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本編3-25

改稿版になります。


 そして無事目を醒ましたサクリーナに改めてドレスへ着替えさせてもらい、方々にご迷惑をお掛けしましたと頭を下げて回った結果、私に下される処分は特になし。という結果に落ち着いた。

 無事にベル達を連れて帰って来たことにアイリーン陛下は安堵の笑みを浮かべてすらいたぐらいで。不服そうな顔をしていた大神官は、何かしら私に罰を与えたかったのだろうが、私達が連れ帰ってきたベルの魔力が軒並み外れて高かったこともあり、結局は沈黙を選んだらしい。

 大神官と私の間に挟まれ、気まずそうにしていたカインには大変申しわけないことをしたと思うが、彼は七騎士として私サイドに立ってくれた。

 ノヴァーリスに言われた言葉が、カインに響いたのだろうか。その判断は私にはできないが、こっそり「ありがとう」と告げると、少し迷ったそぶりを見せはしたが「いえ。ワタシがこちらに立ちたかったんです」とはにかんで言ってくれたので、控室に下がってから思い切り頭を撫でておいた。


 見るも無残な姿にしてしまった女王の正装たるエンパイアドレスに関しては、王宮の服飾師さん達にひたすら頭を下げ、アシュラムとグラハムの騎士服を直してもらう必要もあったので、皆で相談して手に入れた魔石を修理代としてごっそり置いてきた。今にも魂が抜けそうな顔をしていたので、追加で何か差し入れを渡そうと心に決め、あとはもう誠心誠意頭を下げるしかない。

 いやもうほんと、あの刺繍とかいったいどれだけの時間と手間を掛かったんだろうと思うと、いくらベルを止めるためだったとは言え、ドレスに気を使う余裕すらなかった自分の意識の低さを恨む。

 本当にごめんなさい、王宮服飾師のみなさん。


「さて、それではしこたま説教しますので、ソファにお掛けください」


「……しこたまから軽くに変更されたりなどは」


「ありません」


「ぐう……」


 そうして総ての挨拶回りと謝罪が終わり、ひとまず戴冠式はドレス制作の時間などもあり二ヶ月後に延期するかたちで話がまとまった。延期、ということで、いつまでも女王宮の迎賓室を控室として使用させて貰うわけにもいかず、七騎士やベルの両親は、一旦エグランディーヌ侯爵家で預かることとなり、全員で私の生家へ向かう。

 各自に客室をあてがい、各々騎士服から私服へ着替えてもらってから私の私室へ訪れたアシュラムの発言に、あからさまにげんなりとした顔を隠すことなく披露した。

 覚えてるんだろうなぁとは思ってたけど、やっぱり覚えてたか。そこは是非とも忘れていて欲しかった。

 さすがに侯爵家の長子である私の部屋にアシュラムと二人きり……なんてことが世間一般的に許されるハズもなく、サクリーナに紅茶を淹れて貰い、そのまま彼女には私の後ろに控えてもらう。

 今回の騒動で間違いなく『一番頑張ったで賞』をぶっちぎりで受賞しているスノウは、サクリーナの腕の中でぷうぷう穏やかな寝息を立てていた。

 そこから二時間ほど次期女王としての自覚を云々、淑女としての嗜みを云々と説教を受けたが、途中で後ろに控えていたサクリーナが「お嬢様への忠言と思い黙って聞いておりましたが、もう我慢なりません。橙騎様、わたくしが口を開くこと、どうぞご容赦くださいませ」と言って私を庇いアシュラムと舌戦を繰り広げた辺りで、イーリス神には大変申しわけないが、彼女こそが真の女神様に見えたのは、私だけの秘密である。




 怒涛の一日が終わり、ようやく私の七騎士が全員揃った状態で迎えた、初めての朝。

 ベルの両親が目を醒ましたとの連絡を受け彼等の客室へ足を運んだ私を待ち受けていたのは、それはもう見事な土下座でした。

 申し訳ございませんでしたと繰り返し謝罪を口にする彼等を何とか宥めすかし、誰も罰するつもりはないと何とか理解して貰い同じ席につく。

 そりゃまあ、私もノヴァーリスもアシュラムも見るからに貴族で、確かにその通りなんだけど、この命の代わりに息子だけは……! なんて言われても困ってしまう。それじゃあ本末転倒だ。


「――本当に謝罪すべきなのは、わたくしの方です。わたくしには予知の力があるにも関わらず、貴方達を危険に晒してしまった。怖い思いをさせてしまい、本当に申し訳ございませんでした」


