~イレギュラー~
◇登場人物◇
カケル:物語の主人公
ルカ:カケルのクラスメイトで攻撃魔法が得意少し頭が悪い
ルナ:ルカの妹で支援魔法を使いこなす少し性格が悪い
カラネ:優秀な剣士気が強く芯の強い性格
―スタット近郊の森―
「カケルあれって岩石巨人だよね……?」
「ああ俺の目がおかしくなければ間違いない……」
「何故超級危険種がこんなところにいるのかしら……」
(ルナの顔が引きつっている……どうにかして逃げないと全員あっという間にひき肉にされる)
岩石巨人は巨人の亜種で巨人の圧倒的な力に加え全身が固い石のような物質で覆われているため物理攻撃や火炎魔法はほぼ無効化される強敵だ。
カケルは三人の位置を確認した後に小声で指示を送る。
「ルナ! 俺に支援魔法を頼む……ルカは合図をしたら全力で火炎魔法を打て! カラネはしんがりを頼む! 俺が少しでも時間を稼ぐから全力で対比しろ!」
「カケルも一緒に逃げるよね!?」
「……ルナ……ルカの事頼んだぞ」
ルナはこちらの意図を理解したのか小さく頷く……そしてこちらに気づいた岩石巨人がカラネに向かって突進する。
「カラネ! 避けろ!」
しかしカラネは足が竦んでいるのか動けないでいる。
「カラネ!」
間一髪のところでカラネを突き飛ばす形で攻撃を避けることに成功するが岩石巨人の攻撃を見て改めて思う。
(あんなのまともに食らったら一瞬でひき肉になるな……まあやれるだけやってみるか)
「ルカ! 火炎魔法を打て!」
「わかった!」
合図とともにルカの火炎魔法が岩石巨人に直撃する……もちろんダメージは無いが土煙で若干視界が悪くなればいい。
(これで少しでも岩石巨人に注意を引ければ……)
土煙が落ち着き再度岩石巨人と対峙する……相手が仕掛けるのと同時にカケルも動く……岩石巨人にパンチをギリギリで避け脚に一太刀入れる。
(やはり固いな……だが……傷つくってことは切れるということだ!)
今の一撃で岩石巨人の攻撃対象は目論見通りカケルになり威嚇ともとれる咆哮を上げる。
(やばいもの凄く怖い……すぐにでも逃げたい……だが……あいつらの為にもやるしかない)
岩石巨人の動きに集中してる次の攻撃がきたら避けないと怪我では済まない……そして攻撃がくる。
(このスピードなら俺にも避けれる……え……!?)
岩石巨人の攻撃は明らかに一撃目より早かった攻撃を避けきれなかったカケルは直撃は免れたが吹き飛び後ろの木に激突する。
(まじかよ……腕と肋骨が何本か持っていかれたな……散々カッコつけてこのざまかよ……あいつら無事に逃げられたかな……)
カケルの目の前に岩石巨人が近づき止めを刺そうと振りかぶる。
(あーこんなところで終わりかよ……あいつを殺さなきゃいけないのに……エイミーになんて言えばいいんだよ)
「中級火炎魔法!」
岩石巨人を激しい火炎が包み動きを止める。
「カケルしっかりしなさい! 何情けない顔してんのよ! 私に黙って死ぬなんて絶対許さないから!」
(カラネか……なんで戻ってきたんだ……)
「中級回復魔法! これで動けるでしょ……全く案の定死にかけじゃない……でもよかった間に合って」
「カラネ……ルナ……助かった……」
「安心するのはまだよ……私たち三人が加勢したところで形勢が変わるとは思えないわ……剣は通さず魔法も効かないなんて……」
「いや……可能性はある……カラネに負担をかけることになるが……」
「みんなで生き残るためなら何でも言って!」
「ルナ俺らにもう一度支援魔法を掛けてくれ……カラネまず俺が奴の注意を引くから隙をみて側面から縮地を使って攻撃してくれ!」
「でも私の攻撃力じゃダメージ通らないよ……」
「攻撃するのは目だ……視力を奪えれば逃げられる可能性が上がる……まさか目まで硬いということはないだろう」
「わかったやってみる!」
ルナが支援魔法を掛け終えてカケルが岩石巨人の注意を引く……岩石巨人を誘導しながらカラネが攻撃する為の隙を作る……岩石巨人がカケルに攻撃しようと振りかぶった瞬間にカラネが仕掛ける……縮地で一気に間合いを詰め渾身の一撃を目に入れる……空中でバランスを崩しているカラネを受け止め岩石巨人を見ると頭のあたりを押さえ苦しそうなうめき声を上げている。
「どうやら当たったようだな……」
「何とか成功してよかったー」
「今の手順でもう片方もやれるか?」
「もちろん!」
再度岩石巨人の注意を引くカケル前回同様隙をみてカラネが縮地を使い間を詰める……しかしカケルが異変に気付く。
(おいおいマジかよ……まだ数秒も経ってないんだぞ……そもそもこんなのありかよ……目が再生してやがる)
「カラネ! ダメだ! 距離をとれ!」
カケルはカラネに声を掛ける前から飛び出している……縮地を使っているカラネは自ら進行方向を変えられないこのままじゃカラネが死ぬ。
(止めろ……間に合え!)
間一髪岩石巨人の平手とカラネの間に張って入り両足で平手を受ける……抱えたカラネもろとも吹き飛ばされる……遠くでルカとルナが叫んでいるが意識が朦朧として言葉が届かない……そんな中ぼやけた視界で捉えたのは岩石巨人が投げた岩の破片の直撃を受け倒れるルカとルナの姿だった……岩石巨人は倒れる二人に止めを刺すつもりなのかゆっくりと近づいていく。