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黒き魂を持つ銀髪の少年  作者: 神代零
プロローグ
2/25

プロローグ2

本日二話目です。



 


 魔獣の前に出るレクア。白銀のレイピアを狼型の魔獣に向け、魔法も使う準備も忘れない。


「狼型か、ガーウルフだな。ランク10の魔獣だから問題なく勝てるだろう」

「口ばかり動いていないで身体を動かしなさい」


 ジルは馬車に寄り掛かって、レクアとガーウルフの様子を見ていた。レクアを全く守る気がないように見える態勢だった。

 ジルが言っていたランクと言うのは、強さを表しており、数字は1~10まであり、その数が小さくなるごとに強くなる。ガーウルフはランク10であり、兵士1人でも余裕で勝てる。

 ランク1となると、国家全体が動いてようやく倒せるような強さになってしまう。最近はそんな化物が現れたという噂はない。


「グルウゥゥゥゥゥ!」

「来い!」


 先に動いたのはガーウルフであり、レクアに噛みつこうと歯を見せている。レクアは慌てずに、充分引きつけてから…………


「今っ!」

「ガウッ!?」


 レクアは左斜めへ回避して、無防備な脇腹にレイピアを突き刺した。だが、心臓に当たっていなくて、即死はしなかった。レクアはそれをわかっているらしく、そのまま『魔法』を発動をした。


「”火炎の槍”!!」


 レイピアを持っていない左手を突き出し、手の平から炎の槍が現れ、そのままガーウルフを吹き飛ばした。

 ガーウルフは悲鳴を上げながら4、5メートルぐらい吹き飛び、力が抜けたように数回痙攣した後…………もう起き上がることはなかった。


「お疲れ、久しぶりの魔獣と戦ったけど、どうだった?」

「ふぅ、最近は書類仕事ばかりで身体が、鈍っていると思ったけど、余裕だったな」

「ほらなっ、大丈夫だったじゃねぇか!」

「ジルは黙って下さい。レクア様、お見事でした」


 ミジェルがギロッとジルを睨んで黙らせた後に、レクアを褒めていた。


「やっぱり、『魔法』があると早く終わるんだよな」

「確かに、『魔法』は便利だが、使うと体力が減るんだよな……」


 レクアは今、三秒ぐらい全力で走ったような疲れが出ていた。もっと酷い時は、気絶する程の疲れになるのだ。

『魔法』と呼ばれている能力は、元々、生き物が持っていた隠されていた能力であり、使う度に体力が減るのは、身体の中にあるエネルギーを使っているからなのだ。

 レクアが使っていた”火炎の槍”は、『火炎魔法』の技であり、そんなに珍しい魔法ではない。

『魔法』には三つの格に分かれており、レクアの『火炎魔法』は三つの中で下の格になり、数が多い魔法である。


 その格は一番下が、『コモンクラス』で、次は『レアクラス』、最上が『レジェンドクラス』となる。


 ちなみに、ミジェルはレアクラスの魔法を持っており、強力な効果、威力を持つ。

 母親のフェアルークが持つ『生命魔法』はレジェンドクラスになり、レジェンドクラスは10億人に1人しかいないのだ。それ程に珍しくて、強力な魔法だが、リスクもなく魔法を操ることが出来るわけでもない。フェアルークは他の魔法よりも体力の消費が凄まじく、さらに、『不老』と言う呪いを受けてしまう。不老は人によって、呪いではなく、恩恵だと言うかもしれないが、フェアルークにとっては、呪いだった。

 何故なら、子よりも早く死ねないことが苦しいのだ。さらに、子の死を見ることも。

 なら、自害すればいいのではないかと思うが、歳を取って死ぬと自害するのは違うとフェアルークは考えている。自害は世界の現実に絶望しているから、することであり、今までの人生は間違っていたと言っているように感じられ、自害はしないと決めているのだ。

