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ぬらりひょんの宿とぬらりひょんの娘

 散々いじり倒され、海で遊ぶ時間のほとんどを砂浜のシートで過ごしたボク。

 結局薬を塗ることに意味があったかと言うと、潮風から保護してくれるので意味だけはあった。

 とはいえ、塗られる度にボクは痴態を晒すはめになったし、地味にダメージを受け続けたわけだけど……。

 あと、一時間くらいはお尻丸出しだった件について……。


「結局ボクだけお尻丸出しで一時間いたのは解せないんだけど、どう思う?」


 ボクはミナにそのことを愚痴る。

 正直お尻丸出しにしてビーチで過ごす人なんて誰もいないだろう。

 痴女じゃないんだから……。


「う~ん。そもそも最初に更衣室でやっとかなかったのが悪いと思うよ? 今日はそんな予定ない! って甘く見ていたツケが回ってきたんじゃないのかな?」

「えぇ!? そもそも水があんなに冷たいとか思わなかったよ。それに変化が解けるとも思わなかったし……」

「でもいいじゃん。周りには妖種もいたんだし、目立つこともなかったでしょ?」

「確かにそうだけど……。ていうか、猫又系も海に入るんだね。まぁ凛音が入るくらいだし、問題ないのか」


 ボクはちらりと部屋の隅で自分の巣を作ってる凛音を見た。

 家から持参したと思われる猫クッションを大量に設置して、フカフカそうな寝床を作っていた。


「なんにゃ? 猫クッションなら少しだけ分けてあげるにゃよ?」

「いや、ボクも狐クッションあるからいいんだけど」

「ほう? 狐クッションかにゃ? いくつ持ってきてるのにゃ? ちょっと交換するにゃ」

「えぇ? んと、いくつだっけ? ミナ」

「も~。十個だよ? 二個くらい猫と交換してもいいんじゃない?」

「ん~。じゃあそれで」

「ありがとにゃ!!」


 凛音はさっそく狐クッションを受け取ると、ボクに猫クッションを渡してくる。

 凛音じゃないけど、クッションを持ち込むのとよく眠れるから必需品と化してるんだよね。


「それにしても、みんな一緒に泊まれる部屋はなかったんだね」

「そうだね~。ここにはお母さんとお姉ちゃん、私、凛音ちゃん、それとゆかりちゃん」

「ん? 呼んだ?」

「読み上げたけど、呼んでは~って、そっちもクッションで飾りつけしてるんだね!?」

「そうなんだよね。お揃いだとは驚きだったよ。狐クッション人気だよね」


 ゆかりちゃんの寝床にも狐クッションが敷き詰められていた。

 通りでみんなバッグの数が多かったわけだ……。


「お母さんは普通にしてるよね」

「たしかに」

「あら? 私はいつでもどこでもゆっくり寝られるもの。むしろ他の子たちの方が自分の匂いに包まれていないと安心できない子が多いだけだと思うけど」

「そうかもしれない」

「それはあるかもですね~」

「分かる気がするにゃ」


 大体自分の縄張りは自分の匂いで満たすものって感じになってる気がする。

 まぁ、ミナの場合はボクにべったりだから匂いも何もないんだけど……。


「このはちゃんたちの部屋は、このはちゃんと花蓮さんと鈴さんでしょ~? 美影ちゃんたちは二人だけの部屋だし」

「でも烏天狗は仕方ないんだよ。羽根の手入れもあるし、広げると大きいでしょ? 修学旅行とかどうする気なんだろうね?」

「それはあると思うにゃ。それに美影と同じ部屋だといろいろ大変にゃ。美影は女好きにゃ」

「たしかに。ちょいちょいお尻触られるから女の子が好きなんだろうな~って気はしてたけど」

「ゆかりちゃんも被害にあったんだ?」

「うん。でも一番被害に遭うのは昴ちゃんだと思うよ? あの子たち昴ちゃん好きだし」

「少なくとも、瑞樹は確実にそうにゃ。性別決まる前に告白してたのを見たことあるにゃ」

「げっ。見られてたの!?」

「当たり前にゃ。尻尾の行方は常に追ってるにゃ」


 当然のことと言わんばかりに小さい胸を張る凛音。

 ボクを尻尾扱いするのは止めてほしいけど、尻尾を猫じゃらし扱いするのも止めてほしい。


「寝床はしっかりできたにゃ」

「完璧だよ」

「ボクのところもいい感じになったかな」

「私はお姉ちゃんにくっついて寝るから十分だよ」

「私は月が見える窓際で寝るわね~?」

「お母さん、月好きだよね」

「当たり前じゃない」


 凛音とゆかりちゃん、そしてボクのまわりは三十個ちかくのクッションにまみれた。

 正直クッションだらけでクッション投げが可能なくらい存在している。

 一つ一つは小さいので二つのバッグに満載してきた感じ。

 これほど無駄な荷物はないだろうと、設置しながらボクは考えていた。

 ゲーム世界にはクッションがないのでこんなことはできないけど、クッションは作ろうと思えば作れるので今度やってみようかな?


