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黒き魂を持つ銀髪の少年  作者: 神代零
3章 軍師を仲間に
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16.罠の山

 


 ロナン村から歩いて二日間は経っていた。当のイクス達はようやく目的の山の前まで来ていた。


「見た目はただの山なんだよな」

「見た目はですが、中身は罠ばかりです。一番前は私が行きます」

「魔獣が多い山と言っていたけど、罠が多いと魔獣が掛かってばかりじゃないの?」

「実は、山全体に魔獣と罠があるとは少し違うのです。大まかに分かれているのが正しいですね」

「どういうことなの?」


 大まかに分かれていると言われても意味がわからない。ゼアは大雑把すぎたのかと捕捉してきた。


「そうですね、山の全てに魔獣が住んでいて、罠も山の全てに仕掛けているわけではないのですよ。山の右半分が魔獣の住処、左半分が罠のオンパレードになっているとわかりやすいかもしれません」

「は?そんなことが可能なのか?」


 元からいた魔獣が大人しく罠がある山の半分に行かないとは思えなかったのだ。


「少しの魔獣は罠を気にせずに住処にする者もいると思いますが、大体の魔獣は危機の本能に従っていますから危険がある場所から遠ざかろうとしています」

「危機の本能か……、そこは動物とは変わらないな。だが、ランク4の魔獣だけは山全体を住処にしているたわけか」

「おそらく、そうだと思います。ランク4となれば、人間や弱い魔獣に効く罠はあまり効果はないでしょうね」


 ランク4の魔獣に対しては、確かな実力を持つ者が倒すか、軍を率いて数の力で倒すかで倒すしかない。ランク4になると、高い守備力を持ち、能力も一つや二つではない魔獣ばかりだ。


「とにかく、これから私達が行く道は罠がある方です。反対側は魔獣が多すぎて疲弊するわけにはいかないのですよ。あと、ランク4ばかりに注意しがちですが、ランク5の魔獣がいるかもしれないという可能性も捨てられません」

「まぁ、ゼアがそういうならそれに従おう」


 イクスも大量の魔獣と戦うのは勘弁して欲しいと思っている。魔法を使おうと思っても、魂と体力は有限なのだから。


 イクス達は罠がある方に進み、ゼアが一番前を歩く。






「うわぁ、見える罠もあるけど、隠されている罠が凶悪だな」

「はい、隠されている罠の方が怖いですからね。隠されていたら目視ではすぐにわかりませんからね」


 そう言いながら、ゼアは罠を解除していく。今、解除している罠は単純だが、足元に糸があり、それを踏むか引っ掛けると木の槍が落ちて行くのだ。それが、一本目の糸は見える位置にあり、二本目が少しの先にあり、一本目より見にくい状態になっていた。


「良く見破ったな。もし俺だったら二本目を踏んでいたかもな」

「いえ、私は目が良いので小さな綻びさえも見破ることが出来るのです。この辺りは軍に対した罠が多いのもありますが…………」


 軍に対した罠とは、仕掛けが大きいことで、個人に対する罠よりは見破りやすい。


「もう少しすれば、小さな罠も出るので、決して私より前へ出ないでください」

「わかった。しくじるなよ」

「はい。魔獣が現れたら頼みます」


 山に入ってからはまだ魔獣に出会っていないので、大体の魔獣は反対側にいるだろう。







「むっ、これは解除出来ませんね」


 急にゼアがそう言って、脚を止めていた。イクスが罠が仕掛けていると思われる場所を見ても、何もないように見える。ゼアにはどう見えているのか、聞いて見た。


「細くて見えないかもしれませんが、ここら辺にザンテツグモから取れる糸が張り巡られています。近くまで近づいてよく見ないとわからないぐらいに細いです」

「危険なのか?」

「はい。一本でも切れたら下から何かが出てくるのでしょう。上には何もないようですから」


 ゼアは注意深く下を見てみるがあるかは判断出来ないので、解除するには罠がある場所に立たなければならない。さらに、糸が多すぎて解除するのに時間が掛かりすぎるのもある。イクス達は時間を無駄にしたくはないので、一々解除している場合じゃない。


「仕方がありません。囮を使いますか」

「囮?」

「はい、魔法を使った囮でワザと掛からせます」


 解除する暇がないなら、代わりの物を囮にして罠を発動させてから通る方法を取る。その方法だと、相手にこちらがいることを知らせることになるので、秘密裏に進みたい時はあまりオススメ出来ない。

 だが、イクス達は別にこちらがいるのを知られても問題はないので、この方法を取ることに。


「”偽装の土人形”!”」


 ゼアが使える魔法は『土塵魔法』であり、ゼアの姿をした土人形が現れた。


「おー、顔がない以外はソックリだな」

「のらっぺぇで少し怖いかも……」

「確かに、夜で出会ったら怖いわな」

「い、言わないでください!夜に出会ったらどうするんですか!?」


 ウェダは面白そうに人形に周りを見回り、女性の2人は怖い話になっていて、リエルが怖がっていた。リエルは怖い話が苦手のようだ。


「それで、そいつを突っ込ませるわけか」

「ええ、自分達は安全な場所で見ていればいいですからね」


 そう言って、イクス達はゼアを前にして、後ろで待機する。そして、ゼアが人形に命令を下して突っ込ませた。関節がないのか、歩き方で罠がある場所を通って行くとーーーー







 ドバァァァァァァァァァン!!







