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第三話:さわり

第三話

「ほらー、朝だよっ。もうっ、あたしがいないと朝も起きれないんじゃあたし以外に婿の貰いていないんじゃないの?」

 なんて事は絶対に起こり得ない。いや、人によっては起こりえるらしいのだが、俺にとっては妄想の産物でしかない。重ねて言うが、人によっては起こりえるらしい。大切なことなので二回言いました。

 現実はまぁ、女の子が一応起こしに来てくれるからそれだけ見るならいいほうかもしれない。

「新戸先輩、愛夏さん、朝ですよ」

 ちなみに、起こしてもらいたい女性像は『立派な年上の女性』である。真面目だが、どことなく小生意気なところのある年下の女の子ではない。起こすときにピンポイントで日光を目に当ててくるような少女ではないのだっ。

「…眠い」

「兄貴、しょうがないよ。起きよう」

「……わかった。二人ともおはよう」

「おはようございます」

「おはよう」

 かすかに残る眠気を昼過ぎまで脳内にとどめておくとしよう。爽やかな朝を迎えることなんて九月じゃ無理だろ。残暑の中目を覚ますなんて暑くて仕方がないんだよ。

「新戸先輩、シャツです」

「おう」

 俺は起きてすぐに顔を洗い、歯を磨き、朝食をとったあとに着替え、トイレに行ってレッツラゴーというスタイルを取っている。でもまぁ、可愛い後輩がシャツを出してきたのなら最初に着替えると言うのもいいかもしれないな。

 べたつくパジャマの上を脱いでシャツを着る。

「兄貴、ズボンだよ」

「あいよ」

 可愛い妹分がズボンを持ってきたのなら履くしかないだろう。俺はパジャマの下を脱ごうとして四つのおめめへと注意を向ける。

「何だその期待した目は?」

「別に何も」

「期待なんてしてないよ」

「そうかい、それならいい」

 さっさとズボンを履く。二人の視線が俺に新たな趣味を誕生させるかもとちょっとばかり脳裏をよぎる。しかし、あくまで自分がノーマルであると言う事を教えさせられた。

 朝のこまごまとした事を終えて登校。俺と愛夏、そして千穂が三人並んで学校へと足を進める。

「愛夏さんが新戸先輩の家に居候しているとは知りませんでした」

「ああ、愛夏の両親が世界一周旅行に行っちまって帰って来ないからな。連絡もつかない相手だし、今頃どこを彷徨っているんだろうか」

「この前はカンボジア辺りから手紙が来てたような気がするけどどうだろう」

 娘の事をほっぽりだして世界一周だから性質が悪い。愛夏が気にしていないようだからいいものを、もしもぐれたりしたらどうするつもりなんだろうか……まぁ、その程度でぐれるというのも変な話ではあるか。

「寝室は新戸先輩と同じなのですね」

「そだよー、だって寝る場所がないから仕方がないもん。居候が部屋を要求したらまずいでしょ?」

「確かにそうですね。でも……」

 何かしら言葉を続けようとした千穂が前を向いて固まった。

「ん、どうした?」

「あれ」

「え?あれ?」

 指差す方向を俺と愛夏も見る。赤いシートのようなものが民家の玄関から出てきて前に止まっている高級そうな車の後部座席まで続く。

「お嬢様、月一の車登校でございます」

「間山さん、ありがとう」

 黒髪縦ロールの女の子が一人、家から出てきて一瞬だけ俺たちの事を見た。

「ふんっ」

 そういってそのまま車に乗り込み、車は去っていく。

「あれは……何ですか?」

「高級車だろ」

「偽物っぽいお譲さまも付属していたね」

 考えたところでしょうがないので俺は歩き出した。

「兄貴、気にならないの?」

「いや、別に。制服みたところ俺達と同じ高校じゃないみたいだしなぁ。転校生が来るって言うのも聞いていないから遠い高校だろ」

「そうですね」

 もはや興味はないといった様子で千穂も俺の隣にやってきた。

「新戸先輩」

「何だよ」

「今日の昼休み、先生に頼んでみますのでその時はよろしくお願いします」

 いまいち理解できなかった。

「何の事だよ?」

「生徒会の事です。詳しい事は昼休みの時に話しますので……愛夏さんもどうですか?」

「え、遠慮しておくよ」

 若干笑顔がひきつっている。

ふーむ、そうか、千穂は生徒会に入りたいのか。その時はよろしくお願いしますって、別に生徒会長が絶対的な権利を持っているわけでもないんだけどな。漫画やドラマに出てくるような生徒会長なんて殆どいない。自発的に行動する人なら先生に無理を言えば何とかなるだろう。生憎、俺はそんな生徒会長じゃないからな。

 千穂の期待する視線が何を期待しているものなのか、俺にはいまいちわからなかった。


全体投稿数としては前作と同じくらいまでいけたらいいですかね。ま、行かないなら行かないで構いませんがそれなりにがんばります。前回はほぼ毎日更新してきました。ですが、今作では無理っぽいです。

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