~実戦演習~ 後半
◇登場人物◇
カケル:物語の主人公
ルカ:カケルのクラスメイトで攻撃魔法が得意少し頭が悪い
ルナ:ルカの妹で支援魔法を使いこなす少し性格が悪い
カラネ:優秀な剣士気が強く芯の強い性格
―スタット近郊の森―
準備を整えたカケル達は討伐目標であるゴブリンを探しに森に入る。
「ゴブリンを見つけたらまずカラネさんが接近してスピードで撹乱して基本的にはルカの魔法で仕留める方がいいと思うわ……補助は私に任せて頂戴」
「わかった!」
「頑張るね!」
(あれ……俺またナチュラルにハブられてる……)
「俺は何をしたらいいんだ?」
「あなたは何もしないことが仕事よ……できればポーションも魔力も無駄にしたくないの……あなたがゴブリンと互角以上に戦えるなら話は別なのだけれど」
「ゴブリンならやれるはずだが?」
「……ならカラネさんと一緒に前衛を任せるわ……支援魔法で身体能力を上げることができるから……」
そうこうしてるうちにゴブリンに出くわした。
「ゴブリンよ! 数は2体……武装はこん棒みたい!」
「あなたの出番よ! ゴブリンを足止めしてみなさい!」
「了解だ! やってやる!」
(久しぶりの実戦……相手は2体のゴブリン……ルナの支援魔法があるとはいえ油断できないな)
近くにいたゴブリンの初撃を受け止めることに成功した時カケルは見た……道端のキノコを杖で突いているルナの姿を。
(あれ……支援魔法かけてくれないの?)
カケルがゴブリンの攻撃を受け止めている間にもう片方のゴブリンが仕掛ける。
「痛い! 痛い! 地味に痛い! てか加勢しろよ!」
「ルナ何してるの?」
「このキノコ薬草の効力を高める効果があってとても貴重なのよ」
「へ-そうなんだ」
「ルカまで既に興味がない……」
「申し訳ないけどカラネさん加勢してあげてもらえないかしら?」
「う……うんわかった!」
カラネが加勢したことによりゴブリンの撃破はできたカケル達だがパーティーには不穏な空気が流れる。
「ルナさんや……何故支援魔法掛けてくれなかったのかな?」
「あら支援魔法が使えるとは言ったけど使ってあげるなんて一言も言っていないのだけれど」
「さいですか……」
ルナの無茶苦茶な言い分にいやいや納得しながら三個あるうち一つ目のポーションを飲み体力を回復させたカケルは次の目標を探して索敵に入る。
「ゴブリンを見つけた! また二体でいる!」
「よし今度こそ前衛をこなしてやる」
「そうね……仕方ないから支援魔法を掛けてあげる」
ルナが詠唱を終えるとカケルの体を光が包み魔法が掛かる。
そして二体のゴブリンに立ち向かう……前回同様手前のゴブリンの攻撃を受け止めることに成功したが何かおかしい……そして二体目攻撃がカケルにヒットする……やはり何かおかしい。
「ルカ今よ! 火炎魔法を打ちなさい!」
「えっ!? でもカケルも巻き込んじゃうよ?」
「問題ないわ! 私の支援魔法で魔法耐性を上げておいたわ!」
「なら……大丈夫かな? ……」
(いや大丈夫な訳ないだろ……死んじゃうよ……おい! 詠唱始めんな!)
カケルの制止も空しくルカは詠唱を続ける……溢れる魔力量から恐らく全力で放つつもりだ。
「火炎魔法!」
ルカの放った火炎魔法はカケルもろともゴブリンを薙ぎ払う。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ルナ! カケルは本当に大丈夫なの? ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁって言ってたしだいぶダメージあるんじゃない?」
「お前ら……いい加減にしろ……そもそも物理攻撃しかないゴブリン相手に魔法耐性上げる支援魔法掛けてどーすんだよ!」
「倒せたしあなたも前衛の役割を全うできたのだからいいじゃない」
「本当に無茶苦茶な連中ね……正直引いたわ……」
カケルは二本目のポーションを飲み体力を回復させ次のゴブリンを探しに行く
「ゴブリンを見つけた! 今度は一体でいるみたい!」
(てかカラネの索敵すごくない?)
「一体なら前衛のあなた達で十分ね……任せても問題ないかしら?」
「ああ任せろ!」
「任さてたわ!」
まずはカケルが先手を取るべく先行してゴブリンしかけ鍔迫り合いになる。
「カラネ今だ! 側面から攻撃を! ……って……え?」
カケルが最後に見たのは縮地を使い目の前にあるカラネの膝だった。
「ちょっと! どいてー!」
(あっ……これは死んだな……)
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
カラネの膝蹴りが直撃してカケルが吹っ飛ばされる……後にカラネは冷静にゴブリンを仕留めカケルに駆け寄る。
「あの……自分でやっておいてなんだけど……生きてる?」
「ああ……なんとかな……」
五体目のゴブリンを討伐したカケルは全く連携が取れないパーティーにもう帰りたいと思いながら最後のポーションを飲み体力を回復させる。
「やっと半分か……」
「この調子で残り五体も倒しちゃおう!」
(正直連携は取れていないが個々の戦力はゴブリンを上回っているし余計なことを言って指揮を下げる訳にもいかないな)
「そうだな……複数を相手にする場合メイン火力になるのはルカの魔法による範囲攻撃だ……頼りにしている」
「うん! 任せて!」
「私は!?」
「カラネが前衛で粘って隙を作るからルカが魔法に集中できるんだ……頼りにしている」
「ふーん……まあいいわ」
「あなたが気配りをするなんて珍しいこともあるのね」
「ほっとけ」
ゴブリンの索敵をしていると人間の悲鳴が聞こえる。
「今の悲鳴!?」
「東の方から聞こえたわ!」
「カケル! 助けに行かないと!」
「ダメよ! 行ったところで私達に同行できる相手かもわからないし……イレギュラー対応は見回りの講師が担当のはずよ!」
「ルナのいう通りだ……助けに行くのはリスクが高いし恐らく後悔する……」
「そう……だよね……」
「だからまず俺が様子を見に行く……助けられる状況なら救出する」
「私も行く!」
「ルカさん……話聞いてた?」
「何かあったらカケルは誰が助けるの?」
「……無理はしない約束する……」
「私もついて行ってあげてもいいけど?」
「いや待っててくれ」
「なんでよ! 私も行くから!」
「はあ……止めても時間の無駄になりそうね……全員で行きましょう」
「ああ……だがこれだけは守ってくれ……一番に優先するのはお前らの命だ……俺が離脱しろって言ったら全力で対比してくれ」
カケルの言葉を聞いて三人は小さく頷き悲鳴の聞こえた方へ移動を始める。
現場に到着すると酷い光景が広がっていた……クラスメイトが五人既に息を引き取っていた……ある者は潰され、ある者は上半身と下半身がバラバラになっている。
「カケル……あれって……」
ルカが震えながら指をさす方を見ると元凶が視界に入る。
「あれは・・・・・・岩石巨人」