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第17話 マタンガの秘密と二人の名前

 たくさんのマタンガを狩り終え、ボク達は街へと帰ってきた。

 ゲーム内はすでに夕方に差し掛かっていて、夕闇が迫ってきていた。

 魔石による街灯が設置されたメルヴェイユの街は、煌びやかな光に包まれている。


「へぇ~、中世風ゲームだから夜は真っ暗かと思ってたけど、こっちと近いくらい光にあふれているんだね」

 美影の言う通り、街は街灯が多めに設置されているため、一部以外は暗いところが少ない。

 ただし、現実みたいにネオンやらなんやらといった光を大量に使う場所がないため、主に店と街灯、そして家にのみ光が灯った光景を見ることが出来る。


「看板みたいなのには使わないんだね。暗いと見えなくないかな?」

「アニスさんに聞いたことあるけど、魔石って結構高いらしくて、使用済みを充填するならそこそこのお値段で済むみたいだけど、劣化しやすいんだってさ。コストが思ったよりかかるみたいだよ?」

 魔石にはいろんな種類や品質があるそうだけど、安価なものは使い捨てレベルなんだそうだ。

 それゆえ、使用できる期間が長いものが好まれるが、こっちは思ったよりも高いらしい。

 充電式と同じようなタイプのため、使い続けると劣化して壊れてしまうとか。

 あと、魔石街灯って実際のところ、蛍光灯よりは暗いんだよね。


「電気とフィラメントは偉大だったってことね」

 たったあれだけで周囲を明るく照らすんだからすごいと思う。

 瑞樹の意見には同意だ。

 偉大なる発明に感謝だよ。


「そういえば、夜はギルドは活動してるの?」

 ふと、瑞樹がそんなことを口にした。

 そういえば、夜間についてはボクも詳しくは聞いていない。


「ちょっとしか知らないけど、基本二交代制らしいよ? いわゆる日勤と夜勤らしい」

 ギルドの仕事は日勤帯が一番忙しく、夜勤帯はあまり忙しくないらしい。

 ただ、夜間の方が緊急対応することが多く、実力のある人が配置されているようだ。

 ボクは見たことはないけどね。


「時間で言うと、十九時以降は夜勤の扱いらしいよ」

 ギルドの人が入れ替わるのは十九時と聞いている。

 夕方付近にその辺りにいると、よく帰るアニスさんに捕まるので一度聞いたことがあるのだ。


「まだ十八時だし、いるってことだね? それじゃ、報告に行こう」

 ボク達は急いでギルドに報告に向かった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「はい、お疲れさま~。にしても頑張ったね? 結構強かったでしょう? 異世界人でいうと、レベル10くらいから対応できる依頼なんだよ」

 アニスさんはボク達の報告を聞いて、納品物を受け取ってからそのように言ってきた。

 ちなみにレベル10から受けられるという話は初耳だ。

 確かに今のボクのレベルは17になったけどもね……。

 マタンガの経験値は美味しいらしく、思ったよりもレベルが上がったのだ。


 ちなみに、美影達もそれなりに上がっており、もうすぐ10に迫ろうとしていた。

 たった一日で7レベルまで上がるとか、美味しいにもほどがあるよね!?


「ゴブリンとかよりもタフだし速いし、強いしで人気はあまりないのよ。ただ倒せば倒すほど実力が上がるから一部の人は修行相手にマタンガを選んでいるみたい」

 アニスさんは楽しそうにそう言う。

 たしかに、マタンガは強かった。

 縦回転アタックや素早い動作で刀を避けるキノコ達。

 あまりにもアグレッシブだしアクティブだし、まるで熟練の冒険者か何かのようだった。


「マタンガって、何であんなに強いんですか?」

 ボクはマタンガの強さが気になる。

 美影達は落ち着いて対処していたけど、決して油断はしなかった。

 レベル差があるとはいっても、実力が高いだろう美影は、持って生まれた身体能力だけで何とか相手にしていたくらいだった。


「どうもね、マタンガはあの森の奥で日々修業を積んでいるらしいの。マタンガ達によるマタンガの為の流派みたいなのがあるらしくて、日々強くなっていくのよね。マタンガの目的は分からないけど、マタンガも妖精種だし、もしかしたら話が出来る固体もいるかもね。その時聞いてみたら?」

