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「それにしても不思議ね。いつものせいさんなら迷い客はすぐに帰すのだけれども……気絶したから仕方ないか」

サーヤも紅茶に口をつけて響香の隣に座った。

「ねえ、サーヤ。このお店って骨董屋さんなの?」

「そうね。骨董ではないけれど、的外れではないわね」

「何それ?勿体ぶるわねぇ」

「覗いてみる?何屋か分かるわ」

悪戯っぽい表情でサーヤがふすまを指差した。

「見る見る!」

響香が大きく頷くとサーヤは立ち上がってほんの少しだけ開いた。

「どうせ忘れちゃうんだけどね」

響香には聞こえないほど小さく呟いて。


細く開かれた隙間の向こうに誠一郎とユーナ、そして来客の姿があった。

時折声が聞こえるが、会話の内容までは分からなかった。

それにしても前髪が邪魔だ。

響香は一度襖から離れると鞄からヘアゴムを取り出して後ろに束ねた。

「うわ、本気」

その様子に苦笑するサーヤ。

「あれ、響香。その耳…」

束ねてあらわになった耳を見てサーヤは声を掛けた。

「ピアスはまだ開ける勇気が無くて」

響香は照れ臭そうなごまかし笑いを浮かべた。

「そうじゃなくて、どうして左右で石が違うの?」

「ああ、これはおまじない」

「そんなおまじないなんてあった?」

怪訝な表情を浮かべるサーヤ。

「私オリジナル」

「知らんわ」

サーヤは思わず吹き出した。

響香は天然なのかもしれない。


「私ね、孤児なのよ。17年前に学園の前に置かれたベビー籠の中で泣いてたんだって。ママ先生が言ってた。籠には名前を書いた紙と少しの粉ミルク。それからダイヤとルビーの片方ずつのイヤリングが入っていたそうよ」

「意外と明るく話すのね」

「もう慣れたもの。いちいちブルーになんてならないわ」

「そんなもの?」

「そんなものよ。で、ルビーは私の誕生石だから、ダイヤはきっとお母さんのだと思うの。だからいつか会う日のためのおまじない」

響香はそういって殊更ことさら嬉しそうに微笑んだ。




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