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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

黄昏列車

作者: 今日の空
掲載日:2020/07/31

黄昏時はダレソガレ時。誰が誰だか分からなくなってしまうそんな時間だからこそ、私を忘れて欲しい。そんな恋愛小説を読みながら、私は電車に乗っている。


「あぁ、黄昏時だ…」


ビルとビルから垣間見えるオレンジ色の光に私は照らされる。その眩しさに顔を上げた瞬間、電車同士がすれ違い轟音を立てた。このすれ違う瞬間が少々不快だ。なぜなら、いつも向かいの電車の誰かと目が合う気がするから……。


「あ」


今日も誰かと目が合った気がした。



電車のアナウンスが流れる。もう降りる駅かと思いながら、小説を鞄にしまい定期券を取り出す。向かいに座っている小太りなおっさんものそのそと支度を始めた。


「痛っ」


ちょうど傷に気がついた時、電車の扉が開いた。おそらく、プリントかなんかで小指を切ってしまったのだろう。わたしは立ち上がり駅のホームへと向かった。


保育園から帰る途中の園児のうちの一人が、わたしを指でさす。わたしの顔に何か付いているだろうか?


「ただいま」


いつものように母さんはソファでうたた寝をしている。


「何もかけないで寝ると風邪ひくよ。もぉ」


わたしよりも小さく軽い母親をベットへ移動させ、夕飯の支度に取り掛かった。弟は帰ってきてはいるものの部屋でゲームをしているようだ。


「手伝ってくれてもいいのに」


弟はイヤフォンをしながら聞こえないフリをしている。全くいつからそんな子になったんだか。


当たり前の日常が今日も過ぎゆく……






次の日もわたしは電車に乗っていた。いつものように本を読んでいたが、囁くような笑い声が聞こえて思わず顔を上げる。


「っ…」


背後から夕日が差し込む中、電車同士がすれ違い轟音を立てた。今日も誰かと目が合た気がする。


電車のアナウンスが駅へ着くことを知らせた。小説をしまい定期券を取り出す。


「うへぇ」


さっきまで晴れていたというのに土砂降りだ。大事なプリントが鞄に入っているので鞄を傘にする訳にはいかない。私は諦めて土砂降りの中走っていくことにした。


「ただいまぁ」


家へ帰宅すると、母さんがおかえりと言いながらタオルを差し出してくれた。今日は体の調子がいいらしい。弟がずぶ濡れの私を見て小馬鹿にしてきたので頭を小突いてやる。


「じゃあ私お風呂入るから!」


当たり前の日常が今日も過ぎゆく……






次の日も私は電車で帰宅をしていた。今日は風邪気味なので何もせずに電車の外を眺める。すると何処からか女が啜り泣く声がした。


「や」


電車同士がすれ違い轟音を立て、ガラス窓が震える。わたしは夕日の眩しさに目を細めた。今日も誰かと目が合う。髪の長い誰かと…。


「や、ば、い」


掠れきった声が出た。電車から早く離れたくて家に早く帰りたい一心で、扉が開いた瞬間に飛び出す。怖い怖い怖いっ


「っはっはぁ、うっ」


家の中に駆け込んだところで、その場に座り込んだ。息を整えながらリビングへ向かう。朝食の食器が未だにテーブルの上にあった。


「母さん、今日は調子良くないのね」


弟も寝坊したようで、せっかく用意した朝食なのに私以外誰も手をつけていない。


「もー、せっかく準備したのに」


しょうもなかったけれど、日常に安堵した私は涙を零した。弟は部屋にこもってゲームをしているようで、わたしが泣いていることには気がついていない。今日ばかりはそれが嬉しかった。情けない姉の姿なんて見せたくない。


当たり前の日常が今日も過ぎゆく……






今日もわたしは電車に乗っている。昨日のことが怖くてずっと目を閉じていたが鍵を落としてしまったため仕方なく目を開けた。拾い上げて顔を上げた瞬間電車がすれ違う。


「っあ」


やっぱり、今日も誰かと目があった。笑い声が頭の中をこだまする。


「なんで笑うのよっ」


私は背後から夕日に照らされた。


「ただいま! ねえ聞いてよ、最近ずっと怖い目に遭っててっ」


家に帰るなりそう泣きつくと母さんは笑って話を聞いてくれた。温かい紅茶に心も落ち着いてくる。弟は珍しくゲームから手を離し怖いもの見たさで話を聞きに来た。


「もー、こっちは本当に怖かったのに」
















「あ」














母さんと弟が笑顔で見下ろすなか、ワタシは駅のホームへと落下する。いや、あれは母さんと弟ではなく、ただのぬいぐるみ。



じゃあ私が見ていた家族は誰だ?

じゃあわたしと目が合っていたあの人は誰だ?



黄昏時はダレソガレ時。

誰が誰だか分からなくなってしまうそんな時間。





でも、どうでもいいや。

綺麗な黄昏だ……





電車同士がすれ違い轟音を立てて1人分の肉塊をすり潰した

わたしは家で1人ぬいぐるみを相手に会話する少女

私はわたしが創り出した家族の理想



彼女はきっと気がついてしまったのだろう。



以上、あとがきでした!

精進致します

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