 愛する人に出会え、3人の子供を授かった幸せを否定したくなかったからだ。




 魔法のことを話していた時、そのことを聞いたことがあるイクスは思い出して顔が綻ぶ。


「ん?何をニヤニヤしているんだ?」

「ん、ああ。魔法のことを話していたら、母上のことを思い出してね」

「成る程。それはわからんでもないな」


 レクアもニッと笑い、同調しているようだ。ミジェルとジルもイクスの言っていることを理解し、黙って暖かい目で2人を見ていた。


「よし、魔獣も片付いたし、出発するか?」

「いえ、そろそろ日が落ちそうなので、ここでキャンプをしましょう」

「そうだな。馬も休ませないとな」


 ここでキャンプをすることに決まり、馬車に乗せていたテントを引っ張り出して作り始めるジル。


「まず、薪になる物を捜しに行くか!」

「ジルはまだテントの方をやっているので、私が付いて行きます。イクス様は決して、ジルから離れないように」

「子供扱いを…………もういいや」

「それでいいです」


 言っても無駄だと理解しているイクスは言葉を言いかけて……止めたのだった。

 レクアとミジェルが薪を捜しに行き、残ったジルとイクスと御者の二人で、食事の準備を始める。


 夜はやることもないので、ご飯を食べ終わったら寝る。

 そんな日が一週間続き…………






 ーーーーーーーーーーーーーーー






 ダリアロス帝国



 イクス達は、一週間の旅でようやく、目的のダリアロス帝国に着いたのだった。


「毎年、見ているんだが、硬そうな城門だな」

「そうだね、城門の全てが鋼鉄で出来ているからね」


 ライゼオクス王国はダリアロス帝国のように鋼鉄の城門ではなく、レンガに白いコンクリートを塗ったような城門なのだ。ライゼオクス王国は、大きな川に囲まれており、後ろは湖になっていて、ライゼオクス王国に入る術は入り口にあり大きな橋が一つだけ。

 つまり、ライゼオクス王国は湖にある一つの島に建っていると考えればわかりやすいと思う。

 なので、ダリアロス帝国のように鋼鉄で守りを固める必要がないのだ。


「周りは山だから攻めにくい場所だな。まぁ、同盟国だから、戦うことはないけどな」


 ダリアロス帝国と同盟をしており、お互いが攻め込むなんてあり得ないので、堅牢な国だろうが、戦わないから気楽にしているのだ。


「まず、フェアルーク様とシュヒット様とレミアード様がいる王城に向かいましょう」

「そうだね。ハザード皇帝にも挨拶をしないとね」


 ハザード皇帝とは、ダリアロス帝国の王であり、フェアルーク女王と同じ立場にいる者である。

 堅牢な門を通り、街の中へ入って行く。人が沢山いて、祭りの準備などで忙しそうにしている。


「うわぁ、多くて馬車が通れそうはないな」

「いえ、それは大丈夫です。もう少しすれば、案内人が来るはず」


 しばらく、門の入り口辺りで待っていると、偉そうな服を着たオジサンと護衛の騎士がこっちに向かっているのがわかった。


「おおっ!レクア様とイクス様、お久しぶりですなっ!!私のことを覚えですか?」

「はい、まさか大将のクーン殿が迎えに来られるとは思いませんでした」

「確か……、去年に一回挨拶をしましたよね?」

「そうですとも!レクア様は何回か会ったことがありますが、イクス様は今回が二回目なのに、私のことを覚えて頂いていたとはっ!」


 大将のクーンと呼ばれた者は、貴族のような服装でわかりにくいが、軍の大将を勤めている猛将な者なのだ。


「いえ、挨拶をしたと言っても、廊下でお菓子をくれた人でしたので、印象が強かったのです」

「そうかそうか!!では、ここで立ち話はどうかなので、王城まで案内をしたいと思いますので、馬車は私の騎士にお任せを」


 ここで馬車と荷物は騎士と御者に任せて、ここから武器だけを持ってここを歩いていくようだ。

 周りは冒険者もいて、それぞれが武器を持っており、不自然さを感じさせなかった。








 クーンに案内されて、王城に着いた4人は客室へ案内された。


「あ、母上と父上」

「そうか、今日だっただな」

「レクアにイクス。病気も怪我がなく、幸いですわね。2人共、こっちにいらっしゃいな」


 母親であるフェアルークに頬を撫でられて、暖かさを感じている。フェアルークの顔と見合わせ、母親の表情がよくわかる。息子の無事を安心しているような表情だった。

 フェアルークはイクスと同じ銀髪で、顔も200歳以上だと思えないぐらいに若く、美しい。魔法を手に入れてから、不老で成長が止まってしまっているのだ。だから、フェアルークは15~20歳の身体のままである。それでも、身長が160センチはあるイクスより少し高い。

