~王宮騎士の判断~
◇登場人物◇
カケル:物語の主人公
ルカ:カケルのクラスメイトで攻撃魔法が得意少し頭が悪い
ルナ:ルカの妹で支援魔法を使いこなす少し性格が悪い
カラネ:優秀な剣士気が強く芯の強い性格
―王都中心部―
===カケル達が森から帰る途中と同時刻===
王宮では緊急会議が開かれていた。
「それは真実ですかな?」
「はい……確かに岩石巨人を一人で討伐しておりました……また彼からは魔力を持っていないはずですが戦闘の途中で人とは思えない魔力を観測しました……悪魔の間者とみて差し支えないかと」
「だから言ったのだ……あの時に処刑しておけばこんなことにはならなかった」
「今更言ってもどうしようもない……今はあの化け物をどう始末するかだ」
「まず出頭命令を出し拘束するべきかと……従わなければ反逆罪の大義名分のもと処刑できる」
「そうだな……善は急げだ! 直ちに取り掛かれ!」
「御意!」
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―王都近郊の町スタット―
カケル達は森から無事脱出することに成功し、講師に討伐総数の報告などを報告する……しかし若干の違和感があるあれだけの被害がありながら報告を受ける講師は誰一人岩石巨人に触れることなく事務的に話を終える。
「あれだけのことが起こったのに不自然ね」
「まあ聞かれたところで説明のしようがないしな……実際事情を知っているルナでさえ状況証拠がなければ信じられない事象だ……そもそも岩石巨人が王都近郊に出現するのがおかしい」
話をしているとルカとカラネが目を覚ます。
「私たち助かったんだね……ルナおんぶしてくれてありがとう……カケルも私たちの為に戦ってくれてありがとう」
「お前らが無事でよかった……実際ルカの魔法にも助けられたしな」
「……私もっと強くなりたい!」
「それだけ話す元気があるなら自分で歩いてくれないかしら?」
「えーやだ! ルナにおんぶしてもらえるなんて機会ないし!」
いつもの雰囲気で話をするルカに安心するカケルとルナ……そんなルカを対照的に大人しいカラネには少し違和感がある……実際死にかけてるし当然と言えば当然だ……あえてカラネには周りに聞かれないよう小声で話す……ルナのいじりが入るとややこしくなるからだ。
「カラネ」
「何?」
「なんだ……その……気にするな……あの状況は騎士候補生に対処できるもんじゃない」
「でも……私二回もカケルに助けてもらって……怪我もさせちゃったし……」
「失った命は回帰しないが怪我は治せる……全員無事だったんだから今はそれでいいだろ」
「うん……ありがとう……」
『カラネさんが泣いているのだけれどセクハラしてないでしょうね?』
(だから……もういいや……てかそれどうやってんの?)
『これは念話を練習したらできるようになったわ』
(ファンタジーのご都合主義じゃないのね)
町中を歩いているとルナから意外な提案を受ける。
「二人とも今日はこのまま家に来なさい」
「えっ!? いいの?」
「行くわけないだろ」
「カラネさんもちろんよ……カケルあなたに拒否権はないわ! 黙って来なさい」
「……行くのはいいとして目的はなんだ……理由もなしにルナが家に招待するのはなんか怖い……」
「カケルは命の恩人だし特別に招待するだけよ」
「……」
『本音は今日の事を踏まえて今後の事を話したいだけよ……できれば誰にも聞かれない環境でね』
(なるほどな……)
目的が決まりカケル達はルナの家を目指す……ルカは元気を取り戻しいつも通りの様子に戻ったが、カラネは戦闘の事を気にしているのかまだ元気がない……これからの事を話すことに少し億劫になっているとルナの家に到着する。
「お帰りなさいませお嬢様……本日はお客様がご一緒なのですね」
玄関で出迎えたのはルカとルナの身の回りの世話をしている使用人だ……ルナによると元暗部に所属していて暗殺を生業にしていたそうだ……たまに殺気を向けてくるので正直怖い。
「いつもありがとう」
「ただいま!」
「私の部屋で話すから案内は不要よ……今日は下がって頂戴」
「かしこまりました」
ルナが使用人と会話を終えるとルナに連れられ部屋に案内される……部屋に入っても会話はなく各々腰を掛ける。
「カケルはよく遊びに来るの?」
「いやこの部屋に上がったのは初めてだ」
「そうなんだ……今度うちに招待してあげてもいいわよ?」
「遠慮しとく」
「何でよ!」
「二人ともいいかしら? そろそろ話を始めたいのだけれど……」
ルナの一言で四人に緊張が走る……そんな空気の中ルナが会話を続ける。
「まずは今日の実戦演習お疲れ様……四人で生還できたことに安心しているわ……でもその中で今日の演習は不可解な点が多過ぎね……まず岩石巨人が王都近郊に出現したこと……実際に被害が出ているのに関与しない講師たち……私の妄想が正しければ近々カケルは王都に出頭命令が出ると思うわ」
「なんでカケルが!?」
「まあ落ち着け……ルナ……恐らくその妄想の殆どが現実になると思う……それを踏まえてお前らに頼みがある……俺が出頭した後何らかの事情聴取があっても気絶をしていて何も知らぬ存ぜぬで通して欲しい」
「カケルがそうゆうなら……」
「あちらの目的がはっきりしない以上迂闊な言動は避けるべきだからな」
「……」
ルカは納得をした様子だがカラネはまだ引っかかることがあるのか表情が浮かない……それを察したのかルナが切り出す。
「何時言うか迷っていたのだけれどカケル……あなたお風呂に入ってきてくれないかしら?」
「確かに戦闘もあったからな……悪いが借りるぞ」
カケルが席を外した後ルナがカラネに切り出す。
「あれの事が気になるんでしょ?」
「なんでわかったの? そうよ……だっておかしいじゃない! あんな化け物を倒せるなんて……」
「まずどこから話すべきかしら……まずあれの認識を訂正するわね……本当はそんなに弱くないのよ……だけどそれは剣術と体術に限った話であれとの差は魔力で簡単に覆ることができるの……魔力を持たないあれにとって優しい世界ではないのよ……とても残酷で理不尽なの……カラネさんも決闘の際に聞いたと思うけど今回長く契約しなかった鬼と契約をして魔力を使うことができるようになったわ……恐らく今のあれはこの国の誰よりも強いし恐らく国は脅威と認定して排除すると思うわ」
「排除だなんて……」
「ルナ何とかならないの?」
「まだわからないわ……どちらにしろもうこの国にはいられないのは確実ね」
「カケルが出てったら嫌だよ……」
「安心しなさい! 処刑さえ免れれば一生会えないわけじゃないわ……」
「国の寛大な処置に期待するしかなさそうね」
カケルの処遇を心配する三人……一方カケルは広い風呂を堪能していた。
(あー風呂に浸かるなんて今日が最後になるかもしれないな……この後あいつらは三人でパジャマパーティーとか言ってキャッキャウフフするんだろうな……俺今日頑張ったし混ぜてくれないかな)
『あなたは帰りなさい!』
(……ですよねー)