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黒き魂を持つ銀髪の少年  作者: 神代零
3章 軍師を仲間に
16/25

13.敵の宣言

本日二話目です!!

 


 ライゼオクス王国



 一つの王座に3人の影があった。その1人は首謀者であるハザード皇帝、横には黒いフードを着た男。ゼクアと言う男はククッと、王座を座る者を見ていた。

 王座に座っているのは、現女王となったレミアードの姿があった。女王の証であるティアラを被っており、フェアルークが着ていた着物と似た物を着ていた。


「………………」


 レミアードの意識はあり、起きているはずだが、その目には光がなくて生きているのか怪しいぐらいだった。


「ククッ、洗脳は完璧に出来ています。まだ『神の杯』を飲んでいない者を操るのは簡単でした」


『神の杯』は、魔法を得て身体能力を上げる効果があるが、他に魔法抵抗する耐性も生まれる。魔法を使えるのに、魔法に対する抵抗が生まれるといった矛盾があるかもしれないが、魔法とは自分の隠された能力であり、元から備わっていた能力なのだ。だから、自分の魔法は抵抗されず、他の者に対する魔法だけが抵抗出来るのだ。

 魔法の耐性とは、人によって違っていて、弱い魔法しか使えないのに、強い抵抗力を持つ者もいるのだ。

 それらはまだ全てを解析出来たとは言えず、まだ謎な所もある。


「計画に支障がなければ問題はない。まず、民衆への挨拶だな」

「ククッ、レミアード。聞こえるか?」

「……はい」


 何も感情を起こさず、口だけが動いているような話し方だった。それに満足したのか、ゼクアはニヤッと笑っていた。


「よしよし、お前はこれから民衆に挨拶をする。その際に、ハザード皇帝から言われた通りに話し、動け」

「……はい」


 さっきと変わらない返事をするレミアード。挨拶とは、何をするのかはハザード皇帝の目的に繋がることやフェアルーク達が死んだことを話すのだろう。

 そこで、フェアルーク達が死んだ理由がーーーー


「イクス王子がケイルに暗殺の命令を出し、逃亡したということにする」

「ククッ、私達が話しても大体の民衆は信じないでしょうね。だが、周りに守護七騎王の方が立って、レミアードの口から出たことになると…………」

「全員とはいかないが、少しは信じる者が現れるだろう。そこから、少しずつ広がっていく。ワシとしたら、これからやることを邪魔されないなら充分だからな」


 ハザード皇帝は民衆を味方に付けたいわけでもないし、邪魔をされなければいいだけなのだ。


「ククッ、楽しみですな」


 3人しかいない王座の間に笑いの声が響き続けるのだったーーーー






 ーーーーーーーーーーーーーーーー







 ロナン村



 ここは別の獣人の村であるロナン村と言う場所。今はまだ夜で灯りは月の光と焚いた火だけで外にいるのは見張りの獣人だけである。

 その村に一つだけある宿にて、うぅっ……と、呻き声が響く部屋があった。


 その呻き声を出している者は戦いが終わって、夕方にロナン村へ着いたイクス達である。そのイクス本人は戦いの後から眠ったまま、ケイルに運ばれて村の中に入ったのだ。







『助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて』


 イクスの夢に殺した者が現れて、助けを乞う姿があった。その中には、ジョイン中将の姿もあった。


「う、ううぅっ…………」


 イクスは同じ言葉を続ける者が出る夢にうなされていた。そしてーーーー




「はっ!?」


 飛び起きるように起きたイクス。背中や額には汗が流れていて、服にベタついて気持ち悪かった。


「今のは……」


 そう言いながら、左手を見る。そこには発現したばかりの黒い紋章があった。さっきの夢は、紋章に溜め込まれて解放されない魂の叫びだったのだ。溜め込まれた魂は使われない限り、ずっとイクスの紋章に封じ込まれてたままである。

 これが、リスクと言うには弱いかもしれないが、精神が弱かったら心が折れている可能性もある。イクスは母上が作った王国を奪い返し、帝国は許さないと決意しているので、そうそうと心が折れることはない。だが、睡眠を妨害されるのはウザいと感じていた。


