人は了解するが、近付けないには、何も出来ない。普通のやり方ならな…………




「隙を作るためだ。仕方がねぇな!!」

「えいっ!!」

「ピギッ!?」


 普通ならやらないことを2人はやってのけた。それはーーーーーー武器を投げることだった。

 2人は武器が一つしかないのだ。もし、投げたら武器が無くなってしまって戦えなくなるのだから、普通はやらないことである。

 普通ではないことをやったのだから、マンティアスは驚愕して『風旋毛』の発動を止めて鎌で武器を弾いていた。別に弾かなくても今までのように低空飛行で避ければ良かったのだ。だが、弾いたため、僅かな隙を作ってしまった。




「今だ。”滅びの喰翼”!!」




 隙を見つけたイクスはそれを逃すわけでもなく、新たな魔法を発動した。紋章が浮かび出ている左手から黒い翼が現れ、形が定まっていなくてユラユラと揺れていたが、翼のような形に見えた。


「発射せよ!!」


 左手を振ると、翼から黒い弾が一発撃ち出された。

 その発射されたスピードは結構早くて、隙ができたマンティアスには避けられなかった。

 避けられなかったマンティアスは腹に大きな穴が空いており、マンティアスは自分の腹を見てようやく気付いたといった感じになっていた。




「ぎぃ、ギガァァーーーー」




 最後の叫びを残して、マンティアスは前のめりに倒れ、死んだのだった。






「弾一発だけで、魂を三人分か……」




 出来れば使いたくなかった理由は、魂の消費が他のより激しいからだ。たった一発だけで魂三人分というのは、まだ魂の蓄えが少ない今はあまり使いたいとは思えなかったのだ。


 たが、面倒な相手を一発だけで倒せたのだから、上々だろうと無理矢理に納得させるのだったーーーー





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