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ゴブリンアーミーの陰謀

 修行開始してから現実で三日、ゲーム内では一週間以上が経過している。

 ちなみにこの間、アーク兄やマイアも一緒に修行したり狩りしたりしていたけど、ボクはギルドの依頼を除いて、ほとんどをお婆ちゃんに拘束されていた。

 実に悲しいけどお婆ちゃんには逆らえないので泣く泣く諦める。

 アーク兄とマイアは兄妹ペアかパーティーメンバーと遊ぶことが多く、コノハちゃんやリーンさんやカレンさん、エレクトラやケラエノを交えて狩りしていることが多かった。

 ボクの支えはスライムのミアだけとなったのだ。


 そんなミアは現在メルヴェイユの街でフィルさんに色々と話しに行っている。

 たぶんここにご招待するのだろう。


 アーク兄はアーク兄でルードヴィヒさんと話してから慌ててマイアを連れてどこかに行ってしまった。

 寂しい。


 それと、ゴリアテさん達は資金集めと経験値稼ぎのために精霊ギルドで仕事を請け負い、今日も朝から出発していた。

 新しい装備を買うつもりらしいけど、お金が足りないと嘆いていたっけ。

 メルヴェイユでは鉄装備の発展型を開発。

『魔力鉄』という新型鉄装備を製作販売しているらしい。

『魔力鉄』というのは、魔力結晶の粉末を鉄粉に混ぜて、溶解してから成型して作るらしい。

 一般的な鉄より魔法耐性が高まり、エンチャントもしやすくなっているので戦闘力向上に役立つのだが、欠点もある。

 その欠点とは、製作に手間がかかる上に配分をミスするとバランスの悪い粗悪品が出来てしまうことだ。

 今の主流装備といえば、断然この魔力鉄装備だろう。 


 そして、今のボクはお婆ちゃんと話しながら、お婆ちゃんの作り出した仮想敵相手に模擬戦闘訓練に励んでいた。

 正直、妖力を纏いながら攻撃力と防御力を上げつつ、型どおりに相手を攻撃するというのは面倒くさい。

 集中力も切れやすいし、体への負担がひどすぎる。 

 

「ボクのレベルもついに20を超えて21だもんなぁ。この数日は大変だった……」

 お婆ちゃんに拘束されたボクは、ひたすら型の練習と妖力の使い方を覚える訓練を繰り返しやらされていた。

 そのおかげで、妖力を使った刀術の性能は格段に向上したし、疲れにくくなったと感じている。


「人間もそうじゃが、ただ鍛えているだけではすぐに限界に到達してしまう。そのさらに先に到達するには霊力や妖力といった根源を鍛える必要があるのじゃ。現実でもアルケニアでもそれは変わらぬ」


「ちなみに人間種は20レベルから修行することができ、妖種は15レベルから修行することができるようになっておる。一定の条件を満たすことで更なる転職と進化を得ることが出来るということじゃ。人間種で進化した者はその種からさらにハイレベルな種へと進化できるようじゃぞ? 人間は万能特性があるから人間の進化種にも他の種にもなれるからのぅ。羨ましい限りじゃ」


 人間種プレイヤーは本当に様々な種族に進化している。

 一番多いのは人間種、次に獣人族とエルフ族、何パーセントかはハイオーク種になったプレイヤーもいるようだ。

 妖精種としてはエルフなども人気なようで、ドワーフを選ぶ猛者もいたりはするものの少数だと言えるかもしれない。

 ただ、鍛冶屋といえばドワーフだよね!? といったファンタジー思考の製作系の人やドワーフといえばハンマーや戦斧でしょう! といった人はドワーフ戦士を選んでいるらしい。

 見た目は色々選べるようだけど、やはり長いひげ付きが人気なようだ。

 実際おじいちゃんタイプのドワーフは可愛いと思うので、ボク的にもありだ。


 エルフ族を選ぶ人はやぱり弓系を扱う人が多い。

 もしくは細剣などを選ぶタイプだろうか。

 この辺りは完全にファンタジー系小説やそういったゲームやアニメを基準にしている気がする。

 ただごく一部、大剣装備の女性エルフ戦士や戦斧装備の男性エルフ戦士などもいるらしい。


 獣人族はそれこそいろいろな人がいる。

 人間寄りの獣人、獣寄りの獣人など色々なタイプがあるが地味に呼称が異なるので要注意だ。

 通常の『獣人』とは人間寄りの獣人を指していて、アニスさんのような猫獣人などを指す。

 反対に、獣寄りの獣人は『○人』というように、人の前にその種の名前を入れることが多い。

 再びアニスさんの話に戻すが、アニスさんが前に言っていた似た種族の話を覚えているだろうか?