「仕方が無い、外で軽く運動でもするか……」


 また寝ようとしても、魂の叫びによって眠ることを許さないだろう。気絶したのもあって、睡眠時間は充分取れている。

 宿から出ると見たことがあるような村だと思ったが、前に来たことがあることを思い出した。


「確か、二年前だったか?」

「いや、三年前だ」


 後ろから知った声が聞こえ、振り返るとケイルの姿があった。


「ここはロナン村だ。というか、まだ夜だぞ?」

「やはり、ロナン村だったか。目が覚めたし、この紋章のせいで寝付けないから少し運動しようと思ってな」

「紋章のせい?」


 イクスがわかっている範囲で、『魂魄魔法』についてのことを話したーーーー







「魂を司る魔法か。発動に殺した者の魂が必要とは、特殊な魔法だな」

「『魂魄魔法』って、聞いたことがないから初めての魔法じゃない?」

「レジェンドクラスの魔法なら、そうだろうな」


 レジェンドクラスは元より発現する確率が低いから過去に同じ魔法が発現したなどは、聞いたことがないのも仕方が無いだろう。


「で、眠れないから運動をしたかったよな?」

「まぁ、魔獣と戦って魂を貯めることが出来るか試しておきたかったからな」

「魔獣か、ここら辺では夜に活動する魔獣は少ししかいないはずだ。魔獣狩りなら朝になってからにしろ」


 下手に何処かへ行って、エリザ達が目を覚ました時にイクスがベッドにいないという事態を避けたかったのだ。


「マジかよ、どうすっか……」


 これからどうするか、考えていた時、ケイルから質問があった。


「そういえば、ベッドに寝かしていた時は気絶していたよな?」

「?そうだったと思うが……」

「なら、こうすればいい」

「何を……ごふっ!?」


 ケイルの拳がイクスの鳩尾にぶち込まれていた。立っていたイクスは膝が折れ、ケイルに掴まっていた。


「な、にを……」

「気絶すれば、悪い夢は見ないだろ?運ばれている時は幸せそうな顔で寝ていたからな」


 つまり、ケイルはワザとイクスを気絶させて寝かそうとしたようだ。裏切りで殴ったわけでもなく、イクスのためにやったことにイクスはホッとした。だが、気絶する前に一言だけは言わなければならなかった。


