ー戦い?そんなものは後だー
6/14 私は深夜のコンビニから魔剤と呼ばれる飲み物と手が汚れない程度の
おやつを買って帰るところだった、決して人通りは多くなくましては大荷物を背負った
おばあちゃんが信号待ちなどしているはずもなかったのだ。
だが三徹目の私はそんなことは不思議にすら思わずそのおばあちゃんが目に映るや否や
「荷物持ちましょうか?」
などと声をかけてしまうくらいには
おばあちゃんは何も言わず、ただにっこりと笑いこちらに荷物を渡してきた
信号も青になり先に渡ると、音もなくフロントライトも光らせていない大型トラックが
信号を無視してこちらに突っ込んできた、一瞬だ、私はとっさにせめて荷物だけは、と
思いおばあちゃんのほうへ投げ渡すとおばあちゃんはただこちらを見つめ
手を振っていた。
来るはずの痛みに備え目を閉じる・・・・・がこない
あれだけの勢いと大きさだ、ぶつかって吹き飛んでもおかしくはない
それなのに何も来ない、不思議に思い目を開けるとそこにはただっぴろい白い空間が
広がっていた。
「目が覚めたか」
軽快な声だった、振り向くとそこには背こそ低いが
灰色のロープを顔まで隠した若い…男(?)がいた
「ここは死後の世界、というよりかはそれの一歩手前に位置する場所
と説明したほうがわかりやすいかね」
「死後・・・ということは俺はあの時死んだんですね?」
「そうだね、本来なら君はこのまま天か地に分ける裁判に行ってもらうんだけど・・・
私のちょっとした遊びに付き合ってもらおうかと、ね」
「遊び?」
「そうだね、君には元居た地球とは別の世界…平たく言えば転生だよ
君のいた世界では異世界転生、よく言うだろ?
そこで君には魔王を討「嫌です」・・・ん?」
「いや、ちょっと待ってくださいよ、なんでわざわざ殺された挙句
他の世界に飛ばされて命のやり取りなんかしなくちゃいけないんですか?
そんなもの、もっと他に適任がいるでしょうそれこそ自分のことを勇者だと勘違いしてる
痛いやつとか…」
「まーそう来るとは思っていたよ、うん、期待度通りの答えだ!」
そういうと彼は被っていたフードを脱ぎ笑顔でこう言った
「じゃあ、何もしなくていい!!剣や魔法、様々なファンタジーはびこる世界で
ひたすらに楽しんで!君にはその「資格」がある!」
そう言った瞬間目の前が爆ぜた、いや冗談ではなく
彼が告げたとたん真っ白になり、その眩しさに目を閉じる
そして輝きが収まり目をこすりながら開けるとそこには活気に満ち溢れる街並み
美男美女が町中を闊歩し様々な種族が暮らす世界・・・・・・はなく
鬱蒼と木々生い茂る森、耳を澄ませば野鳥が声を荒げ空を飛んでいる
「なんだ・・・ここは」
異世界転生・・・・完了・・・・・?
ざっざっざっざっざっざ
森をひたすらに駆ける、別に異世界に飛ばされたからと言って躍起になって
森を駆け巡っている訳ではない。
ここは異世界の森なのだ、日本の管理された平和な森などではない
凶暴な野鳥はいるしイノシシ、オオカミだっているそう思っていた・・・
「だからってっ…はぁっっ、で、デカすぎんだろっっ!!」
予想をはるかに上回っていた、精々、2、3メートルだと思っていた
甘かった、鋭い角がついた野ウサギがいた時点でおかしいと思うべきだった
今現在後ろから追ってきている蜘蛛なんか振り返りたくもいないレベルでデカい
「キャシャァ!!!!」
「くそがあの糞神がっ!!こんなとこに送りやがって・・・
こんなところで死んだら恨んで枕元にでも立ってやる!
とにかく・・・っ逃げ切んなきゃっあ!?」
足に地面を踏む感覚がなくなる、足が空を切る蜘蛛が獲物を逃したとでも
いわんばかりに睨みを聞かせている、まぁ落ちた後の死体でも食べておくれ・・・
「ぅわぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁああああぁっぁああぁ!!!」