第1話:ふにふに最高ー!!
初めて会ったときから、この人は何かが違うと感じていた。
最初から恋愛感情があったわけではない。
だけど、柔らかく包み込むその空気に、
気づけば俺は、どうでもいいことまで話していた。
本当にどうでもいいことだ。
今日の昼ごはんとか、コンビニの新商品とか。
でも、その“どうでもいい話”を、
この人はちゃんと聞いてくれた。
だから、俺は思った。
——この人のことを、もっと知りたい。
⸻
俺たちは、共同で仕事をしていくなかで、
互いを尊敬し合うようになっていた。
無理に距離を縮めることもなく、
気づけば、自然と隣にいるような関係だった。
このときすでに、
お互いの気持ちを確認する必要はなかった。
言葉にしなくても、分かっていたからだ。
——それが、恋人になった日だった。
⸻
「ねえ」
「なに?」
「……ちょっといい?」
「なに?」
⸻
俺は少しだけ近づいて、
そっと、触れた。
⸻
「……ふにふに」
「え?」
「やわらかい」
「ちょっと待って」
⸻
「何してるの?」
「いや、なんか気になって」
「気になってって何」
⸻
この人は、一瞬驚いたあと、
すぐに笑った。
その反応を見て、俺は思った。
——ああ、よかった。
⸻
「ねえ」
「なに?」
「もう一回いい?」
「ダメに決まってるでしょ」
⸻
くだらない会話。
意味のないやり取り。
それでも、
この時間がずっと続けばいいと、
どこかで思っていた。
⸻
このときの俺は、まだ知らなかった。
この関係が、
ただの恋人関係では終わらないことを。




