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黒き魂を持つ銀髪の少年  作者: 神代零
2章 奪われる王国
12/25

10.獣人の村で

 


 ライゼオクス王国



 ここは他の部屋と違って、広い場所であり、大きな机といくつかの椅子があった。そこには、帝国の心臓部である者や最高戦力の実力を持つ者が集まっていた。


「皆の者よ、よくやってくれた」


 ダリアロス帝国にいるはずのハザード皇帝が上座に位置する椅子に座っていた。隣にダリウス皇子も座っており、他に帝国から来た上部に当たる者は黒いフードを来た3人だけであり、他の大将やエリザ宮廷魔術師、ライカ参謀はダリアロス帝国にいる。


「そんな言葉はいいから、早く戦わせろよ?戦争を起こしてくれるんだろ」

「ははっ、イリーナは相変わらず、喧嘩早いな」


 座っている守護七騎王は、さっき話したイリーナやジルだけではない。静かに見ているミジェル、いつも違って落ち着いているサリナ、ライゼオクス王国の宮廷魔術師であるロマンス、ふわぁっと欠伸をして座っている青年のジラド。

 ケイル以外の守護七騎王が集まっていた。


「まぁ、そう急ぐな」

「動くのは他の者が帝国から来てからです。少し待っていただきたい」

「ふん、まぁ少しだけならいいだろう。フェアルークと戦えたし」

「少し危なかったですが」

「ちっ、ミジェルは一言が多いな?それに、ミジェルも裏切るとは思っていなかったがな。あの坊主はお気に入りだったんだろ?」


 坊主とは、イクスのことである。


「私は元から帝国側でしたからね。戦争をしたいだけに裏切った貴女とは違います。それに、イクスは帝国に降らないと言っていたので、残念ながら処刑となるでしょう」

「そうか、私も残念だと思う。あの才能は勿体無いと思いますが、こっちに刃向かったら面倒になりますからね」


 ダリウス皇子もイクスのことに目を付けていた。だが、断ったため、処刑するしかない。


「レクアのこと、話に出ないとは最後まで可哀想な奴だったな」

「仕方がありませんよ。僕が相手をしましたが、弱過ぎて眠くなりそうでしたよ?」


 ジルがレクアのことを話すが、相手をしていたジラドは気に止める必要はないぐらいの弱者だったと吐き捨てる。ジラドは少しだけレクアの実力に合わせて戦ってやったが、ジラドに一つも傷を付けられずに死んでしまったのだから、弱者と吐き捨てるのも仕方が無いだろう。


「ハザード皇帝から話があるようだから、静かに」


 サリナが落ち着いた雰囲気で、前のようにオドオドしたサリナだと思えないぐらいで、イリーナは別人じゃねぇか?と思ったぐらいだ。

 静かになった所で、ハザード皇帝が話を始めようとした時、大きな扉が開かれて1人の兵士が慌てている雰囲気で現れたのだった。


「報告があります!イクス王子が逃げ出しました!!」

「何!!」

「鍵が刺さったままでしたので、誰かの助けがあったかと思います!」

「こりゃ、ケイルの仕業だわ」


 ジルはまだ逃げ回っているケイルの仕業だと判断した。というか、それしか考えられない。


「探し回らせるよりは牢屋の警備を強化させるべきだったか」

「反省は後だ。ジョイン中将が一軍を率いて、探し回らせろ。おそらく近くにある村を通るはずだ」

「はっ!!」


 ダリウス皇子がジョイン中将に逃げたイクスを探し回らせるように伝令を出す。


「まさか、逃げ出すとはな…………いや、今はいい」


 逃げられた者はジョイン中将に任せて、話を切り替える。


「帝国の目的は皆も知っているだろう。今は帝国がライゼオクス王国を乗っ取ったといえ、王国はそのまま継続させるつもりだ。おい、ゼクアの準備は終わらせてあるか?」


 ハザード皇帝は黒いフードを着た1人であるゼクアを呼び寄せる。ハザード皇帝の言う準備とは、


「フォフォ、終わらせてあります。既に洗脳済み(・・・・)です」

「そうか。他の者が来たらすぐに始められるな」


 洗脳などと不吉な言葉が出て、王国は継続させる。それだけでも予測出来るだろう。


「レミアードを女王に仕上げて、ある計画を進める!」


 ハザード皇帝はその計画に力を入れている。目的を必ず成し遂げたいと計画を建てたのだ。王国を乗っ取ったのもある目的のためである。その目的とはーーーー






「人間だけの世界を!!」






 亜人や魔物がいない世界、ハザード皇帝、帝国の目的である…………







 ーーーーーーーーーーーーーーーー








「うぅっ……、うぅぁっ」


 イクスは胸の痛みで目を覚ます。吐きたくなる血を気合いで押し込め、起き上がろうとするが、力が入らなかった。


「大丈夫ですか!?」


 横から声が聞こえ、目を動かすとリエルがいるのが見えた。なんで、リエルが?と考えていたら、全てを思い出した。


 裏切ったミジェルにジル、母上と父上とレクア兄さんの首、攻めて来た帝国、捕まっているレミアード、助けに来たケイルと帝国を抜け出した2人、王国から脱出をしたことをーーーーーーーー




