~心の中の鬼~
◇登場人物◇
カケル:物語の主人公
ルカ:カケルのクラスメイトで攻撃魔法が得意少し頭が悪い
ルナ:ルカの妹で支援魔法を使いこなす少し性格が悪い
カラネ:優秀な剣士気が強く芯の強い性格
―スタット近郊の森―
(止めろ……お願いだから止めてくれ……ルカは……ルナは俺にとって初めての……なんで俺はこんなにも無力なんだ……大切な人を守ってやることすらできない……大切な人を奪ったやつに報いを受けさせることすらできない)
(だから言ったじゃろ……さっさとわしを受け入れろと)
(こんな時になんだよ……いつも言っているだろ俺はお前を受け入れるつもりはない)
(そんなんだから故郷を追われ大切な人を奪われ大切な物を失う……そしてまたあの時のように目の前で大切な人を奪われようとしている……お前さんは何もかもが中途半端なんじゃよ……目的を成し遂げるために力を欲しているのに受け入れない……)
(お前を受け入れるということは俺はもう人ではいられなくなる)
(思い違いをするでない……わしら鬼との契約は力の共有に近い……お前さんが鬼にはならぬから安心せい……ただ対価としてわしが指定したものを一つもらうがな)
(因みに何を持っていくつもりだ?)
(かかっ! それはなくしてからのお楽しみじゃよ……狡猾な鬼の中には命を要求する者もおったのう……)
(一つ確認だ……お前を受け入れれば岩石巨人を倒し三人を救いえるか?)
(勝ち負けはお前さん次第だが……あの程度なら力負けはせんよ)
(今ので命を取られないことは分かった……十分だ……そしてあの三人を救えるなら……この先守っていけるなら……お前を受け入れる!)
(待っておったぞ……やることはシンプルじゃ……意識を集中してわしがお主の中に入り込むイメージをする……そうすればわしの魔力と同調するはずじゃ……)
カケルが念じると鬼との同化が始まる……魔力を持たないはずのカケルに魔力が溢れていくのがわかる。
(これが鬼化か……魔力が流れ込んでくるのがわかる……)
(さあお前さんよ狩りの時間じゃ……存分に戦うとよい)
岩石巨人が今にも瀕死のルカとルナを握り潰さんと手を伸ばしているところだった……カケルは一つ息をついて踏み込む。
「気安く触れるな!」
カケルは一瞬で岩石巨人との距離を詰め伸びた手に切りかかると先ほどまで傷を付けるのがやっとだったのが嘘だったかのように腕を切断できた……腕を切断された岩石巨人は再度攻撃の対象をカケルに移す。
(驚いたな……普通に切れた……)
(当り前じゃろ……わしを誰だと思っとる)
(知らん……自己紹介とかしてないし……)
(な……まあよい……さっさと片を付けてしまえ)
カケルは倒れている二人に被害が及ばないようにまず岩石巨人の動きを封じる……まず目を潰して次に脊髄、脚の腱の順に切り刻むと岩石巨人はその場に崩れ落ちる。
「30秒位か? ……また再生するんだろ? しばらく大人しくしてろ」
カケルは岩石巨人が動けないのを確認してルカとルナを抱え少し離れた場所に移動させポーションを飲ませる……そしてすぐにカラネを連れて戻り同様にポーションを飲ませる……応急処置が完了したのとほぼ同時に岩石巨人が自己再生を終了させ再び起き上がる。
「切断した腕も元に戻るのかよ……おい鬼奴を殺すにはどうしたらいい?」
(首を切断するか五個ある心臓を同時に潰すかじゃな……まあ首を切ってしまうのが手っ取り早いじゃろ)
「了解した……まずは邪魔な腕からだな」
カケルは岩石巨人が繰り出す拳を避け切り落とし後ろからもう片方の腕も切り落とす。
「これで終わりだな……」
防ぐ手段を失った岩石巨人はカケルに首を切られ絶命する。
「終わったか……」
(初戦としてはまあまあじゃな……では対価を頂こうかの)
「ああ……なんでも持っていけ」
(ほれ完了じゃ……今後は余計な事考えずただお前さんも目的を達成する為だけに生きるんじゃな……わしはその為に力を貸そう……これから楽しみじゃの)
カケルがルカ達のところに向かうと既にルナが目を覚ましていた。
「みんな生きているのね……岩石巨人はどうしたのかしら?」
「俺が倒した」
「あら冗談が下手ね」
「あれを見ろ」
「……」
ルナの視線の先には息絶えた岩石巨人の姿があり状況からカケルが倒したと認めざる負えない。
「あなた契約したのね……」
「ああ……恐らくここでの騎士候補生としての生活も終わりだ」
「……今日は森を出ましょう……ルカとカラネさんの治療もしないと……私の魔力もすっからかんだし」
「そのつもりだ……」
カケルがカラネをルナがルカを背負い四人は誰一人欠けることなく森を後にした。