~敗北~
◇登場人物◇
カケル:物語の主人公
ブラッド:カケルが召集された討伐隊の隊長面倒見がよく結構強い
ロザリー:討伐隊の術師攻撃魔法が得意、頭がよく参謀役を兼任している
エイミー:討伐隊の治癒師支援魔法のエキスパートで優しいお姉さん
ノーライフキング:この物語の宿敵
「逃げて……」
目の前で今にも消えそうな声で呟く女性がいる。
見れば女性の鳩尾を鋭利な刃物が貫いている。
(何故俺はこの光景を黙って見ている)
そう自問しても返答は帰らない。
やがて鳩尾を貫かれた女性は息絶え、その命を奪った者がゆっくりと近づいてくる。
不死の王と呼ばれる上位アンデットが今回の討伐目標だった
俺は討伐部隊に加わりこの作戦に参加した。
俺に剣の指南をしてくれたブラッド隊長、いつまでも作戦を理解できない俺に最後まで付き合ってくれた術師のロザリーさん、たくさんの仲間が目の前で殺された。
そして、部隊になじめない俺の為にみんなとの懸け橋になってくれた治癒師のエイミー死ぬ直前まで身を案じるほど優しく、温かい人だった。
不死の王は俺の前に立つと下卑た笑みを浮かべ一言言葉を発する
「みっともないですね~」
俺が沈黙すると不死の王は話を続ける
「目の前で仲間が殺され、どんな気分ですか? あなたは弱すぎる、魔力適正もなくそれを補う剣の技量もない最後に残された知力もない故に仲間が殺されても地面に這いつくばりただ見ていることしかできない」
俺は返す言葉が無かった……全くその通りだ、強くなりたくて大切な物を守れる男になりたくてそのための努力もした……しかし現実は残酷で目の前で大切な物を奪われても地面に這いつくばることしかできない、そろそろかと死を覚悟したところで不死の王は意外な言葉を口にする。
「あなたは生かしておくことにしましょう」
(……)
「己の無力さを一生悔いてみじめに生き延びてくださいそしてまた私にその絶望と後悔で歪んだ滑稽な顔を見せることで楽しましてくださいね」
そう言い残して不死の王は姿を消した。
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