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黒き魂を持つ銀髪の少年  作者: 神代零
2章 奪われる王国
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9.脱走

本日二話目です!!

 


 イクスが『神の盃』を飲んでから半日が経った。イクスは意識を失うこともなく、吐く血も減ってきた。だが、痛みと熱さは半日前と変わらず、イクスを襲っていた。牢屋の番と伝令は初め頃、苦しむイクスを見て楽しんでいたが、今は見るのを飽きたのか、欠伸をしながらトランプなどカードゲームで暇を潰していた。


「ちっ!また俺の負けかよ!!」

「残念だったな。この酒は俺の物だ」


 賭けゲームをしていたが、それも飽きてきた。


「ここに三日もいろとか、鬼じゃねぇか。上の奴らはよぅ」

「しょうがねぇだろ。俺らはマシな方だぞ?他の奴らはまだ見つけていないケイルを探し回っているから」

「……まあ、そうだな。走り回るよりはマシだな。三日後……いや、二日と半日だな。処刑時間にこいつを助けに現れるかもしれんな」

「いや、俺は助けに来ないへ一票だな。こっちは帝国軍だけではなく、守護七騎王が6人もいるんだぞ?相手が守護七騎王の1人だとしても、助けにいけねぇだろ?」

「ふははっ、確かにな!!」


 笑い合う2人に近付く影があった。だが、2人はその存在に気付いていない。そしてーーーー




「がっ!?」

「ぐべぇっ!?」


 2人は急所を狙われて気絶した。それらをやっていたのは、


「……ケイル……」


 そう、逃げ回っていたケイルの姿があった。


「すぐ助けに行けなくてすまない。おい!」

「はい。鍵はありました」

「大丈夫!?」


 ケイルの影に隠れていたのは、帝国の兵であるはずのウェダとリエルだった。ウェダの手には牢屋の鍵で、床の血に気付いたリエルはイクスを心配していた。


「おい……、大丈夫か?暴力を受けたのか?」


 ギロリと気絶している男に目を向ける。


「違う…、これを、飲んだからだ……」

「え、これは『神の盃』ではないですか!?」

「まさか、無理矢理じゃないよな!?」


 ウェダは無理矢理飲まされたかと思い、剣を気絶している男に向ける。だが、止めたのはケイルだった。


「待て、イクスは違うと言っている。つまり……」

「ああ、自分で……飲んだ…」

「なんで!?」

「いや、そのことは後だ。すぐにここを脱出しなければならないからな」


 ここでゆっくり話している場合ではないので、イクスはリエルに肩を借りて走り出す。イクスの足はおぼつかないが、リエルに肩を借りれば、なんとか走れる。


「なんで、……ウェダと、リエルが?」

「簡単に言えば、帝国にはついていけないですね」

「私も。何故、同盟国を襲わなければならないんですか……」


 どうやら、今回の帝国がしたことに2人は相容れなかったようだ。たまたまケイルを見付けた2人はイクスを助けにいく手伝いをして、一緒にここを出ることにしたのだ。


「そうか、……あ、レミアードは?」

「すまない、助けに行けない。ジルとイリーナが常に一緒にいるから駄目だ。どうやら、帝国はレミアードを殺すつもりはないから一先ず安全だ」

「…………」


 イクスは助けに行きたかったが、今のイクスでは足手纏いになる。強いケイルはともかく、好意で助けに来てくれたウェダやリエルに守護七騎王の相手をさせたくはなかった。


「今から俺とフェアルークとシュヒットしか知らないしか知らない隠れ道で逃げるぞ」

「イクス様の武器は持って来ていますから、安心してください!!」


 ウェダは、懐からイクスの武器を取り出して渡してくる。イクスはそれを受け取り、戦いになっても自分の身だけは守れるように手に持つ。


「ああ、ありがとう……うっ!」


 イクスは心臓がある所を抑えて血を吐きそうなのをこらえる。


「うわっ、大丈夫ですか!?」

「しっ!声を小さくしろ。見回りの兵がいる」


 広い廊下を静かに走っていると、角を過ぎた所に見回りをしている帝国の兵がいるのが見えた。


「1人だけみたいだな、隠し道はこの先にあるからこの兵をやって進むぞ」

「はい」


 声を上げて兵を呼び寄せるにはいかないのでーーーー


「こべぁーー……」


 ケイルは既に動いており、喉を剣で斬り裂いて押し込んでいた。兵はいつの間に目の前でケイルが角の向こうから現れたと思ったら、既に喉を斬られて変な声が出て…………倒れた。


「はや……」

「これが、守護七騎王の実力……」


 初めて見るケイルの実力に2人は驚愕しているようだ。2人はケイルに出会ってから戦いは起きなかったから初めて見る実力に敬服したのだった。


「行くぞ」


 ケイルはこれぐらいはなんでもないように、兵を端に退かして、3人を呼び寄せる。


「ここだ」


 しばらく進んでいくと、一つの大きな壁画がある場所へ着いた。ケイルは壁画を外してただの壁がある所に手を押し込むとーーーー




 ガガカァァァゴォン




 なんと、壁が押し込まれて、先に進める道があるのだった。そんな道はイクスは知らない。


「……ここは……」

「さっき言った通りに、俺ら3人しか知らない道だ。もしも、王族に危機に陥った場合に使うと聞いている。何故、俺だけが伝わっているのかは、守護七騎王はルールによって変わることがあるから安易に教えるにはいかなかったのだ。知っている人は少ない方がいいからな」


 ケイルは昔からシュヒットの仲間であり、信頼されているからシュヒットから教えてもらえたのだ。さらに、守護七騎王は変わるルールがあるが、シュヒットはケイルだけは固定するように働きをかけているから守護七騎王から外れることはない。

 だから、ケイルはこの道の存在を知っていたのだ。


 すぐに隠されていた道を進んでいくと、水の匂いがした。しばらく走って行くと、一つの小舟があり、外に繋がっていた。


「裏の湖に繋がっている。今は夜だから明かりを消せば、こっちの姿は見えないだろう」


 一先ずは、ここを出て行き、近くの村へ向かう。今のイクスは体力を奪われており、遠くまで逃げるのは不可能だから、近くにある村でしばらく身を隠すのが1番だろう。


 全員が小舟に乗ったのを確認し、出発する。湖は真っ暗で、何も見えないが、松明の明かりで王城が照らされているからその反対側を進んでいけばいい。


「あぁ…………、本当に、……同盟国の帝国が…攻めてきたんだな……、許さない……」

「イクス様……」


 イクスは王城で松明に照らされた帝国の旗を見て、手に力が入る。手は血が出そうなほどに赤くなっていた。それを見たリエルは悲しそうな顔でイクスはを見ていた。


「これから帝国が何を起こすかわからないが、お前は生き残ることに集中することだ」

「……わかっている」


 元帝国の軍に入っていたウェダとリエルは王国を攻めた後のことは説明されていなかった。つまり、上層部にしか目的を知られていないのだろう。

 ケイルは帝国が王国を奪っただけで終わるとは思えなかった。シュヒットは側にいなかったため、守ることが出来なかった。だが、シュヒットの息子であるイクスはそう簡単に死なさせないと心の中で決めた。


 こうして、イクス達は脱走に成功したのだった…………






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