~王宮裁判~
◇登場人物◇
カケル:物語の主人公
ルカ:カケルのクラスメイトで攻撃魔法が得意少し頭が悪い
ルナ:ルカの妹で支援魔法を使いこなす少し性格が悪い
カラネ:優秀な剣士気が強く芯の強い性格
―王宮内部―
ルナの予想通りカケルは王宮に出頭命令が出され向かうことになった……またルカとルナとカラネの三名も重要参考人として出頭していた。
「ではこれよりカケルの懸けられた嫌疑について尋問を開始する! 被告は我々に許可なく発言をしないように……まず王国筆頭審問官より罪状の読み上げ及び尋問をします」
「では私から……まず被告の罪状は魔道騎士学園の実戦演習中に遭遇した岩石巨人との交戦時異形の魔力を使用したと報告から魔族の間者であると嫌疑が懸けられています……」
(なんだよこれ……わざわざ俺に対する不安や嫌悪を煽るだけの罪状は……)
「被告に質問をします……あなたは魔力適正がなく魔力の使用はできないと学園から報告を受けていますが
事実ですか」
「間違いありません」
「では岩石巨人との交戦中に魔力を発動させられたのでしょうか?」
「俺の故郷は成人する際鬼と契約します……その後は鬼と魔力を共有して戦闘を行う習わしで今回も鬼の力を借りました」
「これまで魔力を使わなかったのは何故ですか?」
「俺は岩石巨人と交戦するまで完全に契約をしていない状態でした……故に魔力が使えなかったそれだけです」
「あなたの故郷での成人とはいくつを差しますか?」
「十二歳です」
「あなたは情報によればとっくに成人しているはずですが?」
「成人の儀は受けましたが……当時鬼を受け入れることができずにいました」
「俄かに信じがたいな……」
「悪魔の手先に違いない」
「神の慈悲などいらんさっさと処刑に……」
「わかりました……最後に質問です……あなたは悪魔の手先ですか? ……また否定するなら手先でないことを証明できますか?」
(嫌な質問だな……否定した所で証明する術がない……)
「黙秘は固定と捉えますよ」
「俺は悪魔の手先ではない……だがそれを証明する術がない」
「認めないとのことですね……わかりました……では彼女たちに聞いてみましょう」
審問官が話した後に部屋にルカとルナとカラネの三人が連れてこられた。
「ここにいる三人は被告とレイドを組み実戦演習に参加した者です……別室で尋問をしたところ知らぬ存ぜぬで黙秘を続けており被告を庇っているように感じました……私はこの者達もまた悪魔に心を売った哀れな人と疑っています……そこで少々痛めつけることも厭わない……」
(今なんて言った? ……ルカ達を痛めつけるだと……)
「審問官……重要参考人対しての許容を超える尋問は認められていないはずです」
「被告人発言を許可していませんよ……ただあなたが一言悪魔の手先であると認めれば丸く収まるのです」
(どこまでも下衆な連中だ……しかたない……あまりこの手は使いたくなかったがやるか……おい力をかせ……)
(お前さん本当によいのか? ……この国に居場所がなくなるぞ?)
(元から居場所なんてねーよ……ただ俺は降りかかる火の粉を払うだけだよ)
(かかっ! 主の願いじゃわしに拒否はできんよ)
カケルが念じると鬼化が始まる……徐々に魔力が同化していく。
「総員戦闘態勢!」
騎士団の一言で審問官及び騎士団が一斉に剣を構え戦闘態勢に入る。
(最初からそうしろよな……時間の無駄だったな)
「皆さんご覧ください! あれが悪魔に魂を売った哀れな人間の末路です! 少しでも動けばこの三人の命は無いとおも」
「殺せよ」
「なんだと……」
「だから早く殺せよ……その後お前ら全員ひき肉にしていくだけだ……ゆっくりな……ああその三人に手を出した奴は楽に死ねると思うなよ……生まれてきたことを後悔するほど苦しんでもらうからな」
カケルの声に審問官も騎士も怯む。
「奴を殺せ! 武器を持っていないんだ大した抵抗はできない!」
しかし審問官の一声で一斉にカケルに待機していた戦闘員が襲い掛かる。
(お前ら如きに武器は必要ねーよ)
カケルは一斉に向かってくる審問官と騎士を素手でいなしていく……もちろん息の根を止めながら……あらかた向かってくる者を退けた後筆頭審問官に近づきながら問いかける。
「ひっ! ……」
「俺を殺す気でいたんだ文句は無いよな? ……俺の要求は二つだ……俺を含めそこの三人をこの国から安全に出すこと……もう一つは俺の故郷を異端審問にかけた奴を教えること……拒否又は虚偽の証言をすれば相応の報いを受けてもらう」
「私は何も知らない! ……本当だ!」
カケルは筆頭審問官の両足を粉砕する。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「チャンスは後一回だ……次は腕を潰す……次は殺す」
「わかった! 全部話す! お前の故郷を審問にかけたのは私だ! しかし王からの命で逆らえなかった……処刑を実行したのは騎士団長だ!」
「そうか……俺の妄想が事実である確認ができてよかったよ……」
カケルは筆頭審問官にお礼を言うと解放されているルカ達の下に行き謝罪をする。
「結局巻き込んでしまって申し訳ない……自分でも勝手なことを言っている自覚はあるが一緒に国を出て付いてきてくれないか?」
「はあ……それはお願いとは言わないのだけれど……」
「私は行くよ!」
「付いて行ってあげてもいいわよ!」
かける達は王宮を出て国外に出ることにすると外にルカとルナの使用人と近衛騎士団長がいた。
「わざわざありがとう……こんなことを頼んで申し訳なかったわ」
「パパっ!」
(ん? パパ?)
「カケル君少しいいかな?」
カラネにパパと呼ばれた近衛騎士団長が話かけてくる……ルカとルナは使用人から荷物を受け取り何やら話をしている。
「カラネはいい娘に育った……努力家で気高く騎士にそして私の後を継ぐのにふさわしい子だ……君はそんな私の大切な一人娘を行く当てのない旅に連れて行こうとしている……君には病める時も健やかなるときも腹ペコな時も娘を思い守れると誓えるか?」
(なんか違う気がするんだけど気のせい?)
「はい……誓います」
「カラネの事を末永く頼んだぞ……」
(えーなんでパパさん泣いてるの?)
「ちょっとパパ! 私とカケルはそうゆうんじゃないから!」
「だって学園から帰るとカケル君の事しか話さなかったじゃないか!」
「なっ! 余計なこと言うなー!」
カラネが縮地を使いパパさんを仕留めた……に見えたが普通に止められている。
「カラネ……本当に強くなったね……俺にはこの街を守る責務があるからついていくことはできないけどずっとカラネの安全を祈っているから」
「パパありがとう……」
「カケルー! 準備できたよ!」
「茶番はいいから早くしなさい!」
ルカとルナは既に準備を完了させておりいつまでもカラネの手を放そうとしないパパさんの手を強引に引き離しカケル達は王都を出発した。