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「色々と迷惑かけちゃった。今度あらためてお詫びに来ようと思うから今日は帰りますね」

そう言って立ち上がろうとする響香の肩をサーヤが掴んだ。

そしてそのまま押し倒した。

信じられない力だった。

まだ14、5歳。

少なくとも響香よりも幾つかは年下の少女とは思えない力に圧倒されて抵抗する意思すら浮かばなかった。

「今帰られると困るのよ」

長い髪で陰となった表情は読み取れなかったが、声のトーンが僅かに下がっていた。

「どうして?」

上ずった声。

押さえ付けられたまま理由を尋ねる。

「今日、響香が来ることは予定外だったのよ」

「じゃあ尚更…」

『帰ります』と言いかけた唇にサーヤが人差し指を当てた。

「いいえ、今はダメ。そこのふすまの向こうは響香が倒れた売り場なの。そして誠さんとユーナが接客の最中。だから邪魔しちゃダメ」

「誠さん?ユーナ?」

「響香がしがみついていたのが懐古堂店主の誠一郎さん。誠さんが支えてくれなければ頭を打ち付けるところだったのよ。そしてユーナは私の双子の妹。あの子は接客向きなの。やたらと物腰が柔かいのよ」

サーヤの説明に響香は頷いた。

コスプレ店員がオーナーだったり、この美しい顔がもうひとり居ることに少し驚きはしたが納得した。

「分かったわ。予約のお客さんが帰るまではここに居るわ」

「予約とは少し違うけどね。ただ、そうしてもらえると助かるわ」

サーヤはそう言うとティーバッグの入った紅茶を差し出した。

「ユーナなら上手に淹れるんだけどね。私はそういうのは苦手なの」

照れ臭そうに言った。

「私、紅茶って缶でしか飲んだこと無い」

花をイメージしたような白いカップを両手で持った響香は琥珀色から上がる湯気と香りに嬉しそうだ。

そんな響香が微笑ましく、サーヤは小さく笑ってみせた。



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