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税金と集落の成長

 ボク達はあれから色々な屋台を見て回っては食べ、そして遊んだ。

 友達とまともに遊んだことのないボクは、戸惑うことはあったけどとても楽しかった。

 あの食べ方は変だ、この食べ方は面白い。

 あの店は変、この店も変。

 どれもこれも家族と行くよりも新鮮だった。


 そして、鬼塚大和との遭遇はボクにとって結構大きな事件だった。

 偶然とはいえ、夏祭りなので合わないわけがなかったのにね。

 油断していたわけじゃないし、こういう結果になると予想していたわけでもなかった。

 それでも大和は、ボクに対しての態度を変えることはなかった。

 鬼の矜持なんか、狐のボクが知るわけない。

 でも、あの単純なバカ鬼は、笑いながらボクのことをダチだと言った。

 そこまで言われたら、ボクも覚悟を決めるしかないよね?


 その後、賢人兄との合流は無事に出来たけど、賢人兄が一緒にいたと思われる友達はボク達が合流する頃にはいなくなっていた。

 どんな人がいたのか気にはなるけど、せっかく合流したんだから楽しまなくちゃね。

 それから、花蓮さんと鈴さんは賢人兄を囲むようにしながら一緒に並んで歩き、ボクは美影達と一緒にその後をついて回った。

 その後はずっとそうやって遅くまで過ごして解散となった。


 性別が決まってからの初めての夏祭りは、ちょっとしたハプニングはあったものの大事な思い出になった。

 大和以外のボクの友人達は、ボクをどう見るだろうか。

 考えても仕方ないけど、つい考えてしまう。

 不安や心配はあるけど、今はどうにもならない。

 そしてボクはそのまま眠った。



 ――翌朝


 

「ご主人様、お帰りなさいませ。そちらはどうでしたか?」


 朝起きてから色々とやることをやり、お昼前にボクはアルケニアオンラインにログインした。

 アルケニアの世界でボクが目覚めると、傍に居たミアが覗きこんでくる。


「うん、色々あったよ。でも、ちょっとは楽しかったかな?」

「そうですか。いつか私もその世界を見てみたいものです。ご主人様がいなくなってから少々時間が経ちましたが集落に大きな変化はありません。しいて言うなら、異世界人の居住者を募集し始めたくらいでしょうか」


 ボクがいない時もこの世界の時は流れている。

 ボク達の世界よりも時間の流れが速いのだ。


 そんなアルケニア世界のマタンガ集落では、本格的に入居者の募集を始めたようだ。

 特定地点や開拓地などで行えるハウジングシステム。

 一から家を作ったり、すでにある家を競売で購入したりと様々なのだが、共通しているのは入手時点から一か月毎に税金が発生するということだろうか。


「そうなんだ? 結構みんな買ってるの?」

「はい、すでに何軒かは入居者がいます。この集落は国には所属していないので税金は安く済みます。ですがお店が少ないので利便性が良いとは言えません。それもあり入居に必要な初期費用はあまりかからないようになっています」

「ふぅん。でも、マタンガ集落で税金?」


 妙な話だった。

 精霊達なので国に税金を納めることはないだろう。

 じゃあ何に使うのだろう?


「はい、集落としては未発展ですが、得た税金でお店を増やしたりするそうです。増改築は大地の精霊ノームが行うそうなので、少しずつ発展していくと思われます」

 

 どうやらボクの考えが間違っていたみたいだ。

 精霊の集落といっても、人間が居住する以上はお金が必要になるのだ。

 でも、どうせなら集めた税金で、少しでも快適な集落になると嬉しいんだけどね。

 現在は小規模の市場と畑、マタンガ栽培場、そして家があるくらいだ。


「ゴルド様が話していましたが、ある程度税金を集めることで『転移門』を設置することが出来るようです」

「転移門?」

 

 税金の使い道の一つに『転移門』の設置というものがあるらしい。

 名前からするとどこかへの移動が便利になりそうだ。

 でも、メルヴェイユ以外だとどこに行けるんだろう?