「さてと、そろそろご飯ね? その後はしばらく人数増えそうね」

「あれ? もうそんな時間?」


 お母さんが立ち上がったので設置されている時計を見る。

 すでに十九時だった。


「夕方の温泉に行きそびれた!?」

「明日も宿泊するんだからいいじゃない。明日にしましょう」

「は~い」


 ゲームへのログインは少しあとになりそうだ。

 でも定期的に連絡はくれるので状況はわからずともどうにかなる。

 まぁ攻略はハイオークジェネラル戦以外だったらどんどん進むでしょ?

 そんなことを考えながら、ボクたちはお母さんと共に食事が用意されている大広間へと向かった。


 『鶴の間』と名付けられた大広間。

 その扉には二羽の鶴が向かい合うように描かれている。

 

 鶴とぬらりひょんには絶対関連性ないよね? と思っていたけど、どうやらぬらりひょんさんは鶴が好きらしい。

 なぜなら、大広間の奥には鶴のはく製が二羽向かい合うように置かれていたのだ。

 そしてその足元には『ぬらりひょんが愛でていた鶴のはく製』と書かれた木の板が置かれていた。


「リアル鶴、怖い……」


 はく製ってどう考えても怖い。

 ボクはビクビクしながら、鶴の前に用意された自分たちの席へと向かった。


 ちなみにこの大広間以外にもいくつかの大広間が存在しているらしく、他のお客さんはそちらの方に割り振られていた。

 なので、こっちの大広間にはボクたち家族とその連れだけが案内されていた。


「ようこそお出でくださいました。私はぬらりひょんの三番目の娘、菖蒲あやめでございます。当旅館の女将という立場でございます。よろしくお願いいたします」


 ボクたちが座り始めると女将という人が現れ、ぺこりとお辞儀しながらそう言ってきた。

 菖蒲さんという女性は、ぬらりひょんさんの三番目の娘さんということだけど、ぬらりひょんさんとは似ても似つかない美女だった。

 

 艶やかな黒い髪を短く切り揃えていて、あでやかな菖蒲色あやめいろの着物を身に纏い、紅い瞳をしている印象的な美女。

 胸は豊満であり背は高く、そして何よりもきりっとした切れ長の眼をしていた。

 話す時は流し目であり、大変色気があった。


「ぬらりひょんさんの娘さんとは思えないくらい美人ですね」

「こら、昴。だめでしょ?」

「いえ、いいのですよ。私の母は人間ですので。父はああ見えて色男だったそうですよ? 今は頭が長いですが……」


 ボクはぬらりひょんさんの過去は知らない。

 でも、色男だったのは本当なのかもしれない。

 でなければ母親の遺伝子だけでここまでの美女は生まれないだろう。


「私はよく知らないけど、詠春、どうだったの?」

「ん? ぬらりひょんさんかい? あぁ、大層な美男子だったよ。私となぜか張り合っていたけどね」

「詠春様に勝るとも劣らぬほどだったと、聞き及んでおります」

「えっ!?」

「お父さんと!?」


 菖蒲さんの発言に、ボクとミナは驚きを隠せなかった。

 お父さんはボクたち娘でも色気があると思えるほどの美男子なのに、それに勝るとも劣らないなんて……。


「あぁ。それは嘘ではないね。私よりも男らしさを増したような人だったよ」


 お父さんの発言に、ボクたちは終始驚かされ続けていた。

 まさか、あのぬらりひょんさんが!?

いつもお読みいただきありがとうございます。

最近更新が遅いのは他にやることがあるってのもありますが、改稿するための準備をしていたりするからです。

もうちょっとすっきりさせつつ、面白味のある書き方に変化させられないかな? と、色々書きつつためしているところです。

まぁうまくいけば、それをそのままこっちに反映させたいんですけど……。


楽しめる、読みたくなる作品って、なかなか難しいですね。

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