本編1-16
ちょっと長めです。
うっそりと闇が横たわる、月のない射干玉の夜だった。
幼い子供の影が、何やら叫んでいる。
その目の前には、揺れる影の大きさからして大人だろう。
「っ——! ……て! ま、か……っ!」
「……れで……は、わ……だっ!」
ざざざ、と耳障りなノイズが響く。
その音に顔を顰める。ノイズのせいで会話の内容は解らないのに、ソレが酷く不快なものであると言うことだけは、何となく理解していた。
「——助けてっ!」
カッ! と強い光が、視界を覆う。
光に目が焼かれる前に聞こえてきたのは、子供の声をした、悲痛な叫びだった。
「——ま、セシリア様っ!」
「っ!?」
「大丈夫ですか? ひどく、魘されていたご様子でしたが……」
「がう……」
「ノヴァーリス……スノウ……あはは、くすぐったいよ、スノウ。……夢見が、悪くて……起こしてくれてありがとう、二人とも」
ぺろ、と、スノウの舌が私の頬を舐める。
リブートから魔鉄道に乗り換え、どれぐらいの時間が経ったのか。今だ速い速度でレールの上を走り抜ける魔鉄道は、まだエグランディーヌ領のターミナルには着いていないらしい。
ぼんやりとそんな事を考えて、ようやく「此処」が現実なのだと、小さく息を吐いた。
「長時間の移動で、お疲れなのでしょう。一旦魔鉄道を降りて、何処か宿をお取りしますか?」
「ううん。大丈夫。……今は、どの辺り?」
「そろそろ王都のターミナルです。後1時間ほどで、エグランディーヌ領のターミナルに着くかと」
「そう。だいぶ寝てたね、私」
「いえ……僕も、護衛の身でありながらセシリア様の前で眠ってしまいましたし……」
「あれは私が寝てって言ったんだから、気にしなくて良いの。ねえスノウ。ノヴァーリスと一緒にお昼寝出来て、貴方も嬉しかったよね?」
「がうっ!」
「セシリア様……スノウを使うのは、些か、その……」
「卑怯って? そんな事ないって。ねえ、スノウ?」
「がーう」
「……君もですよ、スノウ。セシリア様をお護りする大役を頂戴しているのですから、気を引き締めなくては」
「こらこらこら。魔石相手に何言ってるの、ノヴァーリス」
「…………元が魔石であろうと、スノウはスノウですので」
「いや、そうだけど。話をすり替えないの」
そんな和やかな会話をしながらも、魔鉄道は南西にあるエグランディーヌ領に向かって、走り続けた。
「つい、たー!」
「長旅、お疲れ様でした」
「ノヴァーリスもお疲れ様。スノウ、大丈夫? 疲れてない?」
「がうっ!」
5時間ほど揺られた魔鉄道から降り、久方ぶりの地面に足をつける。
侯爵令嬢としてはあるまじき姿でぐっと一度大きく伸びをして、地面をぐるぐる駆け回っていたスノウを抱き上げ、サクリーナの姿を探した。
「エグランディーヌ侯爵家の馬車が近くまで迎えに来てくれてると思うんだけど」
「探してまいりますか?」
「いや、私の侍女は優秀だから。行き違いになっても困るし」
「お嬢様っ!」
人でごった返すターミナルの前をきょろきょろと見回しながらそんな話をしている時、ちょうどサクリーナの声が聞こえてくる。
しかし普段冷静な彼女からは想像出来ない程、その声は焦りを滲ませるものだった。
「サクリーナ……?」
「お嬢様、ああ、お嬢様……! 良かった、無事にお会い出来ました! 大変でございます! 旦那様と奥様が、突然お戻りあそばして、お嬢様は何故自分たちを出迎えないのかと……!」
「……そう。サクリーナ。わたくしの着替えは持ってきていますね? 近くで場所を借りて着替えます。ノヴァーリス、そう言う事ですので、暫くスノウを……」
「僕も一緒に参ります」
「……着替えにですか?」