 爆発が起きた。あの糸が切れると爆発が起きる仕掛けだったようだ。


「少し煙が収まったら先に……」


 と言いかけていた時、イクスは煙が斬られたような後が現れたことに気付き、”死神の黒鎌”を発動していた。

 向かってきた線のようなモノを斬り落とした。急にイクスが黒い刃を棒に付けて攻撃をしていたため、ゼアは驚いて尻から座り込んでいた。


「うわっ!?」

「大丈夫か?爆発だけじゃなくて、細くて硬い糸が向かってきたぞ」

「ま、まさか、二重罠が仕掛けられていたとは。この場所まで向かってきたということは、囮を使った想定もしていたわけですね……」


 ここは爆発から離れている場所であり、相手は囮を使うことも想定してあり、後方にも攻撃を加えるように仕掛けていたのだ。

 イクスは罠の使い方が上手いなと感心していた時、嫌な音が聞こえてきた。


「ヤバイ!?ここに魔獣が向かってきているぞ!!」


 イクスが聞こえていたのは、周りから来る足音だった。数は少ないが、罠がある方にも魔獣はいる。それが周りからこっちに向かってきているのだ。


「あ、爆発で呼び寄せやがったな!?」

「さ、三重罠…………」


 二重罠を避けられる場合も考えてあったようで、一つ目の罠を爆発に選択していた。一つ目の爆発で魔獣を呼び寄せて、二重罠を避けた者にけしかける三重罠となる。


「足音からして、4、5体だな。ゼアとエリザは戦えないよな?」

「すいません。土人形を囮にしたり、足元の土を沈めたり柔らかくして邪魔をさせるしか出来ません。武器はナイフだけで、護身のためにしか使えない程度です」

「ごめん、私は回復させるしか出来ないわ」

「わかった。ウェダとリエルは確実に1体ずつを相手にしてくれ。俺は残りを相手にする」

「それは危険じゃない!?」

「そうだぞ。もし5体だったら、イクスは3体ということになるだろ?」


 イクスの負荷がデカイとウェダとリエルが言ってくる。


「大丈夫だ。俺は防御を優先して戦うから、さっさと2人が倒してからこっちを手伝えばいいだろ?もし、相手が弱過ぎたら俺だけで倒してしまうがな」

「……無理だけはしないでね」

「はぁ、わかったよ。この中ではイクスが一番強い。それに、俺たちは対人戦なら集団で攻められても慣れているが、魔獣は一対一でしたことがないからな」


 イクスは複数の魔獣と戦った経験があるので、この陣形の方がいいだろう。そして、魔獣が現れた。

 その数は5体であり、3体が人型をした豚のオークで、あとはデカイ芋虫のキャラピタと猪のボアボックだった。


「俺はキャラピタをやろう。リエルはボアボックでいいか?」

「任せて!イクスはオークだね?」

「問題はない。ゼア、ここら辺に罠はないよな?」

「はい、大丈夫です!」

「怪我をしたら、私の所まで下がるのよ!!」


 それぞれの役割を決め、向かってくる魔獣に相対する。




「さぁ、豚野郎はこっちに来いよ」







 ーーーーーーーーーーーーーーー






 イクスが魔獣と戦い始めた頃。


 山の頂上には一つの木造で出来た家があった。その中では三人の女性が生活をしていた。


 1人目は椅子に座って空を見ていた。


 2人目は手に何かの部品をいじっていた。


 3人目は腰に刀を差して料理をしていた。




 1人目がぼつりっと言葉を漏らしていた。


「まさか、二重罠を斬っちゃうとはねぇ。普通なら避けるか、真っ二つなんだけどねぇ」


 ずっと空ばかり見ていたのに、侵入者の様子を見ているような言い方だった。その女性は白扇を持っていて、立派な着物を着ていた。髪は明るめの茶色で長髪の美人である。




「もしかしたら、この人が主となるかもしれんな」




 女性の目には、イクスの姿が写っていた。近くにはいないはずなのに、女性にはイクスの姿が見えていた。




「この我がいる場所までたどり着けるか楽しみだねぇ」




 その人こそが、イクスの目的であるノーラ・エジェル・クワラールであるーーーー







ついに、軍師が出てきます!

だが、イクスは軍師の元へ無事にたどり着けるか!?

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