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第十話:肩すかし

第十話

 千穂がいないと言う事で俺が野郎共の指揮をとる二日目。

「ちゃんと足場がくっついているか危ないから確認してくれよ」

「ラジャーっす」

「千穂ちゃんは今日いないっすか?」

「千穂は新しく出来た友達に誘われて遊びに行ったそうだ」

「そうっすか」

 二日目だと言うのにそれなりの足場が組めてきた気がする。これなら明後日ぐらいに野外ステージが出来そうだ。

「そういえば会長」

「何だ?」

「昨日はここの生徒会長さんに案内されてどこに行っていたっすか?」

「校内を案内してもらっていたんだよ。カメラ持ってな」

 昨日家に帰ってデジカメの中身確認したんだけど俺の期待するような下からの視線的なものは期待できなかった。まぁ、健康的なスポーツ少女っぽいのは撮れていたけどな。

「さすが会長ですね。手が早いっす。見せてくださいっす」

「ほれ」

 他の作業中の生徒たちも手を休めてデジカメに群がる。俺が言うのもなんだけど、気持ち悪いな。

 当然、連中の想像していたものと違うものが写っている為に反応はいまいちだ。

「なんだかがっかりっす」

「残念っす」

「作業に身が入らないっす」

「あのなぁ、いきなり刺激的なものは身体に毒だろ?だから最初は刺激の少ないものを選んだんだよ」

「なるほど」

「色々と考えているってことっすか」

 やたら感心しているがこんなところ大久保生徒会長……いや、紗枝に見られたら何と思われるのだろうか。せっかく出来た綺麗な女子の友人がいなくなるのも寂しいものである。

 今日も校内を案内してくれるって言っていたけどお付きの者(たしか湯河原さんだったかな)がいうには今日は用事があると言う事で学校にいないらしい。

 女子高にいると言うのに作業中一度も女子生徒に会うことがなかった。たとえて言うならホラー映画で最後までお化けの類が出ずに終わった感じだった。

 あさって辺りに出来るだろうと思っていたけどこの調子なら明日にはできるだろう。

「会長、もうちょいで完成っすね」

「そうだな。あとはパネルみたいな奴をステージの上に敷いて完成だからなぁ」

「まさかこんなに早く終わるとは思わなかったっす」

「だなぁ。俺は湯河原さんに報告してくるから今日は解散だ」

 今日もいい汗かいたなーとかいいながら帰って行く生徒を見送る。

「さて、生徒会長の押し事でもしてくるか」

報告する為生徒会室へと足を向ける。うーむ、さっきは女生徒に会いたいとか言っていたけど今度は会いたくないんだよなぁ。なんで男子がいるの?って視線が痛いんだよ…下手したら通報される恐れがあるし。

 女子高でそんあハプニング起こすのも楽しいかと思ったけど特に何もなく生徒会室にたどりついた。

「すみませーん。湯河原さんいますか?」

「はい、どうぞ~」

「失礼します」

 生徒会室に入って本日の作業が完了した事を伝えた。

「明日ぐらいには終わりそうです」

「そうですか、それなら練習とかでも使用できますね。ありがとうございます。この事はちゃんと大久保生徒会長に伝えておきます」

「じゃあぼくはこれで失礼します」

 一礼し、生徒会室を後にする。

 校舎を出るまで結局女子生徒に会う事もなく(声は聞こえるが廊下では会えなかった)校門に出てからやっと女子生徒の後ろ姿が見えたぐらいだった。

「……帰るか」

 どこか店にでもよってお菓子を買おうと思った矢先、見知った後ろ姿を見つける事が出来た。

「愛夏」

「あれ?兄貴?ああ、そういえば女子高でステージ作ってるんだっけ?」

「そうそう、ここから近い場所だな」

「ふーん、やっぱり女の子がいっぱいだよねぇ?」

「いや、放課後女子生徒見かけたのお前で三人目だ」

「……女子高だよね?」

「会うとは限らん」

「運ないね」

「運があったら今頃ドロドロの三角関係で苦しんでいる頃だろうよ」

 俺にそんな運があるとは思えないけどな。

「愛夏はちょうど帰りか?」

「うん、友達の家によって帰ったからちょっと遅くなったんだよ」

 普段も一緒に生活しているが朝はともかく帰りは一緒に帰る事が少ない。愛夏は一応部活に入っているんだが幽霊部員と言う奴でさぼってばっかりだ。

「あ、そうだ兄貴~」

「何だよ?」

「今日おばさん帰ってくるの遅いから何処かで食べて帰ろうよぉ」

「あのなぁ、愛夏……お前もお小遣いをもらっているからわかるだろ?今月は厳しかったから大人しく家で俺の手料理だ」

「……あ、じゃあ愛夏が作ってあげようか?」

 愛夏が料理を作ると後片付けが面倒である。まぁ、たまにはいいか。

「よし、頼んだ」

「頼まれたよ、兄貴っ……それで何が食べたい?」

「……愛夏の得意料理って目玉焼きだったよな」

「うん」

 黄身がつぶれる確率三割という意外と高確率な腕前である。

「卵のサラダも作ろうか?ゆで卵を入れてさ」

ゆで卵を作るとかいってレンジの中にラップでまいた生卵を入れた時はマジでびっくりしたな。下手したらレンジが壊れていたかもしれん。

「まぁ、愛夏も成長しただろうからな。お前に任せるよ」

「うん、頑張るよっ。お袋の味って言うのを見せてあげるよ」

 その日の晩御飯、俺の前に出てきたのは黒ずんだ魚の焼き物と味噌を直接ぶち込んだ味噌汁だった。きっと、母さんがこれを食べたら愛夏に料理を教えることだろう。


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