「っ!? ち、ちがっ!」
「冗談ですよ。そう……そう、ですね……。では、少し待っていてください」
「……畏まりました」
「お嬢様であればそう仰ると思いましたので、近くのブティックにて一室抑えてございます。着替えもそちらに。ご案内いたします」
「流石、わたくしのサクリーナは優秀ですね。ではノヴァーリス、スノウをお願いします」
「はい……お戻りを、お待ちしております」
さっきまであんなに和やかな雰囲気だったのに、一変して硬くなってしまった雰囲気に顔を顰めそうになりながら、サクリーナの後に続く。
全くもって予想外だった。あの毒親達が、セシリアの様子を見に来る事はないと、完全に油断していたのだ。
サクリーナが持ってきてくれた、いかにも貴族令嬢と言わんばかりのフリルとレースがたっぷりあしらわれたドレスに着替え、髪を結ってもらう。
貴金属類もふんだんに身に纏えば、アジット山脈を駆け回っていた私の姿は、何処からどう見ても深窓の貴族令嬢に早変わりだ。
「……お嬢様の好みではないと、重々承知しているのですが……」
「いいえ。あの人達の好みにはピッタリですもの。流石サクリーナですね。わたくしが居なくて、一番責められたのは、きっと貴女ですもの。面倒を掛けてしまって、ごめんなさい」
「いいえ! とんでもございません! わたくしがもっとしっかりしていれば、お嬢様にこんな面倒をお掛けする事もありませんでした……!」
「サクリーナ……ありがとう。貴女がわたくしの侍女で、本当に良かった」
「お嬢様……」
流行の最先端を取り入れた、キツイ色合いのドレス。濃い化粧。確かにどれも私の好みではない。
しかし濃い金色の髪をした鏡の前の美少女は、そんな服装も、よく似合った。ともすれば救国の女王陛下ではなく、物語に出てくる意地悪な令嬢のような出で立ちに、苦い笑みを浮かべる。
「お嬢様。アジット山脈で、センティッド卿と親睦を深められたのですね」
「……そう、見えましたか?」
「ええ。以前であれば、旦那様と奥様にお会いする場には、お連れしなかったかと」
「……そうかも、しれませんね」
説教かましたり泣き喚いて《大煉獄》発動させたり、紐無しバンジーしたり魔力使い過ぎてぶっ倒れたりと、主に私がノヴァーリスに迷惑を掛けっぱなしな数日間だったが、確かに、当初よりノヴァーリスが笑ってくれたり、表情を変えてくれる頻度が増えた。
良い傾向、かな? と内心で自画自賛しつつ、自分の失態の数々を思い出し、穴を掘って埋まりたくなる。
内心で百面相を繰り広げながらノヴァーリスとスノウの元に戻ると、スノウがあからさまに困惑した様子で「がう……?」と一声鳴いた。人の言葉にするなら「誰……?」だろうか。
うんうん。解るよ。もはや別人だもんね。それだけサクリーナの技術が凄いって事なんだけど、どうやらスノウはお気に召さなかったらしい。
「お嬢様……その猫……トラ? は、いったい……」
「ええと……色々あって、わたくしが世話をすることになった、……ええと、魔石の化身? です」
突然の毒親襲来に半ばパニックを起こしていたらしいサクリーナが、ようやくスノウに気付いたのか、困惑も露わに私に視線を向けてきた。
大丈夫、噛まないよ。引っ掻きもしないし調度品に爪も立てないから。
しかし「魔石がこんな姿になりました!」と言われても、なんだか胡散臭い通販番組のようだな、と思ってしまって、適当に言葉を濁す。
適当に発した「魔石の化身」と言う言葉に関心したように、サクリーナは「まあ……」と口元に手を当てて驚いたように目を見開いてから、丁寧にスノウに頭を下げた。
本当に良く出来た人だな、この人! と心の中で絶賛の拍手をサクリーナに送り、なんとも言えない顔で微苦笑を浮かべるノヴァーリスと共に、エグランディーヌ侯爵家の馬車に乗り込んだ。
