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邪祓日常編  作者: 白雪 慧流
2/5

勘違い

こんにちわー!日常編第二話です。

一話目でも言いましたが、邪祓本編のネタバレを含みます、本編を先に読むことを推奨します。

先に言っておきます、直揮は菅原くんのことです。

それでは本文をどうぞ!

 寒い冬のある日のこと。黒子(くろこ)ちゃんに呼ばれた私は、切ったばかりの短い髪をさっと整え、黒い上着を羽織った。少し男性ぽいかな? とは思ったが気にしないことにする。

「おねえさま!」

「久しぶり黒子ちゃん」

高校に入り、学生寮暮しとなった彼女は、邪祓休止中のため、会う機会が減った。それが寂しいのか、たまにこうして呼び出される。内容はその時々で異なるが、大抵はカフェでお茶したり、少し買い物したりと、至って普通の呼び出しだ。

「おねえさま、東西連合は大丈夫ですの?」

「ん? まぁ、大丈夫じゃないかな」

東西連合……。

 薬蘑(やくま)さんの仕事量が思ったより多く、勢いでまとめあげた裕也(ゆうや)さんですら、目を丸くしていた、あれから一年では、体制が変わったばかりでまだバタバタとしている。

「わたくしが大人であったら、手伝えますのに……」

しゅんとする黒子ちゃん、こうして見ると、高校生というより、小学生にも見えなくはない。

「黒子ちゃんの心配には及ばないわ、大丈夫よ、裕也さんもしっかりしてるし、所属してる皆さんがフォローしてくれてる、そりゃ今はバタバタしてるかもだけど、慣れないだけよ」

公園のど真ん中、私は背をかがめ黒子ちゃんの頭を撫でた、撫でられたからか嬉しそうにする黒子ちゃんを確認し、手を掴む。

「さて、今日はどこに行きましょうか」


 色々危ない格好をしているとは思っていたが、まさかこうなるとは……。私は、目の前で話しあっている男性二人を作り笑いで対応する。

 時は戻り数刻前、黒子ちゃんと、学校で使うらしい文房具を買うため、文房具屋巡りをし、欲しいものが買えたので、解散した直後、私は警官二人に話しかけられ、そのまま見慣れた警察署に連行された。

伊藤未無(いとうみむ)さん、事務職で二十五歳、女性」

「はい……」

髪が短く、少し丈の長い黒い上着に、黒い手袋、中の服は首元まできっちりと覆われている。まぁ、私の見た目だと不審者だと思われてもおかしくはない、まして黒子ちゃん見た目小学生だし。

「通報では、あなたと思われる男性が、小学生を連れて行ったとあったのですが」

「あの、私女ですし、黒子ちゃんは高校生です」

取ったばかりの運転免許証を見せながら、説明する。こんな事初めてなんだが。

「高校生? 嘘は言ってないですよね?」

「言いませんよ」

「……職場に連絡とか取れますか? きちんとした身分証明をですね……」

私は固まる。身分証明って職場連絡とかどうしようもないぞ、事務職ってあくまでも肩書きだし、東西連合とか怪しいことこの上ない。

 どうしようか必死に頭をフル回転させる、この状況を打破する方法……。あ、一人有効な人がいるじゃない。

「あの……被花警視(かぶりばなけいし)に確認取って頂ければわかります」

「被花警視に?」

「はい、知り合いですので」

どうせ東西連合に確認するなら、連絡は裕也(ゆうや)さんだ、だったら今確認してもらった方が早い。

「わかりました、連絡を取りましょう」

警官二人は、裕也さんに連絡し、すぐに彼が取り調べ室に来た、苦笑いで。

「……彼女の身元なら保証しますよ、あと黒子さんが高校生なのは事実です、見た目確かに小学生ですけど」

やれやれと、呆れが言葉に滲み出ていた、そりゃそうだ、私だって呆れたい。

 裕也さんのおかげでようやっと開放された私は、警察署内部を歩く。薬蘑(やくま)さんの時は病院の九階客間を利用していたが、今の代表は裕也さんなので、いつものカフェか、警察署に直接出向き菅原(すがわら)くんに伝言を頼むかの二択のため、ここにも慣れた。

「全く、変なことで捕まりましたね貴女も」

「ほんとですよ、まさか通報されるなんて思ってませんでした」

きっと近所の人は、可愛い女の子が謎の男性に誘拐される! みたいな危機感を持ったのだろう、黒子ちゃんのゴスロリも変わらずだし、あの手の服を着てると狙われやすいのは理解できなくはない。

「ま、これからはお気をつけください、それでも未無さんは黒い服を好んで着てますし、次も助けられるとは限りませんよ」

「肝に銘じておきます」

何か明るめの服を買おうかな、仁菜(にいな)とかに相談すれば若者ファッションくらいは教えてもらえそう、首元隠せないと今度は傷跡のせいで通報されそうだけれど。

「それじゃ裕也さん、ご迷惑おかけしました」

「今度は変な事で呼び出さないでくださいね」

私はぺこりと頭を下げようとしたが、停止した、裕也さんは構わず仕事に戻っていく。背を向け、離れていく彼を見ながら、私はボソリと呟く。

「裕也さんが普通に笑ったの初めて見た」


 気味の悪い笑顔で警視が歩いてくる。

「警視、何かありました?」

「おや、直揮(なおき)さん、えぇまぁ面白いことがありました」

面白いことですか……俺が恐縮しているのを悟ってか、そんなに怖い顔をしていますか? と聞いてくる、怖いというか不気味です。

「警視でも普通に笑う時あるんですね」

「人間ですからね、面白いことがあれば笑いますよ」

何当たり前のこと言っているんですかそう付け足される、いや、貴方普段張り付いた笑顔しかしてませんけど。

「未無さんが勘違いで捕まりましてね、確かに黒子さんの背は低いですし、格好からして高校生に見えないのはわかりますが、小学生に間違われるとは思っていませんでしたよ」

ククと、また笑い出す。黒子って子は確か、春水(はるみ)のとこの妹だったか、伊藤はいつも黒い服を着ているし、誘拐犯と間違われたわけだな。

「それはなんとも、災難な話で」

その災難な話を笑える警視も警視だと思うが。

 ただまぁ、それなりに人当たりは良いが、一定の距離感を常に保つこの人が、唯一全くの考慮をしていないのは伊藤だ、それが良いか悪いかはわからないが、少なくとも警視としては良い事なのだろう、仕事的にも信頼関係は重要だ。

「あまり、伊藤をからかわんでくださいよ、あいつも苦労人なんで」

「からかってはいませんよ?」

どうだか、そんな言葉が喉まで出かけたが、飲み込んだ。こんな態度でも、一応は伊藤のことを気にかけてはいるようだし、二人がこれでいいのなら、俺が口出しすることもない。変な事に巻き込まれるのも御免だ。もう手遅れのような気がするが。

「ほら、仕事しますよ警視」

「わかってますよ」

伊藤と警視が一緒に仕事するようになって二年、何があったのかは想像はつかないが、上手くやっているのならそれでいいのだ。

読んでくださりありがとうございます。

二年経っても裕也さんは裕也さんです。黒子ちゃんも黒子ちゃんです。

未無と菅原くんがなんだか不憫な立場にいる気がします、裕也さんの部下ってやっぱり大変かもしれません。

次回は厄神についてのお話となります

それでは次の話でお会いしましょう!

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