 日々強くなっていくマタンガ達。

 マタンガは一体どこへ向かおうとしているのだろうか……。

 マタンガの長老的な存在がいたとしたら、ひげでも生えてるんじゃないだろうか。


「ねぇ、昴。マタンガって一体なんなのかな?」

 美影がうんざりした表情でそう聞いてくる。


「ボクにもさっぱりだよ。でもキノコで、美味しくて修行になる。それだけは分かったよ」

 今度森の奥に行くことがあったら、是非マタンガに聞いてみよう。

 でも、戦ったマタンガは言葉をしゃべらなかったけどなぁ。


「もしかしたら仙人か何かがいて、その人物がマタンガに知性を与えているのかもしれないわね」

 思慮深い瑞樹は、頷きながらそんな言葉を口にした。

 マタンガ仙人かぁ。

 どんな人なんだろう。


「お? スピカか。こんな時間にギルドにいるなんて珍しいな」

「あれ? アーク兄?」

 聞き覚えがある声が聞こえた方向を見ると、そこにはアーク兄が一人でいた。


「アーク兄こそどうしたのさ? これからクエスト?」

 ボクがそう尋ねると、アーク兄は頷く。


「おう。マタンガクエストを受けにね。夜勤帯に引っかかるだろうから、『夜間外出許可証』も貰おうかと思って」

「夜間外出許可証?」

 初耳だったので、ボクは聞き返した。


「おう、朝出て次の日の朝に帰るなら必要ないんだけどな。夜間に門を出入りする可能性がある時はこれがないとスムーズに通れないんだ。いつも大きな門から入るけど、夜間は小さな通用門を使うんだ。門番の詰め所経由のな」

 夜間に外には出ないので、そんなシステムがあるとは知らなかった。

 一つ賢くなった気がする。


「で、なんでマタンガ?」

 さっきまで戦ってきた身としては、今日はもう聞きたくない名前だった。


「アモスと二人でマタンガ集落にいくんだよ。マタンガ達を押しのけて集落に辿りつくと、試練クリアとかで村に入れてくれるんだ。そこでマタンガの長老から品物を買おうかと思ってね。そのついでにマタンガクエストをクリアしようかと」

「マタンガ集落? なにそれ!?」

 マタンガの集落があるなんてびっくりだよ。


「でも何で誰も知らないのさ?」

 アニスさん達NPCも知らないことをなぜアーク兄達は知っているんだろう。


「あぁ、マタンガ達の言葉はプレイヤーじゃないとわからないんだ。それに集落は見えない結界があるらしくて、NPCは入り込めないんだよ。まぁ隠し要素だな。自力で見つけないとたどり着けないってのが厄介なんだけど、やり込み要素としては素晴らしいよな!」

 アーク兄は嬉しそうにそう言った。

 つまり、マタンガ集落は隠し要素で、その情報はプレイヤーしか知らないし中に入ることも出来ない。

 自力で見つける以外に答えはないと……。


「それってひどくない? どうやって見つけろって言うんだよ!」

「ヒントならあるだろ? 奥へ行けば行くほど激しくなるマタンガの攻撃。あれがヒントさ」

「んなもんわかるわけないでしょ!」

 どうやったらその解答に辿りつくのか、理解できないよ……。


「そう言えば、後ろの二人は烏丸家の双子ちゃんか。名前そのままなの? まずくない?」

「それはボクも合流した時言ったよ?」

「あ~、やっぱまずいですかねぇ……」

「名前の変更しないと怒られちゃいますか。どうしましょう?」

「アーク兄、何かいい方法ないの?」

 すでにボクは合流した時に懸念していたことだけど、アーク兄からもそう言われたなら対処しないといけないと思う。

 さっそく何でも知ってるアーク兄に対処法を聞いてみる。


「あるぞ? 普通は課金アイテムなんだけど、『名札』っていうアイテムがあるんだ。ただ初回は名札使わなくても名前の変更が可能だから安心していいよ。あと、マーサさんのお店で売ってるヘアカラー使えば髪色も変えられるから、それで対処すると良い。名前の変更は一か月に一回だから注意してくれ」

 アーク兄は簡単に解決法を教えてくれた。

 というか課金なんてあったんだ?


「課金ってどこにあるのさ」

 そんな項目は見たことがない。


「あぁ、16歳以上からじゃないと表示されないぞ? それにまだ種類は少なくて、『見た目変更券』か『名札』くらいしかない。そのうち追加されるみたいだけど、便利なのは追加されないかもなぁ」

 名札を使った場合、ギルドの登録名称はどうなるんだろう?

 気になるから、今度聞いてから名前を変更してもらおう。


「それじゃ、さくっといってくるから、スピカ達は夜間あんまり街の外に出るなよ? 変な人もいるからな」

 アーク兄はそれだけ言うと、クエストを受けに行ってしまった。


「名前変更できるんだってさ」

「無料はいいね! 課金要素は辛いもん」

「ヘアカラーもあるんですね。この際だし試してみようかなぁ」

 アーク兄の話を聞いて、美影も瑞樹も色々と考え出したのだった。

 

いつもお読みいただきありがとうございます。



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