「う、うあぁぁぁっーーーー!!」

「イクス様!?」


 全てを思い出したイクスは苦しんで、血を吐いてベッドを汚してしまう。


「イクス様!落ち着いてください!!ケイル様、来てください!!」


 苦しむイクスの声が聞こえていたのか、すぐに扉が開かれてケイルが現れた。後ろにウェダもいる。


「落ち着け!!」

「っ!?」


 ケイルはイクスの頬にビンタをして、こっちに気付かせる。荒っぽいやり方だが、今のイクスにこうしないと話を聞けないだろう。


「お前の状態は悪い。わかるな?」

「…………」

「今は何も考えるな。俺がお前を治す方法を探すから休め」

「…………あ、あぁ」


 イクスはケイルにビンタされて、少し落ち着いたのか、話が出来るようになった。


「ここは……」

「ここは、獣人の村だ。お前が、気絶してから半日しか経っていないからそれ程に離れていない。だが、相手はすぐに見つかるわけはないから、しばらくは大丈夫だろう」

「……そうか」


 今のイクスに出来ることはないので、後はケイル達に任せるしかないだろう。


「よし、ゆっくり休め…………「ケイルさん!帝国の者が現れました!!」ーー何!早すぎる!!」


 ここは獣人の宿であり、犬耳の店員が帝国の者が現れたと知らせてくれた。ケイルが前持って説明してあり、匿って貰っている状態なのだ。だが、もう帝国の者が来ていると報せが来たのだ。


「何人だ!?外には?」


 ウェダがそう聞きながら外を見て警戒する。だが、外には帝国のような者は見当たらない。なら、もう宿に入っているのかと店員を見る。


「そ、それが、1人だけなんです」

「は?1人だと?」

「は、はい。自分から帝国の宮廷魔術師のエリザと名乗って、『イクスはここにいるでしょ?エリザと名前を出せば会ってくれるはずよ』と言っていて、怪しかったので……」

「え、エリザが……ここに……?」

「外には帝国の軍は見当たらないな。エリザは回復魔法しか使えないから戦力としては役立たずはず。……なら、俺だけで会おう」

「ケイルさん!?」

「お前達はイクスの側にいろ」


 ケイルはそう言って、エリザがいる受付に向かっていく。受付に行くと、エリザがいた。


「……なんで、気付いた?」

「あっ、ケイル。ケイルがいるならイクスもいるわね?」

「…………お前は敵か?どうやってイクスがいるとわかったんだ?」

「うーん、もし王国から逃げ出せたなら、近くの村へ向かうと思ってね。まさか一発で見つかるとは思っていなかったけどねー」

「まさか、推測だけでここまで来たのか?いや、先に敵じゃないか答えて貰おう」


 ケイルは警戒は高いままで、剣に手を添えている。だが、エリザはいつもの調子だった。


「もう!私がイクスの敵になるわけないでしょ!!もう帝国を抜けたわよ!!」

「帝国を抜けただと?」

「そうよ、貴女達がライゼオクス王国に帰った後、話があったのよ。王国を乗っ取るとね」


 上部はエリザにも作戦を話していたのだ。エリザは反対だが、逆らうと戦えないエリザはすぐに殺されてしまうので、従う振りをしてハザード皇帝が王国に向かった後に抜け出したのだ。

 先に王国へ向かえれば良かったが、無理だった。先に向かったのが皇帝の方だったのもあるが、皇帝が着いた時にはもう全てが終わっていたのだ。裏切った守護七騎王の手によって。

 王城に立っている帝国の旗を見たエリザは間に合わなかったとわかったので、僅かな可能性を掛けて、近くの村に向かう。そして、今に至るわけだ。


「はぁ、本当に敵じゃないんだな?」

「疑い深いわね!帝国の目的を知っているし、話せば信じてくれる?」

「……わかった」


 剣から手を離して、イクスがいる部屋へ案内する。




「ケイルさん!無事でし……」

「イクス!?大丈夫なの!?」


 帝国で見たことがある顔がいることに気付いて、ウェダは剣を抜いてエリザに向けていた。


「止まれ!!」

「よせ、敵じゃないようだ。帝国を抜けていると言っていた」

「……大丈夫なんですよね?」

「ああ」


 ケイルがそう言うので、信じて剣を納めた。


「なんで、そんなことになっているの?」

「『神の盃』を飲んだようだ」

「えっ!!イクスはまだ14歳だよね!?」

「そうだが、治す方法はあるか?」


 ケイルの質問に、エリザは小さく首を横に振る。


「……わからないの。まだわかっていないの!!」

「そんな……」


 エリザの言葉に暗くなるリエル。どうすれば、イクスを助けられるのか…………




 そこに、爆発音が村に響いたのだったーーーー






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