空のペットボトルに空を。
今日も僕は空に向かって手を伸ばす。
僕は空が大好き。
悩み事なんてひとつもないような、雲ひとつないような青空も
悲しいことがあったのだろう、雨空も
誰かとうまくいかないのだろう、曇天も
何がそんなに恋しいのと問いたくなるような、真っ赤な夕焼け空も
眠っている時ですら美しい、光輝く星空も
どんな空でも僕は愛している。
空こそ感情表現豊かなものはいるだろうか。
いや、いる筈がない! だからこそ僕は空に恋したのだから。
学校の席替えでは必ず窓際の席を確保し。
暇さえあれば空を見上げ。
空だけを見るために立ち入り禁止の屋上に踏み入り。
貯めた金は全て空を見るためだけに注ぎ込み。
毎日、毎日空を見上げている僕。
ああ、この素晴らしい空が僕のものだけになったのなら!
それはどんなに素晴らしいことだろう。
死ぬほど働いても、善行を重ねても、願っても。
空は僕のものだけには絶対ならない。
僕に魔法が使えたなら!
ふと今しがた飲み干したペットボトルが目に入る。
道端に目を逸らすと無数に落ちるカラのペットボトル。
このペットボトルの中に空を閉じ込められたなら。
カラのペットボトルを空にかさず。
そこに映るのは歪んだ空。
ああ、空を閉じ込めることなど叶わないこと。
カラのペットボトルを投げ捨て空を見上げる。
届かないとわかっていても、伸ばさずにはいられない。
今日も僕は空に向かって手を伸ばす。
――――空のペットボトルに空を。
(欲しくて欲しくてたまらない。このペットボトルに空を閉じ込められるのなら、僕はどんなに大切なものだって喜んで投げ捨てよう)
初めて投稿するけれど、カテゴリは詩でいいのでしょうか……。