第5話:MURAYAMA Jr. 誕生の時
やべえ、孕ませた。
俺の名前はMURAYAMA。女を虜にすることには少々自信がある。1ヶ月に1回はAmazonでゴムをカートンで買っているし、ピルなどの避妊薬も一通り家にストックしてある。まあこれくらいなら俺以外にもそれなりにいそうなものだが、俺の周りは財布に入っているゴムをお守りか何かだと勘違いしてるやつばかりなので、そいつらは俺のことをこう呼ぶ。
「いずれ結婚詐欺師の頂点に立つ男」と。
ところで君は「男が女に言われたくない一言ランキング」のダントツ1位(俺調べ)がなんだかご存知だろうか。まあ話の流れ的にわかるだろう。正解は「生理が来ないんだけど」だ。この一言だけは流石の俺でもうざい。関係の薄い女であれば連絡を断ってハイサヨナラってすればいいが、ある程度長い付き合いがあり、家の住所が抑えられている相手とかになるとかなーりめんどくさい。誠心誠意を持って対応しないと最悪警察のお世話になる。今回はその誠意のある対応についての話だ。
冒頭にも言った通り、俺は7人いる彼女のうちの1人を妊娠させてしまったのだが、まあ事故による妊娠は俺にもわりと経験がある。大体の場合、産みたいとかほざく女を黙らせて行きつけの産婦人科に駆け込めば問題はない。その際にはとにかく話が親まで行くのを抑えることがポイント。誠心誠意を尽くしている素振りをみせれば女だけなら結構簡単。だが今回のケースは実はもっと深刻なのだ。
あれはあの女、彩ちゃんの家にセックスしに行った時の話だ。いつもはピル+ゴムの二重の防御で避妊しているのだが、その日はイレギュラーセックスが多かったため手持ちのゴムを切らしていた。買いに行こうとしたのだがその前に彩ちゃんに襲われてヤってしまった。ピルを飲んでるというので中出しを決めたのだが、後日妊娠を告げられたというわけだ。
この話をすると「ピルなんかに頼って中出しするからー」とか言うセックス初心者が沸くので一応言っておくと、実はゴムよりもピルの方が避妊率は高い。ゴムが妊娠率2%なのに対してピルは0.3%(ヘルスケアラボより)。ゴムだけしてヤるよりピル中出しの方が実は安全なのだ。最近はイメージだけで中出しを叩く奴が多くて困る。
話を戻そう。ここまでだとただの事故のようにも見える。が、俺の経験が告げている。この妊娠は仕組まれたものに違いないと。0.3%を不運で引いたとは思えない。妊娠を電話口で告げる時、微妙に語尾が上がっていた。彩ちゃんが嬉しい時に出す癖だ。おそらく実際はピルを飲んでいなかったのだろう。ここ最近、結婚したいアピールが凄くてそのたびに「俺には他の女の子がいるから無理だ」と断っていたのだがついに実力行使に出たか。
このパターンは最も面倒くさい。間違いなく話が親に行くからだ。産ませたら当然デキ婚ってなるだろうし、堕すってなっても責任を取れとか言われてちゃんと付き合っていかなくてはならなくなるだろう。ぶっちゃけ彩ちゃんはもう飽きていて、そろそろフって入れ替えようかなと思っていたのでここで縁を切っておきたい。
と、言うわけでだ。
「まい、大事な話があるんだが聞いてくれないか?」
「えっ?なになに?」
「実は俺は将来、まいと結婚したいと思っている。」
「え、嘘...ホントに⁉嬉しい!」
「でもな、それに当たって今困ったことが起きててさ...」
いざと言う時のために用意していたこの捨て駒女になんとかしてもらおう。