——憂鬱だ。
その一言に尽きる。
《私》と言う自我が芽生えた後でも、セシリアの記憶はあった。
その記憶の中の両親は、どうしても好きになれる人種ではなくて。
セシリアを自分たちの道具としか思っていない、権力主義者。
お前は女王になる為に生きているんだ。誰がお前を養ってやっていると思っている。今こうして生きて居られるのは誰のおかげだ。お前は私たちにただ従っていればいい。
あの両親に言われた言葉は、殆どこんな感じだ。
セシリアはその言葉に、薄く笑みを刷いた人形のように美しい顔で淡々と「はい。仰る通りです」なんて返すものだから、母親の方からは「気味の悪い」と言われ、折檻させることもザラだった。
しかも育児に関しては放置だ。嫌な干渉の仕方だけして、その実セシリアの成績などには興味なし。病気になろうと興味なし。完全なネグレクトだな、と、今なら思う。
しかし、私に興味などないくせに、私が自分たちを立てないのは気に喰わない。私が自分達好みの恰好をしていないと気に喰わない。
なんとも厄介な毒親だ。
普段はエグランディーヌ領にある屋敷ではなく、王都にあるタウンハウスの方に滞在しているので、すっかり油断していた。
まさか私が不在のタイミングで帰ってくるとは。本当に厄介な人たちである。
屋敷に近づくにつれどんどん無表情になっていく私に、ノヴァーリスがなんと声を掛けるべきか迷うように口を開閉する。
腕の中のスノウをぎゅっと抱き締めてしまっているせいで、スノウが鬱陶しそうに身じろぎしているのだが、それを指摘する余裕も今の私にはなかった。
そしてとうとう、馬車がエグランディーヌ侯爵家に着く。
普段はあまり人の気配がしない屋敷が、騒がしい程人の気配で溢れている。
着くなり毛を逆立てて威嚇の姿勢を取ったスノウの姿に、頭のどこかが冷静さを取り戻す。そうか、君も嫌か。私も嫌だ。
ノヴァーリスにエスコート役を任せ、私の足元で毛を逆立てているスノウを、サクリーナに任せた。
あの毒親の前にスノウを連れて行ったら、何を言われるか分かったもんじゃない。
そして私とノヴァーリスが何をするか分かったもんじゃない。
「待っててね」と言って頭を撫でれば、「がう……」と悲しそうに一鳴きして、大人しくサクリーナの腕の中に納まってくれる。本当に良い子だ。
「大丈夫ですか」
大きく深呼吸を繰り返す私を気遣ってか、ノヴァーリスが周囲には聞こえないぐらい小さな声で私に尋ねてくる。
「……やらかしそうになったら、止めてね」
「僕が先に、何かしてしまうかもしれません」
「いやあ。ノヴァーリスは大丈夫でしょう」
「敬愛する主を愚弄されれば、僕だって怒りますよ」
「あれ。私の両親に会ったことあるんだっけ?」
「ありませんが、セシリア様とサクリーナさんのご様子を見ていれば、相性が宜しくない事ぐらいは、僕にも解ります」
「あー……うん、まあ。でもスノウだって我慢してくれたんだから、ノヴァーリスも我慢してくれるんでしょ?」
「……スノウを引き合いに出すのは、狡いと思います」
苦虫を噛み潰したような顔で、ノヴァーリスが顔を背ける。
ちょっと拗ねちゃったかな? とも思いつつ、だいぶ肩の力が抜けた事に感謝した。
よし、と気合を入れて、扉の前に立つ。
コンコンコン、とノックをすると、普段あの毒親についている執事の声が帰ってきた。
そんなん従僕の仕事だろうに、この人も大変だな……と思いながら、口を開く。私の斜め後ろに控えているノヴァーリスは、険しい顔をしていた。
「セシリアでございます。次期女王の公務より、ただ今戻りました。お父様とお母様に帰宅のご挨拶をしたく、まかり越した所存でございます」