 容姿で一番目立つのは、額にあるタトゥーのようなものだろう。それは、『魔法』を手に入れた時に浮き出る紋章なのだ。

 紋章が浮き出る場所はランダムであり、レクスは左胸に浮き出ている。たまに足の裏に出る哀れな人もいるが、基本的に何処かに浮き出ようが、威力や効果が変わることはない。


 シュヒットは、金髪で荒々しそうな人物であり、性格は大雑把である。元は平民で軍に入っていたのだが、フェアルークに見初められ、勝ち組に入った男である。フェアルークは美しい女性であり、貴族達に人気があったのだが、ただの平民に取られて悔しがって報復を行おうとした輩もいたが、フェアルークによって潰され、国から追放されている。


「あれ、レミアードは……「イクスお兄様ー!!」おわっ!?」


 急に後ろから衝撃が来て、驚いたが、声で誰が抱きついて来たのかわかった。


「お久しぶりです!!今日だったのですね!!」

「相変わらずだな。レミアードはイクスにベッタリだな。俺にも抱きついてもいいぞ?」


 レクアは両手を広げて、抱きついてくるのを待っていると態勢をしていた。だがーー


「お断りさせて頂きます。私が抱きつくのはイクスお兄様だけなので、レクアお兄様はジルと抱き合って下さいね」

「おいっ、俺を巻き込むなよ」

「なんだ、この差は……、お兄さんは悲しいぞ……」

「あははっ……」


 素っ気なく返事をする妹に、レクアは落ち込む。その姿にイクスは苦笑するしか出来なかった。レミアードは11歳で、イクスだけのお兄ちゃんっ子である。レミアードもフェアルーク似であり、髪はイクスと同じ銀色。ツインテールになっており、十人中九人が可愛いと認める程の魅力がある。

 何故、イクスだけのお兄ちゃんっ子になっているのかは、皆が仕事で忙しかった時、レミアードの面倒をよく見ていたのがイクスであり、良く遊んであげていた。なので、今でもベッタリにくっついているというわけだ。


「仲が良いのはいいのですが、公では抱きついたりしては駄目ですからね。王女としての礼儀を損なうことは認めません」

「はーい」


 ようやく離れてくれて、レミアードの顔が見れるようになった。


「久しぶりだね。いい子にしていたかな?」

「うん!今夜は一緒に寝ようよっ!!」

「それは無理だと思うよ。別の部屋が準備されていると思うし」

「えーー」


 レミアードは残念そうにしていたが、横からフェアルークが2人の頭を撫でながら、


「あら、イクスとレミアードだったら一緒の部屋でもいいのよ?寝る時は王子と王女ではなく、ただの兄妹なんだから」

「なら、俺も……」

「貴方はもう大人なのだから、1人の部屋ね」

「はい……」


 また落ち込むレクア。イクスは母上がそういうなら……と、


「なら、部屋は何処か案内してくれる?」

「うんっ!こっちだよ!!」


 レミアードは手を引っ張って、すぐに部屋へ案内しようとする。


「ふふっ、慌てないの。これから予定を話したら食事なので、案内は後にしなさい」

「そうだな。レクアとイクスに予定を伝えておかないと困るだろう?」


 フェアルークとシュヒットがレミアードを止め、話を始める。


「予定と言っても、去年とあまり変わらないのですが……」

「あまり?今年は何か違うことをやるのですか?」

「ええ。この催しは、シュヒットが出るから貴方達は見るだけになると思います」

「武闘会があるんだ。まぁ、勝っても賞品はなしだ。身内だけの催しだと思えばいいさ」

「身内だけって、帝国の騎士や兵士に、俺たちの護衛ってことか?」

「そうだ。客に見せる武闘会でもあるが、力試しが主みたいなものだ。こっちは俺とレミアードの護衛、イリーナが出る」


 本気で戦い合うのではなく、力試しでお互いの強さを見せつけ、客を楽しませる催しと言う。

 イクスやレクアは戦いを見るのも好きなので、強い者同士での戦いが楽しみになってくる。


「それは面白そうだね!!」

「ああ、確かに楽しみだな」

「息子が見ているのだから、貴方も頑張りなさいよ?」

「任せとけ。お前が見ているなら、負ける気はしねぇからな」

「もう、怪我だけには気をつけなさいよ?」


 2人の間に桃色の雰囲気が流れ出し、他の人はまたかと呆れていた。

 2人はバカカップルと言える程に愛し合っているのだ。


 話は桃色の空気で終わってしまったが、明後日からは祭りが始まるので、その前に帝国のハザード皇帝にも挨拶をしなければならない。これからも忙しくなりそうだなと思うが、それと同時に楽しみだとも思っているーーーー





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