「そ、そんな……! そもそも貴女様方がいらしてくださらなければ、我々はあの場で魔物に殺されていました!」


「……その件で、お伺いしたいことがございます。あの魔物の数は、我々から見ても異常でした。いったい、何があったのですか?」


「それは……」


「覚えている範囲、話せる範囲で良いのです。今後貴方達を、ご子息を護るためにも、お願いします。教えてください」


 二対の赤い瞳が、困惑した様子を顕わに視線を絡め、何度か逡巡を繰り返したのち、ぽつりぽつりと魔物に囲まれる前の出来事を話してくれる。


「なぜあそこまで魔物が出たのか、我々にも理由は判りません……。ただ、最初は一体か二体だけでしたが、逃げているうちにどんどん数が膨れ上がり、あんな事態に」


「……魔物達は、いたずらに主人に爪を立て、恐怖に震えるあの子を――ベルの様子を、ずっと見ていたようにも、思えるのです」


 時たま、思い出す際に恐怖で身体を震わせながらきゅっと手を握る夫人の隣に席を移し、その手を優しく握る。

 青褪めた顔でお礼を言われ、これ以上は無理かな、と思った矢先、思いがけない言葉が零れ落ちた。


「……今にして思えば、フードを目深に被った不審な男が、我が家に尋ねてきたのが切っ掛けだったような」


「不審な男……?」


「ベルには素晴らしい素質があるとか何とか……か、カゲ……? とか言う国で訓練すれば、きっと素晴らしい炎の使い手になるだろう、と」


「っ!?」


「も、もちろんすぐにお断りしました! あの子はまだたったの六歳で、親元から離れて暮らすなんて、そんな、とんでもない! まだまだ甘えたい盛りのあの子に、どうしてそんなことができましょう……!」


「……とても貴重な情報、ありがとうございます。まだ疲れもありましょう。ご子息が目を醒ましたらすぐにお伝えいたしますので、どうぞもう暫く、この屋敷でゆっくりお休みになってください。大丈夫、ここは絶対に安全です。わたくしが保証いたしますわ」


 がつん、と、頭を殴られた気分だった。

 ≪咎モノ≫が現れた時にもしかしたらとは思ってた。術者を見たわけではなかったから確信を持てないでいたけど。

 ああもう本当に、ノヴァーリスを連れて来なくて、良かった。


 その後、何度も「ありがとうございます」と頭を下げる二人に、再度ゆっくり休むように言い含め、春の花が咲き始めたエグランディーヌ家の庭にある東屋で、一人頭を抱えていた。

 あの国が……カゲノ国がベルにちょっかいを出して来る可能性を考えなかったのかと問われれば、答えは否だ。

 なぜゲームでベルのルートに攻略制限が掛けられているのか。その理由は、ベルのルートで初めて世界を闇で覆う真犯人の素顔が出てくるから。いや、本当はずっと、それこそゲームの冒頭から『彼』は出ていた。けれど『彼』がそうなのだと、明確に描かれているのはベルのルートと、ベル攻略後に開かれる真相ルートだけ。

 そこに密接に絡んで来るのが、アルカンシエル王国の周囲を囲む四大国ではなく、その存在すら伝承や御伽噺の類だと思われていた、カゲノ国。


「……冗談じゃない」


 あの国は、どれだけ私の騎士を、私を苦しめれば気が済むんだ。

 叔父が私に行った禁術は、カゲノ国で開発されたもの。≪過去視≫で視た狂ったように笑う叔父は、確かに「カゲノ国から」と口にしていた。

 あの国は私を、そしてノヴァーリスを実験台にして、果てはベルにまでその災いの(かいな)を伸ばそうとしている。あれだけ多くの魔物が居た理由にようやく確信が持てた。カゲノ国の術者が、裏から魔物を操っていたからだ。


「こちらにおいででしたか」


「……ノヴァーリス」


「はい。お迎えに上がりました、セシリア様」


「――、……うん。レイニーは? 落ち着いた?」


「はい。スノウを抱えて、ようやく寝てくれました。安心するのでしょうか」


「うーん。どうだろ。確かにスノウの毛は気持ちいいけど」


 穏やかに微笑んで差し出された手を、一瞬ためらって、でも結局取って、東屋から出る。

 ベルの危機を予知できなかった自分のせいだ、と顔面蒼白で半泣きになっていたレイニーを一昼夜掛けて落ち着かせてくれたのは、他でもなくノヴァーリスで。


(本人は、気付いてないのかな……)


 多分、予知夢を見てしまうせいで寝るのが怖いと言っているレイニーが大人しく寝たのは、ノヴァーリスの特殊属性(エクストラクラス)のお陰。その特殊属性(エクストラクラス)のスキルが、半年ほど前から、ノイズ掛かって≪スキルカード≫で読み取れないのだ。

 特殊属性(エクストラクラス)――闇。

 それがノヴァーリスが持つ、もう一つの、属性。



これにて改稿版3章、終幕になります。

ざっくり数えただけなので正確ではありませんが、たぶん1万4千文字ぐらいは新規で書いているハズ…?

のろのろ不定期更新にお付き合いいただきありがとうございました。

5月ぐらいから、またのろのろと4章の連載を始めようと思います。

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