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異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~

異世界美少女エリス<バランサーの魔法>

篠田誠司は、ごく普通のサラリーマンだった。平凡な日常に大きな不満はなかったが、最近は少しイライラすることが多かった。仕事での評価はイマイチ、プライベートでは友人からの扱いが軽く、かつて婚約者だった美咲に至っては、誠司を捨てて裕福な男性の元へ去った。


「何が『幸せをつかむには努力が必要』だよ。俺だって十分に努力してるのに」


そんな不満を抱えたある夜、誠司は仕事帰りに立ち寄った公園で奇妙な光景を目にした。銀髪の美少女が、不思議な器具を眺めていたのだ。銀色の天秤のようなものを手に持つ彼女は、誠司に気づき微笑んだ。


「こんばんは、篠田誠司さん」


「え、どうして俺の名前を知ってるんだ?」


「私はエリス。ちょっとしたお手伝いをしに来たの」


そう言ってエリスは、手にしていた天秤を誠司に差し出した。


「これは『バランサー』。触れるだけで、あなたが関わるすべての状況を『公平』にする力があるわ」


「公平?」


「たとえば、あなたの上司が理不尽な評価を下したら、彼の評価もまた何かの形で公平に戻る。そして、あなたが少しズルをした場合も、同じことが起こるのよ」


そう言って、エリスは不思議そうな微笑みを浮かべた。


最初のうちは誠司も半信半疑だった。しかし翌日、試しに天秤を手に握り、上司の大竹が横柄な態度を取るのを思い出しながら念じてみた。すると、突如、大竹の足元に水たまりが現れ、派手に転倒した。オフィス中が笑いに包まれる中、大竹は恥ずかしそうに席を外した。


「…本当に効果があるのか?」


試しに誠司は、コンビニでレジに並んでいるときに天秤を手のひらで転がしてみた。その直後、前の客の会計が何らかのミスで時間がかかり、誠司は割り込みされずに済んだ。


「便利だな、これ」


バランサーを使う生活は、日々を少しずつ快適にしてくれた。職場では誠司の正当な努力が報われるようになり、嫌な人間たちは自ら転げ落ちていった。


しかし、次第に誠司はその力を復讐に使い始めた。かつて自分を捨てた美咲への仕返しのために。


誠司は、美咲が夫と買い物をしている姿を見かけたとき、天秤を握りしめて願った。


「夫婦仲が少しでも悪くなればいい」


すると、美咲の夫が財布を忘れたことに気づき、二人の間で言い争いが始まった。些細なことだが、誠司の心にはざまあみろという快感が広がった。


その後も、誠司はバランサーを使って美咲の生活に小さな混乱を与え続けた。夫の出世が停滞したり、美咲自身がちょっとしたトラブルに巻き込まれたり。彼女の不幸そうな姿を目にするたび、誠司は笑みを浮かべた。


だが、ある日、誠司は奇妙な現象に気づいた。バランサーを使った後、自分自身にも不可解な不運が訪れるようになったのだ。職場での小さなミスが大事に発展したり、趣味で通っていたジムで機械が故障して怪我をしたり。


「どういうことだ…?」


気になった誠司は、バランサーを分析しようと試みたが、ただの天秤のように見えるだけだった。


その夜、エリスが再び現れた。


「楽しめた?」


「おい、この天秤には何か罠があるんだろう!?」


「罠なんてないわ。ただ、使いすぎると、あなたが思う『公平』も歪むというだけ」


エリスの声には、いつもの穏やかさがあった。


「公平ってのは、たった一人の主観で決まるものじゃないの。あなたが気に入らない人に罰を与えれば、それが巡り巡って戻ってくることもある。それだけの話よ」


そう言うと、エリスは天秤をひねり、光の中に消した。


翌日から、誠司の日常は元に戻った。バランサーの力も消え、仕事も生活も以前のような平凡さを取り戻した。しかし、誠司の心には一つの教訓が残っていた。


「自分の人生を良くするのに、他人を蹴落とす必要なんてないんだ」


それから誠司は、地道に仕事に取り組み、自分自身を磨くようになった。バランサーを失っても、少しずつ自分の人生を「公平」にしていく努力を始めたのだ。


そして、いつの日か、自分の力で掴んだ幸福こそが、何にも代えがたいものだと実感する日が訪れるだろう。

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