「だ、だったら……一言ぐ、らいは、言え……」


 そこでイクスは眠るように、気絶をしたのだった。ケイルがポツリと言葉を漏らしている。






「俺は絶対にお前を裏切らん。だから、安心して寝ていろ」






 ケイルは父親のようにイクスを介抱して宿の中へ戻っていく。







 ーーーーーーーーーーーーーーーー







 朝、皆が起きて村に様々な種類の獣人を見かけるようになる。ここは宿の食堂で、ケイル、エリザ、ウェダ、リエルが集まっており、イクスはまだ食堂に来ていなかった。


「やっぱり、起こしに行った方がいいんじゃ……?」

「放っておけ。まだ疲れているんだろう」

「うーん、イクスは牢屋に入られてから何も食べてないんだよね?なら、無理に起こした方が……」


 と、エリザが言いかけた時、イクスが寝ているのは二階であり、階段を降りてきているのが聞こえた。


「あ、起きたみたいだね」


 ここに泊まっているのはイクス達だけで、他の人は全員ここにいるから、階段を降りてきているのはイクスしかいないと判断できる。

 何故か、座っていたケイルが立ち始めた。


「ケイルさん?」

「あれ、イクス様が二階に戻っちゃった?何か忘れ物なのかな?」


 降りてきたはずのイクスが二階へ戻ってしまった。忘れ物があったのかなと思っていた時、それが起こったーーーー









「弾けてぶっ飛ばされろぉぉぉぉぉ!!」









 イクスが開いていた窓からケイルに向けてドロップキックをしていた。


「ふっ」


 ケイルはまだ甘いと鼻で笑い、ドロップキックを受け流して、床に組み締めていた。


「がぁっ!?」

「一度降りてきたのは助走をしていたからか」

「クソぉ、また駄目かよ……」


 組み絞められるケイルと組み締められるイクスの図を見て、エリザ達と店員はポカーンと口を空いていた。


「え、えっ?イクス様?何処から現れたの!?」

「ん?あそこからだ」


 イクスが組み締められていない手で開いている窓の方を指していた。


「窓から?さっき、二階に戻ったんじゃなかったの……?」

「あー、こいつは恐らくカーテンとか使って二階の窓からそこの窓を通って攻撃してきただろうな」


 ケイルは推測だが、窓を見ると布らしきの物が見えていたからそう説明してやった。勢いが落ちていなかったことから一回も地に触れず、二階の窓から一階の窓をカーテンで勢いを付けた助走に乗ってきたのだ。そして、そのままドロップキックをしてきたわけだ。


「いやいや、なんでそんなことをしているんですか!?」


 ウェダが皆が気になっていたことを突っ込んでいた。イクスが何故、仲間であるはずのケイルを狙うのかだ。さらに、王族らしくない行動にも驚愕している。


「これはいつものことだぞ。誰も見ていない時は、今のように襲ってきているが?あ、いつもより弾けた言動だったが、何があった?」

「おい、お前がやったことを忘れたのかよ!?夜のことだ!!俺のためといえ、一言があってもいいだろう!?」

「さぁ?忘れたな」

「お前ぇ……、次からは背中に気をつけろよ?」

「はっ、背中からの不意打ち程度でやれるならやってみろや」


 お互いがふふっ……と笑い合う。その姿に皆はドン引きしていた。


「い、イクス?身体はもう大丈夫なの?」

「あ、ああ。昨日は回復魔法を掛けてくれて助かったよ。ありがとう」

「大丈夫そうなら、いいけど……」

「なんか、昨日のと大違いなんだが……?」


 昨日は少なくとも、大人の対応をしていたので、今の状態に困惑しているのだ。


「言っただろ?このような襲撃はいつものことだと。こいつは客などの前では今みたいな子供っぽさを見せないからな」

「こ、子供っぽさ?」


 ようやく解放されたイクスが話してくる。


「俺は助けて貰ったのに、王族としての対応ばかりでいいのか?と考えていたんだ。仲間として接した方がいいかと思い、素を出して見たんだが、やっぱり前のと違いすぎて引いたか?」

「い、いえ!さっきは驚きましたが、私は素を見せてくれて嬉しいです!!」

「まぁ、俺も王族としてではなく、仲間として対応したかったから助かる」

「へぇー、イクスって子供っぽい所があったんだねぇ」


 なんとか受け入れて貰えたようだ。あと一つあるのをイクスは忘れない。


「あ、そうそう。俺のことを様付けしないでイクスと呼んでよ」

「え、あ、イクス…………でいいの?」

「ああ、構わない。俺は王族としてではなく、ただのイクスとして動きたいからな」

「これからのことだな?」


 ケイルはすぐにわかった。王族のイクスでは動きを制限されてしまう可能性があるため、王族ではなく、ただのイクスとして対応して欲しいとお願いをしているのだ。


「あとは、魔法のことも話しておかないとな」


 イクスは、自分の魔法やこれからの方針ことを説明した。14歳で発現した理由は自分でもわかっていないこと、発動するには、自分で殺した者の魂が必要になること、これから王国を奪還するために動くことを説明した。


「王国を奪還するねぇ。今は難しいというか、不可能わね」

「それは自分でもわかっている。王国の兵も帝国に取り込まれているなら、個人で何とかする範疇を超えている。なら、方法は…………」

「他の国に頼ることね」


 国を相手にするなら、こっちも国で相対する必要がある。この世界にある国は、ライゼオクス王国とダリアロス帝国を除けば、あと三つの大国がある。

 ここから距離があるが、馬車を使えれば行けなくはない。


 まだ話が続いているのに、ケイルが席を立っていた。


「来たか」

「誰が来たの?」


 ケイルに焦燥の表情がないからまた帝国軍が来たのと違うと判断できる。なら、誰が来たのかはーーーー




 話し合っていた食堂に慌てて入ってきたのは、猫の耳を持った男性だった。




「厄介なことになりましたぜ!!イクスと旦那が、指名手配されていますぜ!!」

「「「なっーーーー」」」




 この時、一つの戦いが始まったのだった…………





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