両親相手の挨拶に、こんな遜った挨拶必要か? とも思うのだが、あの毒親相手には必要なのだ。これをしないと一気に機嫌が悪くなる。厄介な事この上ない。
ガチャリと音を立てて、扉が開いた。
申し訳なさそうな表情で私を見る執事にこっそり苦笑を返して、入室するなり頭を下げた。
後ろに控えていたノヴァーリスもぎょっと一瞬だけ目を剥いた後、私に従って頭を下げてくれる。
「お父様、お母様。お出迎え出来ずに大変申し訳ございませんでした。お帰りなさいませ」
「ふん……お前も随分と偉くなったものだな? 誰のお陰で次期女王に選ばれたと思っている」
「本当に。こんな気味の悪い子が次期女王なんてこの国の未来が心配だけれど、まあ、そこはアタクシ達が上手く導いてあげればいいのですものね、旦那様」
「ああ。その通りだ。良いな、セシリア。貴様はわしのお陰で生きていて、この屋敷で生活出来ている。そのうえ名誉ある次期女王に選ばれたもの、総てわしのお陰だ。その事を、ゆめゆめ忘れるなよ」
「……畏まりましてございます」
殴りたい衝動をぐっと堪え、呪文のように、こんなんでも親、こんなんでも親、と自分に言い聞かせる。
女王に就任したら、この毒親達が干渉してこないように何とかしないと、と決意を新たに、唇を噛み締めた。
後ろから物凄い殺気を感じたが、気付かなかったことにしよう。
「それで、後ろの男はなんだ」
「次代の騎紫であり、今はわたくしの護衛を務めております、ノヴァーリスでございます」
「……ご紹介に賜りました。セシリア様の御代において、騎紫の名を頂戴する名誉を頂き、現在は御身の護衛を務めております、ノヴァーリス・センティッドと申します。若輩者ではございますが、どうぞよろしくお願い致します」
「まあ! こんな気味の悪い子の護衛なんて、貴方も大変ねえ」
「いえ……」
なんと返そうか逡巡したノヴァーリスは、少しの後、毒を飲んだような顔で小さく「仕事、ですので……」と呟いた。
それを聞いて、目の前の母親が真っ赤に塗った唇を、にんまりと歪める。まるで魔物が舌なめずりしているようだ。
セシリアにこんな二枚目な護衛が付いている事自体が気に喰わないのだろうが、「仕事ですので」の一言にとりあえず矛を収めたらしい。
ノヴァーリス良い仕事した! 後で撫でてあげるからね! 「女王陛下」大好きな君が、良く頑張った! と内心で称賛の拍手を送りまくり、前で組んでいた手をぎゅっと握る。
そりゃ、悔しくない訳じゃない。出来る事なら今ここで《大煉獄》を発動して、「私はあんた達には従わない!」と叫びたいぐらいだ。
が、そんな事をすれば、絶対に後々面倒な事になると解り切っている。
唾をまき散らし、口角に泡を吹かせて、間違いなく父親が私に言葉の暴力を振りかざし、使用人達にあたるだろう。母親には扇子を投げられる気がする。
セシリアが自分達に逆らうなど、微塵も思っていないのだから。
そもそもこのアルカンシエル王国において、親に逆らうという考え方がない。貴族社会なんて尚更に。
物凄く面倒なしがらみだが、此処で私が下手に逆らえば、将来的にノヴァーリスや他の七騎士達の立場を悪くしてしまう可能性だってある。
それだけは、避けたかった。
その後も何かごちゃごちゃ言ってくる両親の言葉を聞き流し、愛想笑いを浮かべやり過ごした。
ニコニコ笑う私に母親は眉を顰め、何度も「気味の悪い」と呟いてくるけど、無視だ無視。
「おい、いつまでわしの前に居る気だ。挨拶とやらは済んだだろう? とっとと部屋に戻らんか」
「……はい。御前、失礼仕ります」
お前らが! 下らん話を延々続けてたんだろうが!!
