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第十八話:結論を出す苦しみ

第十八話

 目玉焼きには何をかけるか?素か、ソースか、しょうゆか、マヨネーズかケチャップかその他諸々人によって違う物をかけるもんだ。ちなみに俺は醤油だ。これはやはり親の行動を見てまねたものと言っていいだろう。

「ちょっと、兄貴?」

「ん?どうした?」

「お皿から醤油がこぼれてるよっ」

「え……ああ。そうだな」

 テーブルを醤油色に染め上げていたのでぼーっとしながらテーブルを拭く。

「これでいいな」

「今度はお味噌汁こぼしてるよっ」

 愛夏の指差す先には豆腐が転がっていた。

「あ……悪い」

 拭いていた時に当たったのだろう。こぼれたみそ汁も拭きとる。すでに布巾からは様々なにおいをかぎ取る事が出来る。

「どうしたの?」

「何が?」

 ご飯を口に運ぶ俺をジト目で見てくる。

「ぼーっとしてさ」

「別にしてないぜ」

「でもお箸が逆さまだし左手でお箸握ってるよ?やっぱりぼーっとしてるって」

「……ああ。文化祭があるんだよ。俺の通っている高校がな、明日文化祭なの。それで、俺生徒会長やってるから大変なの」

「愛夏も通ってるし、あさってが文化祭だよ?」

「………ああ、そうだ……」

 俺の顔面に鋭いストレートが飛んできた。茶碗、箸をその場に落としてしまう(落とした物は全てスタッフが美味しく頂きました)。

「あ、愛夏ぁ…痛いだろ」

「愛のムチだよっ」

「俺はMっ気ねぇよ。どっちかと言うと攻める方が好きだ」

「いつでも攻めてきてよ……あのさ、何かあったの?」

 愛夏にそう言われて俺は一瞬押し黙った。

「何もなかったよ」

「嘘だよ。だって顔に『何かありました』って書いてあるもん」

「嘘つけよ。顔にはお前の拳跡が残ってるだけだよ」

 本当は色々とあったんだよ。千穂に校舎裏に呼び出されて『新戸先輩の事がおそらく好きです。でも、よくわかりません。あとこれを読んでください』とか言われた。おそらくって何だよ。

 渡された手紙の差出人は紗枝。内容は文化祭の時に来るから文化祭が終わったら屋上に来てほしいといったものだ。

「私は、文化祭が終わったら校門前で待ってます。来てください」

 そういって帰って行ったのだ。

 さて、これはどういう事だろうか?

 どういう事なんだろうな。

 どうすればいいんだろうな、俺。

 そして、どうなるんだろう。

「なるほど、そういう事があったんだね」

「あ?説明してないだろ」

「今一生懸命説明してたじゃん。本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ」

 その心の底から心配したような顔はやめてくれ。

「で、どうするの?」

「どうするのって愛夏、そりゃお前……」

 紗枝か?殆ど一緒にいなかった。でも凄く相性いい気がしてならない。性格も一見するとつんつんしてそうな感じだが、実際は素直で可愛い。

「千穂ちゃんさ、中学の頃から兄貴の事好きだったのかも。一度兄貴に怒られたって見たことないような顔して泣いてたし、転校しても手紙送ってくるぐらいだからねー。兄貴ってばそんな一途な子を捨てるんだ」

「お前はどうしてそういうこと言うかなー。つーか、捨てるって何だよ」

 千穂……ねぇ。うーむ、ひいき目なしに見てまぁ、可愛いけど長く一緒にいたからなぁ……。ああ、悪いところばっかり考えちまうぜ

「一緒にいたから全部知ってるって?うっそぉ、まだ裸も見てないじゃないのさ」

「あのなぁ…」

「冗談だよ、冗談」

 嘘つけよ、その第三者の立ち位置は凄くおいしい立ち位置ですって言う顔はやめろよ。

「文化祭まで兄貴は苦しみ続けるんだね?」

「にやにやしながらいうなよ」

「ごめんね兄貴」

「だから心底嬉しそうな顔をするな……いや、さぁ、なんだかおかしくないか?もしかしてこれはあの千穂が普段俺からこき使われているからささやかな仕返しなんじゃないかって思っちまう」

 小悪魔的な笑顔の千穂が策略に堕ちた俺を見ている姿が目に浮かぶ。

「それはないよ。あの千穂ちゃんだよ?」

「……冗談だよ。わかってるよ」

 紗枝か、千穂か、それとも逃亡か……。逃亡?いっその事この町から逃げちまうか。嫌待て待て、これは両方選ばないって言う手もあるんじゃないか?

「あのさ、兄貴」

「どうした、妹よ?」

「曖昧な答えが一番駄目だよ。傷つくよ」

「それは安心してくれ。俺はちゃーんと結果を出して見せる」

「そっか、安心したよ」

 じゃあ今日早いからもう行くねと愛夏は先に行ってしまった。愛夏にああいった手前、結果は出さなくてはいけない。

「うー……やっぱり逃亡か?」

 あの場所ですっぱり結果を求めてくれていたらこんなに苦しむことはなかっただろう。まさか猶予を与えてくるとは思わなんだ。

「うあーどうすりゃいいんだよっ」

 俺の声は誰もいない家の中に響くだけだった。


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