 その似た種族というのが、人型の猫である猫人族なのだ。

 これが二つの獣人の違いというわけだ。

 ちなみに、狐獣人をこの間初めて見た。

 獣人であっても尻尾はふさふさなようで、ボクとしては大変満足することができた。

 ただ、人間に近い狐って妖狐と見た目はあまり変わらないんだよね。


「そういえば、妖種プレイヤーのほかに人間種の妖種へ進化したプレイヤーもいたね」


「おぉ、そうじゃったのぅ。あやつらは『妖種マニア』と言っておるようじゃが、そのような者達も出て来ておるのか」


「最近は増えてるみたいだね。妖種に憧れて妖種になりたい人は、ボクの学校にもいるよ」

 人間種から妖狐や烏天狗、鬼人や猫又などの種に進化している人がちらほら出始めたのだ。

 人間から妖種への進化はなかなか条件が厳しいらしい。

 ただそれを乗り越えてでもなりたい! という人が増えているようで、ついに進化を果たしたプレイヤーが誕生したのだ。

 第一条件は20レベルであることらしいけど、他の条件をボクはしらない。


「妖種が人気になるのは良いことなのじゃが、そんなに表に出さなくても良い気はするがのぅ。ところで、例のゴブリンについてはどうなったのかのぅ?」

 椅子に座り、お茶を飲みながらお婆ちゃんは模擬戦闘中のボクに問いかける。


「調査結果を元に、ボクたちも探しに行ったんだけど影も形もなかったんだ。それで直近で危険はなさそうだけど、念のためにってことで近隣の村にも注意喚起するために、今日冒険者ギルドの冒険者が向かっているはずなんだけど……」

 あの後精霊ギルドの職員が護衛を連れて周辺を確認したものの、ゴブリンアーミーたちは発見されなかった。

 念のために、北の街道を進んだ先にある村にも注意を促そうということになり、メルヴェイユ冒険者ギルドに精霊ギルドから聖堂を経由して連絡したのだ。

 精霊たちの言葉は魔術系を学んでいない限りは理解することが出来ないらしく、聖堂を経由して伝えることにしているらしい。

 その際は『お告げ』という言葉が使われているのだとか。


「なるほどのぅ。じゃが注意しておくのじゃぞ? どうやらゴブリンどもは知恵を持っておるようじゃ。周囲で見かけたものが全てではないかもしれぬ」


「というと?」


「そやつらは囮じゃ」

 お婆ちゃんの言葉にボクは背筋が冷えるのを感じた。

 ボクたちが倒したゴブリンアーミーたち。

 それが全て囮だったなら?

 じゃあ、本命はどこに?


「メルヴェイユ周辺にそのような動きがあれば、すぐに依頼なり連絡なりがくるじゃろう? 来ない場所はどこかわかるかのぅ?」

 ニヤニヤ顔のお婆ちゃんを見てボクは考える。

 実のところ、ボクは周囲の地理は詳しくない。

 ただ、今日冒険者たちが出発した街道沿いの村は農業が盛んな農村らしい。

 もちろん宿はあるものの、冒険者ギルドなどの重要施設は存在していないらしい。

 ゴブリンたちが必要としてるのはなんなんだろう?

 もし食料だとしたら、農村が一番危ない……?


「今更ゴブリンたちが武器を求めるとは思えぬし、もしそうであるなら商人を襲えば容易いのぅ。じゃが、その様な報告は来ておらぬ。執事も言っておったじゃろ?」

 執事のルードヴィヒさんは色々と情報を集めてくれていたしその情報はボクも教えてもらったので知っている。

 ただ、朝にルードヴィヒさんから追加の情報を聞いたアーク兄は、マイアを連れて朝から飛び出して行ってしまった。


「ルードヴィヒさん、アーク兄と朝何話してたの?」


「はい、お嬢様。お嬢様は朝からお忙しいようでしたので、アーク様にゴブリンアーミーに関する調査結果をお伝えしておりました。お嬢様がお持ち帰りになられた戦利品を確認したところ、ゴブリンアーミーたちはどうやら武具類を大量に所持してはいたものの、食料の類を所持していなかったようなのです。そして現場周辺の状況を確認したところ、動物の骨や木の実の種が落ちていました」

 アーク兄が飛び出した原因がわかった。

 おそらくボクの予想が正しければ、ゴブリンたちが向かったのは、北街道にある農村だ。


 不意にボクの持っている端末が震え、メッセージが到着したことを伝える。

 ボクは端末を開き、新着のメッセージを確認する。

 送信者はアークトゥルス。

 アーク兄からだ。

 ボクは急いでメッセージをクリックして開封する。

 そして、そこに書かれていたのは……。


『スピカへ。

 北街道近隣の農村、マルセ村急いできてくれ。

 付近でゴブリンアーミーの野営地を発見した。

 軽く偵察したところ、一部のゴブリンには武具類を着けているものがいなかった。

 武具類が足りていない様子なので、おそらくスピカが倒したゴブリンが輸送を担っていたのだろう。

 そいつらが合流していたら最悪の事態になっていたかもしれない。

 よくやった!

 それと、到着したら村入り口にいてくれ』


「お婆ちゃん、行ってくる!」


「うむ。気を付けていくのじゃぞ。妾は呼ばれるまでのんびりしておるかのぅ」


「うん、もし何かあったら呼ぶね!」

 お婆ちゃんが持参した羊羹を食べているのを確認し、ボクは急いでマルセ村へと向かった。

いつもお読みいただきありがとうございます。


地味に少しだけ筆が進んでいません。

書いている途中に何度か止まり考え込んでしまいます。

書きたいことと改善策としてやらなければいけないことが多くて、頭の中でごっちゃになっているようです。

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