そう言いそうになる口を縫い付け、何とか笑みを浮かべ、ノヴァーリスと共に部屋を出る。
暫く無言で屋敷の中を歩き、人気のない場所まで来て、ようやく小さく口を開いた。
「……燃やしたい」
「……凍らせたい」
ぼそっと呟いた声が、見事にシンクロする。
二人で顔を見合わせ、ふっと笑い合う。思考回路が物騒な所まで私に似てきてどうするの、君は。
「その……こう言っては失礼なのですが」
「うん、何?」
「よく、あのご両親に育てられて、セシリア様のような立派な方が育ったな、と……」
「あー……いやまあ、私は立派じゃないけど……アレを見てると、嫌な気分になるじゃない? ああはならないぞって、小さい頃から思ってたからだと思うんだよね」
まあ、実際は《セシリア》の「感情」って、全く判らないんだけど。
あるのは、「記憶」だけ。この時どう思ったとか、どう感じたとか、そう言った「感情」を、私は全く引き継いでいない。
しかも5歳より以前の記憶は曖昧で、今の所全く思い出せないのだ。まあ、物心ついた前後の辺りは、記憶なんてあって無いようなもんだよなあ、とその時は納得したのだが、今にして思えば、少し可笑しいのかもしれない。
そんな事をぼんやりと考えつつ、翌日の昼まで、私による両親へのご機嫌取りは続いた。
事あるごとに「誰のお陰で」を繰り返すが、もうちょっとボキャブラリーを増やしてから出直して頂きたい。
結局、次期女王になる私へのマウント取りじゃないか。
「女王」の私より自分達の方が偉い。でも女王になった暁には、自分達を敬い、尊び、存分に優遇するように。
ざっと纏めると、あの両親が言いたい内容はこれだけ。その為だけに私の存在を踏みにじり、自分達を優位に立たせる。
不愉快以外の何物でもない。軽蔑を通り越して、人は此処まで出来るのかと、ちょっと関心してしまったぐらいだ。
「……ストレスで禿げたらどうしよう」
「がう……」
「……殺しちゃダメだからね?」
「うう……」
窓際に置いた自室の椅子に座り、膝の上に乗せたスノウを抱き上げる。
私の言葉に不満そうなうめき声を上げたスノウの柔らかなお腹に顔を埋め、ぐりぐりを頭を押し付けた。
サクリーナが定期的に外へお散歩に連れて行ってくれているお陰で、スノウの毛はふっかふかだ。太陽の匂いがする。
あの両親が王都のタウンハウスに戻るまでは、ノヴァーリスも傍に控える事を禁止したが、あの時の絶望っぷりは筆舌に尽くしがたい物だった。
そんな、この世の終わりみたいな顔されましても。たった一日じゃないか。と呆れたのは、此処だけの話である。
「お嬢様。旦那様と奥様が、ようやく……失礼致しました。王都のタウンハウスへ戻られるようです」
「いえ……そうですか、ようやく……一日がこんなに長いと感じたのは、久しぶりです……」
「お嬢様……」
「見送りに行って参りますので、その間、スノウをお願いしますね、サクリーナ」
「畏まりました」
ああ、ようやくこの試練が終わる……。
抱いていたスノウをサクリーナに任せ、身だしなみを整えて部屋を出た。
「お父様、お母様。王都のタウンハウスにお帰りになっても、お身体にはご自愛くださいませ」
「わしが居ないからと言って、貴様がここに居れるのはわしのお陰だ。そのことを忘れるな」
「本当に。優しい旦那様とアタクシに感謝なさい。気味の悪いお前を、女王になれるまで立派に育ててあげたのだから」
「……はい」
良いから早く帰れ!
そう念じながら、精いっぱいの笑顔を浮かべた。
「またのお帰りを、お待ちしております」
心にもない事を笑顔で言うのは、大分しんどいのだと、私はこの時まざまざと痛感した。
閲覧、評価、ブクマ、誠にありがとうございます。
本日2本目の投稿です。未読の方はご注意ください。
次回で魔石採取編、最終話です。いや、長かった……ようやく新章始まります。
どうぞ引き続き、お付き合いをお願い致します。