「転移門は都市や狩場に直接行くことが出来るようになる転送装置です。設置費用が高いためある程度金額が貯まらなければ設置出来ないようです」

「精霊なのに?」

「はい。精霊と言っても様々なのはご存知かと思いますが、職業精霊達が転移門の設置や管理運営を行います。その彼らの給料や門の維持費に税金が使われます」


 どうやらボクが思っているよりも精霊というのは物質と無縁ではいられないらしい。

 ボクは元素精霊も職業精霊もちゃんとは知らないけど、元素精霊というのはいわゆる幽霊のようなものだ。

 基本的に物質に干渉することはなく、自由気ままに通り抜けていく。

 元素精霊が力を使って物質の干渉する時は攻撃する時か遊ぶ時なのだそうだ。


 職業精霊というのは人間の精霊版だ。

 精霊界という場所に住み、そこでボク達と同じように生活しているらしい。

 人間が精霊になったらきっとそんな風に生活するだろう。

 そんな彼らの給料は、アルケニアを離れるときにアルケニア通貨から精霊通貨に変換されるのだという。

 まるで海外に出稼ぎに行ってるような感じだけど、職業精霊達はそうやって過ごしているのだという。


「お屋敷の執事さんやメイド長さん達が職業精霊のいい例ですね。彼らの契約の対象はご主人様になっていますので、ご主人様が呼び出せばいつでも応じてくれるでしょう」

 

 どうやらボクは知らない間に精霊と契約していたようだ。

 それならそうと最初に言ってくれればいいのに。

 

「ということは、ボクと契約しているってことは、ボクが引っ越すとついてくるってことかな?」

「はい、その認識で大丈夫です。それと、契約した時点での所持している家屋の規模によって配置できる精霊の数が決まります。それ以外ですと新たに精霊を見つけ出し契約する必要があります。ご主人様の場合は執事含め七名ですので、八名以上にする場合には当たらに契約し雇用する必要があります」


 つまり、最初に家を買った時点での家の規模によって初期契約出来る精霊の数が決まるようだ。

 小さいところなら一人ってこともありうるのか。


「執事達の給金はどうなるの?」

「はい、初回三か月は税金より支払われます。それ以降はご主人様の積立金より支払われます」

 

 三か月無料はありがたいけど、四か月目からは自腹。

 これはどんどん稼がないと大変なことになる。


「ですので、定期的にお仕事をされるか、何かの商品を開発して、その販売利益で収益を上げていくか、いずれかの方法で収入を得る必要があります。ある程度の補助は私も出来ますが、ご主人様自身で開発などされる方が後のことを考えてもよろしいかと思います」

「うっ……。そうだよね。うん、がんばる」


 ミアの前で働きたくないとかは言えないので、ちょっと頑張って稼ぐことを考えようと思う。

 そもそもこのゲームは世界を救うという目的のほか、『生活する』ということも大きな目的の一つなのだ。

 つまりこれもゲームを楽しむうえで必要なことってわけ。


「とりあえず何をすればいいだろう? 工芸? 錬金? 鍛治? 冒険?」

「それでしたら、まずは精霊ギルドに行かれてはいかがでしょうか?」


 ボクが稼ぐ方法に悩んでいると、ミアから提案を受ける。

 ミアの言う精霊ギルドとはなんなんだろうか?


「精霊ギルド?」

「はい、職業精霊が運営している特殊な冒険者ギルドのようなものです。冒険者ギルドで受けられる依頼の受注も可能ですが、精霊ギルド独自の依頼も存在します。一度お尋ねになられてはいかがでしょうか?」


 ミアからの提案にボクは頷く。

 まったく知らない精霊ギルドという未知の組織。

 楽しむためにも行かないわけにはいかないでしょ!


 ボクは早速1人で向かう準備をするのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます。


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